《夏、お昼寝.》
とろけそうだ。この暑さのせいでなく、幸せすぎてそう感じてしまうのだった。
冬から始まった祖母の車いす生活。それに寄り添いたいと、彼女の家でほとんどの時間を過ごすことにした。初めは不可能にさえ思えていた車いすとベッドの行き来も、半年がたちすっかりわたしの得意なことになっている。
一日3回。そのことは繰り返される。使っているのは介護ベッドなのでそれに合うテーブルの用意もある。それでも、食事はダイニングテーブルでしたいという祖母の希望を叶えてあげたい。わたしが料理担当なので食事前にベッドをおりる時には母が、帰りは母が食器を洗っている間にわたしが車いすからベッドへ移すことがいつの間にか定番になった。
ここ最近、日の出が早いからか、早くに目が覚める。すると、ちょうど昼食後に眠気がおそってくるのだ。そんなタイミングで祖母をベッドへ移すと「まなもおいで」と言われる。隣に横になる。ふと気づけば眠ってしまっているのだった。
一時間ほどたった頃、お互いに目が覚める。こちらを向いた祖母は、わたしがいることを思い出し「あ、まなこさん」と言う。その時にちょっぴりにんまりする彼女の額に、わたしは思わずキスをしてしまう。それも何度も何度も。
食後のデザートのようなこの甘いひと時。夏っていいなとふんわり想う。うっすらあけたカーテンの隙間からは、その陽射しが優しくこぼれていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?