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キッシンジャー論文「AI統治と軍備管理の教訓-壊滅的事態を回避する米中の責務」フォーリンアフェアーズ12月号より

フォーリン・アフェアーズ・リポート12月号Web公開論文に、キッシンジャーが寄稿していました。(雑誌の発売は12/10予定)

【AI統治と軍備管理の教訓-壊滅的事態を回避する米中の責務】
ヘンリー・A・キッシンジャー キッシンジャー・アソシエイツ会長
グレアム・アリソン ハーバード大学教授

キッシンジャーがAIを語るのは、あまりピンと来ませんでしたが、共同ですが著書も出しているようです。

論文の中身に移ります。
序文抜粋
『この2年にわたって、AI革命の最前線にいるテクノロジーリーダーたちと問題を検証してきたわれわれ二人は、「AIの無制限、無節操な進化はアメリカと世界に破滅的な結果をもたらす」という見通しには大きな説得力があり、「各国の指導者はいますぐ行動を起こさなければならない」という結論に達した。そうする上で、われわれは冷戦期の核管理の歴史から教訓を学ぶことができる。大国間戦争が80年近くもなかった国際秩序を形作るなかでわれわれが学んだ教訓は、いまAIと対峙する指導者にとって最良の指針となる。AIのもっとも危険な発展と応用を防止するためのガイドラインを作成する機会を手にしている米中は、この機会を早い段階で生かす必要がある。』

内容は5部構成になっています。


AIと核兵器

AIの危険性の問題提起と、その解決のため、核兵器の時代に学ぶ事を提案している。
抜粋
『現状での、AI超大国は米中だけで、さらに洗練されたAIモデルを訓練するために必要な人材、研究機関、大容量コンピューティング(計算)能力を有するのもこの2カ国だけだ。つまり、米中両国は、AIのもっとも危険な発展と応用を防止するためのガイドラインを作成する限られた機会を手にしている。ジョー・バイデン米大統領と習近平中国国家主席は、例えば、2023年11月にサンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)の首脳会談で、この機会を生かすべきだろう。そして、いま彼らが直面するもっとも重大な問題の一つについて、直接顔を合わせて集中的に議論する必要がある。』

アチソン=リリエンソール報告

1945年以降の核兵器の歴史を説明している項。

アチソン=リリエンソール報告とは、1946年3月 21日にアメリカの H.トルーマン大統領に提出された「原子力国際管理に関する報告」です。
英Wiki


核抑止と核不拡散

核抑止と核不拡散の歴史を説明している項。

AIをいかに管理するか

核時代の失敗の原因を『いずれもリーダー国が主権の一部を(国際管理に)譲る必要があったことが失敗の原因だった。』としている。
また、核とAIの違い(注意点)の一つとして下記を挙げている。
『核技術の開発を政府が主導したのに対して、AI開発を牽引しているのは民間の企業家、技術者、企業だ。マイクロソフト、グーグル、アマゾン、メタ、オープンAI、そして一握りの小さなスタートアップで働く科学者たちは、政府における同分野の取り組みよりもはるかに先を歩んでいる。これらの企業は現在、激烈な企業競争に明け暮れており、イノベーションが促されるのは間違いないだろう。だが、それには代償が伴う。それは、これらの民間企業がリスクと報酬のトレードオフは検討しても、国益がほとんど考慮されないことだ。』

下記項で触れていますが、キッシンジャーの目的は「グローバル秩序構築」でしょうが、私は、「”米英の考えを強制する”グローバル秩序構築」を目指した結果が、今のいびつな世界だと思っています。平和のため、「グローバル秩序構築」したいのであれば、他国・他宗教の価値観を認める、新しい考えが必要だと思います。(LBGTのような押し付けで無く、対話によって調和する”和”の世界)

米中とAI

『グローバル秩序構築の試みは、AIがもたらすもっとも危険で壊滅的な結果を防ぐための各国の努力からスタートすべきだ。』と提案している。


感想まとめ

AIの脅威を核兵器になぞらえて、国際的なルール作りを提言する論文です。先月号から、このような傾向がありましたが、キッシンジャーに寄稿させるあたり、米外交門評議会(グローバリスト)は、本気でAIに脅威を感じているのかもしれません。
私は、あくまでもAIは道具なので、危険かどうかはそれを使う人間次第と思いますが、危険の程度で言えば、確かに脅威かもしれません。人類全体が抽象度を上げ、今よりちょっとだけでもいいので利他的な思考をできれば、AIでも、次のテクノロジーでも、幸せのために使う事ができると思います。


余談
ちょうどイーロン・マスクが同様の発言をしたようです
Musk: AI more dangerous than nuclear bombs

AIとは関係ありませんが、ジャーナリストの河添恵子さんによる、キッシンジャー死去を受けての振り返り動画です。
ダイバーシティニュース「政治」:【2023年12月12日(火)放送】


参考 論文著者 著書

キッシンジャー

グレアム・アリソン


12月号の記事はこちら


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