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【今日の論文】「新しい戦争の政治」(Kaldor 2012)

Kaldor, M. (2012). ‘Chapter 4: The Politics of New Wars’, in New & Old wars. Mary Kaldor. 3rd ed. Stanford, Calif: Stanford University Press. pp.71-93.
Kaldor, M. (2010). ‘Inconclusive Wars: Is Clausewitz Still Relevant in these Global Times?’, Global policy. [Online] 1 (3), 271–281.
(私は大学側から配布されたバージョンで読んでいるので、若干バージョンが異なっている可能性があります)

読みやすさ:★★☆☆☆
目新しさ:★★★★☆
面白さ:★★★★☆

ずっと読みたいと思っていた論文があった。一年目、国際関係論の中の、戦争学(War Studies)という分野においてが初めましてだったのだが、2年目に於いても再度出会うタイミングがあったので、一念発起して読むことにした。

そもそも:War Studies


War Studiesは、国際関係論の中の一分野だ。「国際関係論」という学問は、安全保障・環境問題・保健衛生といった様々なテーマを扱うが、その中に戦争というテーマがある。世界的には、ロンドン大学キングス・カレッジ(KCL)が、この分野で名高い。が、KCLでしかこの分野を学ばないわけではもちろんなく、去年の私は国際関係論の期末課題の関係で戦争学的知見からの戦争・対立の分析及び冷戦の終結の関連性を考えることになったのである。 ナショナリズムの根本的な根本的なカテゴライゼーションは「民族性(ナショナリズム)」は、血族的要因に起因すると考える人たちと(Ethnic nationalism)、外的・文化的要因に起因すると考える人たち(Cultural nationalism)の間にある。が、これは国際関係論におけるリアリズムとリベラリズムのような根本的なもので、その後に色々理論が構築されてきて今に至る。 その中で、Kaldorは元々クラウセビッツ(von Clausewitz)の戦争論が「戦争は国家が目的を達成するための手段」と述べたのに比較し、戦争の長期化とそれ自身が目的化していることを主張した人である(Kaldor 2010)。

グローバライゼーション

それを踏まえて、グローバリゼーション(Globalisation)についてはどうだろうか。。グローバライゼーションによって、国際政治上のアクターは多様化した。同時に、国際的及び国内的な収入格差・金銭格差というものは拡大しつつある。国内では「情報を扱う職業」が覇権をふるい、国際的には生産国にも消費国にもなれなかった国の周辺化が続く。

その中で、社会の不安定感と安全保障の欠落が感じられるようになってきた。国家への帰属感も薄まる中で、文化・活動ベースの国境を跨いだアイデンティティが意味を持つようになってきた。

これにはいくつかの結果がある。一つは、アイデンティティ・ポリティクスの増加。国民を動員する際や不安定感に対応するためにアイデンティティが叫ばれるようになる。1970年代に東欧諸国でナショナリズム運動が増加したように、もしくは植民地政策から解放された国々に置いてナショナリズム的政治とそれによる国家の細分化が進んだように。

もしくは、パラレル・エコノミー(国家と呼応しない経済圏)の発達。こちらは武器の供与や資金の移動に繋がるようなアンダーグラウンドな経済圏を意識していて、先に述べたような「国家の手段としてではない」長期化した戦争に繋がってくることになる。このような経済圏を満たすための戦争を続けて、ビジネスを回し続けることになる。

そう思うと、グローバル化の進展とナショナリズム、および一応国内問題であるポピュリズムやアイデンティティ政治の関係性が見えてきて面白いなと思ったのである。

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