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「AIの大いなる可能性と深刻なリスク」キッシンジャー、サリバン他(フォーリン・アフェアーズ・リポート2023年12月号)一言感想

米国外交問題評議会(今のところ、国際情勢において世界最大の影響力を持つと思われるアメリカのシンクタンク)の意図を掴むために購読しています。支持している訳では無いです。

今月号は、キッシンジャーや、ジェイク・サリバンといった、ビックネームの論文が掲載されており、力が入っていると感じました。



AIの大いなる可能性と深刻なリスク

①AIと経済革命-人間のツールとして生かす政策を

ジェームズ・マニュイカ グーグル=アルファベット シニア・バイスプレジデント、
マイケル・スペンス スタンフォード大学フーバー研究所シニアフェロー

グーグル=アルファベットのバイスプレジデントの論文なので、『AIの生産的な利用を促すポジティブな制作の導入だろう』という主張になるのは当然でしょう。
下記論文②の、AIのルール作りが必要というキッシンジャー論よりも、こっちをトップ記事に持ってきた事が、米外交問題評議会のスタンスなのかもしれません。

②AI統治と軍備管理の教訓-壊滅的事態を回避する米中の責務

ヘンリー・A・キッシンジャー キッシンジャー・アソシエイツ会長
グレアム・アリソン ハーバード大学教授

別記事にしました。
また、ご冥福をお祈りします。Rest in peace


戦争で溢れる世界

③戦争で溢れる世界-なぜ紛争が多発しているのか

エマ・ビールズ 欧州平和研究所 上級顧問、ピーター・ソールズベリー コロンビア大学 国際公共政策大学院 非常勤教授
〇課題:
『紛争が増えているにもかかわらず、最後に、国際的な仲介によって包括的な和平協定が結ばれてから、すでに10年以上が経過している。リビア、スーダン、イエメンでの国連主導または国連が支援した(和平に向けた)政治プロセスは停滞するか崩壊している。』
〇原因:
『紛争を管理できる期間が限られている』
〇対策:
『調停者はよりクリエーティブで協力的でなければならない。自らの大義を主張し、平和を広く訴えて社会の支持を確保し、外交的支援を取り付けて、市民団体を含むさまざまなグループにエンゲージしていく必要がある。』
『平和を実現しようとする人々は、中堅国、さらには人道支援組織、民間アクターなどの非伝統的なプレイヤーをプロセスにエンゲージさせるべきだ。このようなパートナーシップを通じて、民間部門が、平和を支え、新しい地政学的協調モデルを育んで、援助を平和の代わりにするのではなく、平和を支えるように機能させ、環境、社会、コーポレート・ガバナンスのアジェンダについてのポテンシャルを育んでいく必要がある。』

〇私の感想:国連等、紛争解決の組織が機能していないことは自明と思いますが、具体的な解決策は見つからないんだなと思いました。(私の考えは、世界の人々の抽象度を上げる、ですが)


④欧州におけるロシアの第二戦線-セルビアとプーチンの思惑

デイビッド・シェッド 元米国防情報局長官代理、
イヴァナ・ストラドナー 民主主義防衛財団リサーチフェロー

『セルビアとコソボの紛争は、バルカンの他の地域に簡単に飛び火しかねず、これこそ、欧米がウクライナから他の場所へ関心を移すことを望んでいるプーチンが期待する展開かもしれない』
と、世論が思うことを期待する論文かもしれない。

西側(コソボ)が正義で、親露(セルビア)が悪だという主張。プロパガンダは、あくまでプロパガンダとしてどっちもどっち、という目線で見るのがよいですね。

民主主義防衛財団(Foundation for Defense of Democracies、 FDD)


⑤経済安全保障国家と地政学-デリスキングとサプライチェーン

ヘンリー・ファレル ジョンズ・ホプキンス大学教授(国際関係論)、
エイブラハム・ニューマン ジョージタウン大学教授(政治学)

『「数十年に及んだ自由貿易への熱狂がアメリカの安全保障を弱体化させた」とするサリバンの主張にためらいはなかった』から始まり、デリスキングというキャッチフレーズを首尾一貫したアプローチとして維持していきましょう、という論文。
経済制裁を推奨していますが、私は、経済制裁は戦争行為だと考えていますので、同意できないというか、卑怯だと思っています。日本もかつて、それでやられた事を、我々は覚えておこう。


⑥変化した世界とアメリカ外交-アメリカパワーの源泉

ジェイク・サリバン 米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

バイデン政権の今までの活動がどれだけ素晴らしいかを書いています。論文というより広告文か。来年の選挙まで、このような記事が増えると思うと、既に食傷気味です。

日本についての記述もありました。
『日本は防衛予算の倍増を約束し、アメリカ製のトマホーク・ミサイルを購入予定で、これが、核武装した地域ライバルに対する抑止力を強化することになるだろう。』
アメリカの抑止力にはなるのでしょうが(日本を戦わせるという意)、日本は、日本の抑止力にはならない武器を買わされただけですね。

オリジナル文


ドキュメント 新中東危機

⑦イスラエル・イラン戦争のリスク-ガザ紛争が長期化すれば(10/19)

ダリア・ダッサ・ケイ カリフォルニア大学ロサンジェルス校 バークル・センター シニアフェロー

イランとイスラエルの戦争リスクがある、という主張かと思えば、イランはエスカレーションを望んでいない、というような反対の事を交互に書いており、よくわからない論文。懐疑的に考えると、イランの参戦について、証拠は無いが煽りたい故の記事かとも思える。考え過ぎか。


⑧戦争とソーシャルメディア-もう一つの戦争(10/27)

ファラ・パンディス 米外交問題評議会 非常勤シニアフェロー(対テロ、イスラム研究)

SNS等によるヘイトを煽る情報に注意せよという、中立的な良い記事でした。
抜粋『国土安全保障省は、ガザ紛争が進むにつれて、イスラエル人、パレスチナ人、ユダヤ教徒、イスラム教徒、そしてシーク教徒のようなこれらの宗教の信者と誤認された人々に対する暴力が米国内で増加する危険があると警告している。米政府は反イスラムや反アラブのヘイト、そして反ユダヤ主義に対抗していくために、道徳的、戦略的にもっと努力する必要がある。』

⑨ハマス・イスラエル戦争の現状-人道問題、ヒズボラ、ハマス後のガザ(11/2)

<スピーカー>
マックス・ブート 米外交問題評議会シニアフェロー(国家安全保障研究)
スティーブン・A・クック 米外交問題評議会シニアフェロー(中東問題担当)
リンダ・ロビンソン 米外交問題評議会シニアフェロー(女性と外交政策担当)
レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー(中東問題担当)

<プレサイダー>
マイケル・フロマン 米外交問題評議会会長

米外交問題評議会会長が、同評議会フェロー達にインタビューする珍しい形式の記事で興味を惹かれましたが、結局は、イスラエル支持の内容でした。
ポイント
『現状で停戦に応じるのはイスラエルにとっては間違いだろう。少なくとも、停戦の意味を明確にする必要がある。ハマスにとって、停戦は勝利を意味するからだ。(停戦に応じても)イスラエルに対するハマスの脅威はなくならない。それは、イランにとっても勝利になる。』
『ハマスによるガザ支配を終わらせることは、この地域全体の安全保障にとって不可欠であり、それを望んでいる。』

先月記事


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