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「Agenda2024 台湾、中東、レジリエンス」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2024年1月号)一言感想)

グローバリストが、今どのように考えているかを知るために読んでいます。
(私は、反”行き過ぎた”グローバリズム です。)



アジェンダ 2024 台湾、中東、レジリエンス

①本当の対中抑止力とは-米台が中国を安心させるべき理由

ボニー・S・グレーザー 米ジャーマン・マーシャル財団 マネージングディレクター
ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学 教授(中国・アジア太平洋研究)
トーマス・J・クリステンセン コロンビア大学教授(国際関係論)

戦争を煽らない、良い論文だと思います。この論文が今月号のトップにあることが、米外交問題評議会の意思だと感じました。中東が忙しくて、中国・台湾どころでは無いという事でしょうか。

序文引用
『ワシントンと台北は抑止力の強化に努めながらも、武力行使を控えれば、懲罰の対象にはされないと北京を安心させなければならない。一部の米政府高官たちが主張するように、台湾を主権国家として承認し、台湾防衛のための明確な同盟コミットメントを示せば、北京の安心感は損なわれ、抑止力も低下する。この場合、ワシントンが地域的な軍事力強化にいくら力を注いでも、戦争を防ぐことはできなくなるかもしれない。』


②中東を一変させたガザ戦争-混乱をいかに安定と秩序に導くか

マリア・ファンタッピー イタリア国際問題研究所 アソシエートフェロー
バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 教授(国際関係論)

アメリカは、長らく無視してきたパレスチナ問題と向き合う戦略を必要としている、と論じており、盲目的なイスラエル支持を見直す事を言及するのかと期待したが、アメリカが中東に平和をもたらしたいなら、イランとその代理勢力を牽制する新たしい方法を見つけなければならない といっており、イランが悪いという、あまり面白くない内容だった。

③ハイリスク環境における安定とは-システミック・レジリエンスの確立を

アンシア・ロバーツ オーストラリア国立大学 教授(グローバル・ガバナンス)

デリスキング(デカップリングに変わるソフトな代替用語)の中に「システミック・レジリエンス(時間を経ても生き残り、繁栄するシステムの能力を決定する特性)」を組み込むことを提案している。

レジリエンスには「吸収、適応、変革」という3つのモードがあり、2010年にChinaが日本へのレアアース輸出を禁止すると、日本は3つもモードすべてを駆使して被害を最小限に食い止めた。
 短期的には注意深い在庫管理によって供給中断のショックを吸収し、在庫を可能な限りうまく利用した。中期的には、中古レアアースをリサイクルして、代替品での利用で対応し、長期的には、中国以外の世界における鉱山の新規開発など、レアアース鉱山市場の変化を利用した。

・・・だそうですが、日本がそんなに立派な対応をしていたとは知りませんでした。

ロシアとウクライナ

④プーチン独裁と大衆の無関心-終わらない戦争とロシアの日常

アンドレイ・コレスニコフ カーネギー・ロシア・ユーラシアセンター シニアフェロー

プーチンが悪いという西側のレトリックの論文ではあるが、全体的に柔らかいというか、歯切れが悪いというか、根拠が薄い、プーチンを非難するのが現実的に苦しくなってきたのか、それとも方向転換があったのかと思わせる内容でした。

特に、下記点をさらっと認めているのが、西側論文として画期的だと思いました。

・ロシア市民の多くはプーチンを支持している
・ロシア経済が健全である

また、
「多くの民衆を戦場に引きずり込まない限り、ロシア人はプーチンの権威を疑わない」
という表現は説得力があると思いました。


⑤ウクライナ戦争の戦略シフトを―反転攻勢から防衛へ

リチャード・ハース 米外交問題評議会名誉会長
チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会シニアフェロー

ウクライナ紛争について、米国外交問題評議会が、方針を「停戦」に変えた重要な論文だと思います。
抜粋『勝利できない戦争であるだけでなく、時間がたつとともに、ウクライナは欧米の支持を失う危険もある。ウクライナが、ロシアと「停戦交渉」を試み、軍事的な重点を「攻勢から防衛」に切り替えるための戦略シフトをめぐって、ワシントンはキーウそしてヨーロッパのパートナーとの協議を開始する必要があるだろう』

