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「アメリカパワーの失墜」フォーリン・アフェアーズ・リポート2023年11月号 一言感想

米国外交問題評議会(今のところ、国際情勢において世界最大の影響力を持つと思われるアメリカのシンクタンク)の意図を掴むために購読しています。


ハマス悪し、イスラエル支持の記事ばかりかと思って読みましたが、違う主張の記事も掲載しているのが意外でした。

アメリカパワーの失墜

①機能不全のアメリカ-中露を抑止できるのか

ロバート・M・ゲーツ 元米国防長官
著者は、wiki によると共和党支持の無所属の方のようです。

プーチンと習近平の共通点を「帝国期の栄光を取り戻すことが自らの宿命」「先進民主国家、特にアメリカは最盛期を過ぎ、不可逆的な衰退期に入った」と確信していると述べている。これに対する著者の考えは、ロシアは弱体化しているし、米国の経済は好調で、アメリカと他国との技術的・経済的ギャップは拡大していく(米国が益々強くなる)、としつつ、社会コスト膨張対策や債務上限引き上げ反対等による政策の失敗・トランプの権威主義外交の失敗を問題視している。

著者はネオコンでは無いようですが、けっこう好戦的というか、他国への干渉(パートナーシップとか柔らかい言い方ではあるが)を推奨している印象を受けました。

著書


ドキュメント 中東危機

②ハマスのイスラエル攻撃-イランの関与レベルは(10/8)

レイ・タキー 米外交問題評議会シニアフェロー

速報のような短い記事です。
「ヒズボラの活動、レバノンに紛争が飛び火するかどうかが、ワイルドカードとみなされている。」


③イスラエルがガザに侵攻すれば-ヒズボラ、西岸、イラン(10/9)

ブルース・ホフマン 米外交問題評議会シニアフェロー(テロ、テロ対策担当)
ハマスを非難するストレートな記事


④大いなる誤算-ガザ侵攻というイスラエルの間違い(10/14)

マーク・リンチ ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学)
イスラエルに自制を求める冷静な記事。②の記事から流れが変わった感がある。下記のように鋭い指摘もしている。

抜粋
『ハマスが政権を掌握したのは、2006年の立法評議会選挙での勝利を収めた後で、その基盤を固めたのは2007年に、ハマスを締め出してファタハに置き換えようとした、アメリカの試みが失敗した後においてだった。』

『アメリカやイスラエルの政治家や専門家のなかには、戦争の拡大をむしろ歓迎する者もいるようだ。彼らは、イランを攻撃することを求めている。そのほとんどは、何年も前からこの立場をとってきたが、ハマスのイスラエル攻撃にイランが関与しているという主張は、テヘランとの戦争を始めようとする人々の連合を広げていく可能性がある。』


(※)紛争と人道的危機― イスラエル・ハマス戦争(10/17)

クリスティーナ・ブーリ CFR リサーチ・アソシエーツ(中東研究)
ダイアナ・ロイ ライター・エディター

Web上だけの記事のようです。
ガザが今回の紛争前から既に深刻な人道危機に陥っており、それの受け入れに消極的なエジプト政府を非難している。

私は、巻き込まれないように努める事は、国として当然の権利だと思っています。


⑤追い込まれたエルドアン-トルコへの毅然たる新アプローチを

ヘンリ・J・バーキー リーハイ大学教授(国際関係論)

エルドアンを非難する記事。イデオロギーに注意して読めば、よく纏まっていおり勉強になりました。
本書(米国グローバリスト)としては、反西側諸国が、トルコを中心に纏まることを恐れているのだと、私は考えます。本書が米国のための書籍であることは理解していますが、だからこそ、トルコを非難し西側の考えを押し付けるのでは無く、西と東の架け橋として、うまく使うくらいやって欲しい。そして日本も、トルコやインドのような国を、平和実現のために見習ってほしい。

