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「嘘」が紡ぎ出す物語

一昨日は、南相馬まで「カメレオンズ・リップ」という舞台を見に行っていました。

この舞台、東京ではシアタークリエ、大阪ではサンケイホールブリーゼと、
名だたる公演が催される有名劇場でやる作品なのですが、
まずはひとえに、この作品を、たった1公演とはいえども
ここ福島に誘致してこれた、というのが、なによりすごいことだなあ、と。
主催の福島テレビさん、Good Job!って感じです。

相当しっかりしたセットが組んであったので、
これたった1公演でまたバラしちゃうのもったいなさすぎる…!と思ったくらいでしたが、まあ現実的な客入り考えると難しい部分もあるのでしょう…
1公演だけでも、東京とかに行かずして見れただけで満足です。

公演自体については、詳しい記事が上がっているのでそちらに譲るとして、

お話自体の核は、↑の記事にもある通り、
『様々な人々がそれぞれに嘘をつき、騙し合い、事態を混乱させ、破綻してゆく』
という、複雑に入り組んだ世界観。

しかも冒頭で
「上手に嘘をついて人を騙すには、ときどき真実を織り交ぜることさ」
みたいな台詞が入っていたのが、余計にややこしくて。

はっきりと全てが嘘、虚構だとわかってしまっていれば、
あくまで観客目線で全体を俯瞰しながら、冷静に話を飲み込んでいけそうなものですが、
「このうちのどこまでかは本当なのかもしれない」と
自分の脳内で勝手に疑念とか解釈をひとつでも挟み始めたが最後。
どこまでが本当でどこからが嘘なのか、虚実が溶け合う世界の中で、
登場人物と近い目線まで引きずり込まれてしまうような感覚がありました。


とはいえ、ストーリー全体がまったく共感できない、
どこか違う世界のおとぎ話、というわけでもなくて。

ちょっとした出来心でついた些細な嘘が、勝手にだんだん大きな話になってしまっていて、かえって自分の首を絞めてしまう。
そんな経験って、誰しも大なり小なり、持っていると思うんです。

明らかにフィクションの世界で、明らかに「常軌を逸した」人間たちが、
一見荒唐無稽な騙し合いを繰り広げている、そんな作品なのに、
どこか自分たちの日常に引っかかってくるところがある。
そんなギャップも、この作品のおもしろいところだなあ、と感じました。


最近はミュージカルばかり見ていたので、
こういう戯曲というか、台詞だけで構成される舞台って、しばらくぶりだったのですが、
たまにはこういうのもいいですね…!


*追記(5/2)*
Yahoo!ニュースで観劇レポートが上がっていました。

世の中はウソだらけ。普段思っている以上に壮大なウソで塗り固められているのかもしれない。しかし、だからこそその中に埋もれた「真実」が尊い。そして、その美しさを信じ、その力にすがりたい。コロナ禍でいったい何が本当のことだかわからなくなっている今だからこそ、心に響く作品である。

そう、そうなんですよね。


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