⑥スマートな指導者がなぜ愚かな判断をするのか-外交政策は合理的か

カレン・ヤルヒ=マイロ コロンビア大学教授(国際関係論)

「多くの専門家からみれば、ウクライナ侵攻というロシアの決断に合理性はなかった」という言葉から始まり、
ミアシャイマー、ケネス・ウォルツ、キッシンジャー、ジョージ・ケナン等に代表されるリアリズム:国家は合理的に行動する、という考えを批判する論文。

リアリズムには指導者(プーチン等)の動機が含まれていない為、というのがその批判の理由としていうが、私が思うに、その指導者の考えを理解しておらず、自分側の考え(西側の考え、キリスト教的価値観など)が絶対だと思っているから、そのような考えになるのだと思いました。

最後は、習近平が台湾について合理的な考えをもつことを期待するのは希望的観測かもしれない、と締めており、台湾有事を煽る論文かもしれないと読み取りました。

論文内で紹介されていた、ミアシャイマーとセバスチャン・ロザートの著書

Current Issues

⑦欧州における右派の台頭-移民と法の秩序

マティアス・マタイス 米外交問題評議会シニアフェロー

米外交問題評議会が、保守政党を嫌っていると読み取りました。
オランダのウィルダース政権が連立に成功したとしても、イタリアのメローニにように、急進的立場からの後退を余儀なくされるだろうと分析しており、私もそうなる可能性は高いと思いますが、それでも、少しでも、極端なグローバリズムの是正に向かうことを期待します。
論文内では、保守派支持の理由として移民と環境問題(保守派支持=移民反対、脱CO2反対)を挙げていますが、日本も、こういった国際情勢を認識し、移民審査の強化や、本当の環境問題に取り組んで欲しいです。


⑧紛争後のガザを誰が統治するのか-紛争から外交への長い道のり

ヨースト・ヒルターマン  国際危機グループ  プログラムディレクター(中東・北アフリカ)

ポイントは下記であり、
『紛争後のガザに関しては、「アラブ諸国が平和維持軍を派遣してガザを統治する」という提言もある。アラブ人はみな家族である以上、熱心ではないとしても、アラブ諸国は同胞の面倒をみる準備をしているはずだという理屈が示されている。だが、アラブ各国はそのような役割には関心がないことをすでに示唆している。』
アラブ諸国を一括りで考えたり、西側の認識で他国の問題を捉えるのではなく、関係者・国・組織が、どういう考えをしているのかを知ることが、平和への道だと、私は考えます。


⑨ハビエル・ミレイがアルゼンチンを変える?― 過激なリーダーシップの可能性とリスク

ブルーノ・ビネッティ インターアメリカン・ダイアログ 非常勤フェロー

序文抜粋『アルゼンチン大統領に就任したハビエル・ミレイは、中央銀行の閉鎖や米ドルを自国通貨として採用するといった極端な公約の多くからは、すでに後退をみせている。それでも、大統領としてのミレイに立ちはだかる課題は非常に大きい。この国が何十年にもわたって陥ってきた衰退と不安定の連鎖を断ち切るには、政権奪取の際にみせた大胆さだけでなく、妥協し、不必要な争いを避け、過去の改革の試みから学ぶ姿勢が必要になるし、経験と知識ある人々を迎え入れなければならない。』

私は、アルゼンチンについて詳しくないので何とも言えませんが、気候変動否定論や中央銀行の閉鎖(後に撤回)など、面白い人物だという事は分かりました。

WEFに紹介ページがあるようです。。


⑩トランプ現象とアメリカの政治文化-ヘンリー・フォードとトランプ

マイケル・カジン ジョージタウン大学教授(歴史学)

トランプを、かつて資本家で大統領候補に擁立されつつあった(断念した)ヘンリー・フォードと重ね、トランプの魅力を「誰もが名前を知っている金持ちが、民衆の多くが恐れているか不信感をもっている人たちをバッシングし、国のあらゆる問題を解決する」としており、好意的に評価しているように読めるのだが、最後は
 トランプが大統領に選ばれることはおそらくないだろう
 トランプが選ばれれば壊滅的な事態になる
と締めており、著者はトランプを支持しているが立場上はっきりとは書けないのかなぁ、と思いました。


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