紹介されていた著書 George S. Harris 元国務省高官 1972年著


台湾海峡危機

⑥台湾海峡で中国を抑止するには-アメリカの能力と決意を示せ

デビッド・サックス米外交問題評議会フェロー、
イヴァン・カナパシー元国家安全保障会議ディレクター

アメリカは台湾の軍事力を高めよ、という主張。
注意すべきは、
「中国はすぎに、この地域(台湾)でのアメリカの軍事力を撃退できると考えているかもしれないが、オーストラリア、日本、そして潜在的に他の諸国とも争うことになれば、話は違ってくるはずだ」
という記述です。日本は、米国の挑発(本論文の公開が認知戦であり、挑発という認識)に協力しないよう、冷静に行動すべきと私は考えます。

⑦台湾がとるべき道-対話による戦争回避を

侯友宜 台湾国民党 総統候補

2024年1月13日の台湾総統選挙で国民党総統候補に選出され方で、警察省長官・新北市長のキャリアのある方です。
米国外交問題評議会は国民党を指示しているのか、それとも国民党のロビイングが上手だったのかは分かりません。
主張は下記のように、至極真っ当に思えます。
抜粋
・中華民国の憲法と法律に則したやり方で、北京と建設的な交流を試みるつもりだ。
・台湾は二つの極端なコース間の中道を歩むべきだろう。
・われわれは、パートナーとともに、平和、安定、発展を育む未来を築いていく。これが台湾のビジョンだ。
・互いに主権を認めないが、統治権の否定もしない」(九二共識)を前提に、公的な交流を実施することを私は提案する。


⑧ウクライナと欧州、ロシアの未来-対ロ封じ込めの時代へ

マイケル・キマージュ 米カトリック大学 歴史学教授

2004年オレンジ革命、2014年マイダン革命含め、ずっとプーチンが悪いという記事。コメントはありません。

紹介されていた著書
The Russo-Ukrainian War: From the bestselling author of Chernobyl 
Serhii Plokhy 2023/5/6


⑨次の経済ショックにいかに備えるか-グローバル経済を待ち受ける衝撃

クリスタリナ・ゲオルギエバ IMF専務理事

主に経済的な視点から、「国際協調が後退している潮流は、グローバル経済がもらたした大きな恩恵を押し潰す恐れがある」との主張。もちろん一理はあるが、メリットもあればデメリットもあるのは当然の事なので、デメリット(富・権力の集中、格差の拡大)を是正するチャンスとして捉えて欲しいと、私は考えます。

IMF出資額を増やせという記載があったので、関連する記事を貼ります。日本は金だけ払わされている、という趣旨のコメントが多いですが、私も同感です。


Current Issues

⑩ロシアの反欧米連合-アメリカの敵を束ねると

ハンナ・ノッテ ジェームズ・マーティン不拡散研究センター ユーラシア不拡散プログラム・ディレクター

ロシアを悪であり「新しい枢軸」とレッテルを貼りつつも、弱体化はしていない事を警告する記事。
ロシアが孤立しているのか、していなのか、経済制裁が効いているのか、いないのか、一貫していないような内容であり、筆者が、ロシアのパワーを認る事に抵抗があるように感じた。

⑪中露に挟まれたモンゴルの選択-アメリカは何をオファーできるか

トゥブシンザヤ・ガンチュルガ元モンゴル大統領補佐官(外国政策担当)、セルゲイ・ラドチェンコ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 特別教授

モンゴルは、中露と距離をとる事をすすめる論。モンゴルは、アメリカが中央アジアにどのようにアプローチするかのモデルケースになれるかもしれない、と論じている。
アメリカが、ロシアーモンゴルー中国が一体となるのを嫌がる事は理解できますが、私は、地理的に、モンゴルがアメリカを頼るのは効果的では無いと思います。あくまで、中露に対抗したいのであれば(この前提が間違っていると思いますが)、周辺の大陸国家との連携がセオリーで、インド・中東でしょうか・・・民族的には、やっぱりロシアが近いと思えてしましますが。もしかすると、世界から見た日本が中韓と仲良くないのが理解できないのと同じ感覚なのかも。

10月記事


12月記事


フォートトーク生成「アメリカパワーの失墜」

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