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0012 《最後の誕生日.》

 19歳の誕生日に感じた絶望。それを今もはっきりと覚えている。

 アイドルみたいなことを始めたのは15歳の時だった。(全然売れなかったけれど。泣)ハタチに近づくにつれて、最初の頃のちやほやが薄れていくのを、肌で感じるようになった。焦った。歳下の女の子たちと自分を比べて、「価値がない」と思うようになっていた。もう10代が一年しかないなんて、信じたくなかったあの日。逃げ出したかった。同じ気持ちになったのは、20代最後の誕生日。今度は結婚の市場において、もう「価値がない」と思い始めた。誰に言われたわけでもない。”空気”が私をその気持ちにさせたのだと思う。

 今年の誕生日で気づけば32歳。正直あの頃の、自分を小さく小さく何かに押し込めて苦しんでいた気持ちはなくなってない。やっぱり人と比べることもあるし、「私なんて...」と落ち込んで自分の価値を感じられない時だってある。でも今は、自分の幸せを他人に委ねなくなった。誰かにちやほやされなくても、褒めてもらえなくても、ぐしゃっとした感情を抱えていても、幸せかどうかは自分で決めていいんだ、って気づいた。

 10代も、20代も終わるのは、すっごく怖かったけれど、案外ふわっと20代にも30代にもなった。

 そして、歳を重ねて世界が広がれば広がるほど、もっとその外には愉しいことがゴロゴロ転がってて、それらを一生懸命拾い集めるように味わい続けていかなくちゃと思うようになった。数えきれない奇跡が起きて、こんなに美しい地球に生まれてきたみたいだから。


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