【🇸🇪スウェーデン日記】#8: 長靴下のピッピ

7月7日の続き：授業3日目。午後はフリー。初めての雨が降らなかった日。
早めについたから、フリーエリアで課題を読みながらぼんやりしていたら、スッと私の前に物静かなドイツ人の少女が立ったので、一緒に教室に入った。

先生がすごく丁寧にコースを作っているんだな、とわかる。私はそういう授業が好きだ。課題とかに丁寧に取り組んでいくと、長期的にみたときに何か発見があるようなものは、「新しい視点からの教育」を受けているようで面白いのだ。

例えば、スウェーデン日記の第1回か2回で書いたSound of Integrationを録音してきて、の課題には、ステップ2があった。では、この音を理解するために論文を一つ読んで、その中で一番興味深いと思ったクオートを読み上げて録音してきてください。その背後には、何かリサーチをするときは「先行文献の調査」と「実地調査」が並行する、という基本的な姿勢があって、しかし私は誰かがそれを言語化して再確認してくれたことがすごく有益に思えたような気がした。

ロンドンの中華街の周りで撮った音の方には、中華街の人たちにインタビューをしてアイデンティティとのつながりを探ったものがあったから、それを読むことにした。ミドルエッセクス大学に研究している先生がいるらしい。かつては労働機会・食品・人間関係の供給場所だった中華街は、様々なバックグラウンドの人が来るようになったこと・人々自身もイギリス社会に溶け込んでいったことなどから、アイデンティティ提供者としての役割が下がったものの、観光地・中国人のための場所など複数の顔を持ち続けている。歴史を辿っていくこの調査論文はすごく興味深かった。

ついでに、スウェーデンで博士号を取ることについても聞いてみた。スウェーデンの場合は全て大学側のファンドで取る(大学がリサーチ・スタッフとして雇う形になる)ので、普通に仕事にアプライするみたいな形になるのだと言う。20%をティーチングに充てることができるので、多くの人はもともと4年のコースを5年にして(=20%伸ばして)卒業すると言う。マスターの卒業論文を見るので、マスターで卒論を書けとのことだった(世界には卒論を書かなくても卒業できるコースがいくらでもあるのだ)。

仕事で(仕事と言っていいのだろうか?)色々な留学生の話を聞くことがあるのだが、その時に感じるのは、「一回行ったことがある国は、留学先に選ぶときの選択肢に入りやすい(し、優先的な選択肢になりやすい)」ということである。私自身、たったの2週間だがイギリスに来ていたことがあるので、本当にその程度でも良いのである。そういう短期の滞在経験は、実は大きな意味を持つことがあるのだ。

午後は課題をちょっと片付けて、嫌になったところで街に出た。さっきの最終課題の延長で、私はモザイクとかをやりたいなと思ったので、スクラップブックを探すという名目にした。

まず、昨日見つけた可愛い雑貨屋に入ってみる。ノートはあるけど、スクラップブックはない。代わりにあまりに可愛いデザイン・ペーパーの冊子を買った。私は可愛い文房具が大好きなので、折り紙サイズの冊子に各種様々なデザインの紙が綴じ込まれていて嬉しくなってしまったのである。次に、フライング・タイガー・コペンハーゲンに行ってみる。昔はあったと思ったけど、今はスクラップブックは置いていないらしい。そのあと、デパート的な建物に入ってみる。一番上の階に文具があると思ったが、スクラップブックはなかった。

今日は無理かな〜と思って歩いていたら、大きな画材屋さんがあった。入ってみたら、子供用のアイロンビーズから油絵の具、手芸用品までいろんなものを置いているお店で、スクラップブックとデザインペーパーのコーナーがあった。デザインペーパーをさらに買うか迷って、理性をちゃんと働かせてスクラップブックだけを買った。

絵本「長靴下のピッピ」がスウェーデンの作品だとは知らなかった。ノンタンやアンパンマンの柄の子供向けプラスチック皿があるように、ピッピの柄のものが色々ある。同じコースのフィンランド人の少女がピッピの傘を使っていたので、いいね、と言っておいた。

こうやって色々みると、この国には消費経済的な文化があるのかな、と思う。イギリスとかパリとかには、こういう「雑貨屋」とか、安くて短絡的な趣味のもの、みたいなもののお店はほぼないに等しい。服屋があって、実用的な文具屋さんがちょっとあって、くらいだ。逆に、ドイツ・シンガポール・日本とかには、細々とした安くて可愛いもののお店がある。日本の皆様は言われなくてもわかっているだろう。スウェーデンの小売店はどちらかといえば後者に近くて、しかし同時にサステイナブル・デベロップメント的なセカンド・ハンドショップとかも発展していて、国によってこうも違うものか、と思う。イギリスにもOxfamはあるけれど、そんなにメインストリームかと言われれば違うような気もするし。

お目当てのスクラップブックを買って帰路についた。一回家にパソコンとかを置いて、寮の反対側の大きめの方のスーパーに行ってみる。玉ねぎとマッシュルームと合い挽き肉とトマトの缶詰とパスタを買いたい。玉ねぎはLokというらしい。合い挽きはBlendorみたいな感じ。トマトの缶詰はtomatorみたいな感じだったからわかった。勘だけで買い物を乗り切った。天才。帰ってきてミートソーススパゲッティを作って食べた。別においしくもまずくもないので、コスパというものはどうなっているのかと思う。

スウェーデンの人は、ちょっと怖く見えるけど、概ね優しい。接客に笑顔が付いてくるし。とりあえずスウェーデン語で話しかけてくるので(そりゃそうだ)、本当にごめんだけど英語で…？というと、嫌な顔ひとつせずに英語に言い換えてくれる。教授が「スウェーデン人は短期滞在者には優しいが長期滞在者にはそうでもなくなる」と言っていたので、それを経験していくのかもしれない。