《虹色の秋.》

　旅先でみられると嬉しい「虹」。その美しさと偶然性には、旅の気分をうんと盛り上げてもらえるものだ。

　栃木県・日光市に到着したのは霧のかかる秋の午後。せっかくの旅行だから明日は晴れてくれるといいなと思っていたら、ほんとうに翌日からお天気になった。

　青空のもとでみる色づく木々。今まで思っていた紅葉の紅・黄・橙の三色だけではけっしてない。橙には黄色にちかいものから赤みがかったものまでがあり、緑ののこる部分には淡い色から濃い色までが入り混じっている。水面に映る紅は少しばかり紫がかってもいた。

　秋晴れの大谷川（だいやがわ）を包む紅葉は、まるで雨上がりの空にかがやく虹のような色をしていたのだ。

　朝の有名な滝にかかるそれはみられなかったけれど、想像していなかった已己巳己な景色をみせてくれた日光の自然。こういう嬉しい「裏切り」こそが旅の醍醐味だなと、見惚れる視線の先にひろがる光景に思わせられるのだった。