【スウェーデン日記】#4:ウェルカム・セレモニー
7月4日:ウェルカム・セレモニーがあった。主に本日としては、他の人とちゃんとお昼ご飯を一緒に食べたことと、ソーシャル活動から目を背けなかったことに関して、自分を褒めてやりたいと思う。
昨日布団に入ってから、多分9時間くらい寝ていた。やたら眠かった。部屋が寒くて、何回か目覚めて、その度に掛け布団を探してきたり、長ズボンに履き替えたりした。7時に目を覚まして、8時に寮の外に集合して、みんなでウェルカム・セレモニーの会場に向かった。歩くというからすぐなのかと思ったら、40分ぐらい丘を登ったり下ったりしたのでちょっと面白かった。ゴッテンバーグは今の所ずっと曇っていて、断続的に雨が降る。ロンドンみたいだな、と思っていたら、「小さいロンドン」みたいなあだ名すらあるらしい。
歩いている途中で、色々な人と喋ることになる。私はこういうのが一番苦手だ。シンガポール人と、ドイツ人と、オランダ人と、スウェーデン人とフィンランド人と、アメリカ人などと話した。ドイツ・オーストラリア・ベルギー含めて欧米諸国から来ている人が多い気がする。みんな英語が第一言語じゃないから、会話がなんとなくのんびりしていて良い。去年シンガポール行ったよ!めっちゃよかった!の話題と、ボストン行ったことあるよ!綺麗な街だね!の話題と、ベルギーのヘント大学だけ知ってるよ!でしばらく繋いだ。ベルギーのヘント大学は、Internationalな大学というより、Erasmusの大学(交換留学)ということがわかったのでとても有益だった。ヘント大学に自分の分野で著名な先生がいるので、面白そうだなと思っていたのである。
ここまでくると、私のコミュニケーションにおける問題は、英語能力ではなくて、コミュニケーション能力なのだということがわかる。会話が途切れた時に、そのまま放置していいのか(それは心地よい沈黙であるのか)、何か話題を持ってくるべきなのか。喋り続けていいのか、ちょっと会話を簡単でテンポの良いものにした方がいいのか。コミュニケーションというのは、いつまで経っても難しい。
9時から12時まで、メインの講堂でウェルカム・セレモニーが開かれる。入学式や卒業式の類に久しく遭遇していないので(イギリスにそんなものはない)、ちょっとそわそわしながら偉い人の話を聞いたり聞かなかったりした。国内の大きくて有名な大学から来ている日本人が何人かいた。私が大好きだった友人が通っていた大学だったので、なんだか勝手に親近感を覚えたりもした。俺は3年もイギリスにいるけど、あなた達ほどちゃんと英語喋れないや。すごいね、と思ったら、帰国子女らしかった。すげー。
3時間も何するのかしらと思っていたら、1時間半のところで一回お休みになって、Fikaと呼ばれるスウェーデン式のソーシャルの時間があった。緑色の不思議なお菓子が配られる。周りをチョコレートでコーティングした、中のスポンジがふわふわのケーキだ。プリンセス・ケーキという特別な機会に食べるものらしい。Fikaの最中に話しかけて来たハンブルグの少年が、ロンドン大学の海上安全保障についての講義を先週聞いたよ!というので、うちのファカルティーの先生のやつだね、と言っておいた(本当にそうだったから)。美味しいプリンセス・ケーキとオート・ミルクのコーヒーはだいぶ気持ちを軽くしてくれた。
終わった後は、学生証をアクティベートして、寮に戻る。同じコースを取る子が何人かいて、なんとなく一緒に列に入って待っていた。政治学のどんな分野に興味があるの?と聞かれたので、記憶とアイデンティティと政治とか、と言ったら、もっと詳しく?と言われたので、こんなに長く喋っていいんだっけ?と思いながら一つ一つ説明したら、分かってくれたらしくありがたかった。そのままみんなでご飯を食べて、40分歩いて寮に戻った。
寮の周りを巡るツアーも開催してくれたので、人に会うのはすこぶる面倒くさかったけどちゃんと行った。普段の大学生活はもう勉強だけしたいですマインドになっているから、せめてこういう時だけは頑張っておこうと思った。
さっき顔見知りになったドイツ人の女性が色々話しかけてくれたので、正直かなり助かった。大学のアカウントのセットアップとか、バスのチケットの買い方とか、電車の乗り方とか、そういう実用的なことばかり話していた。嬉しかったので、私が知ってるドイツ語はね、ダス・イスト・デア・フント(This is the dog)だよ、母親がこれだけは覚えておきなさいっていつも言ってるんだよね、と言ったら、ダス・イスト・アイン・フント(This is a dog)の方が正確だね、と直してくれた。そうらしいです、母上(私信)。私はまた一つ賢くなりました。
大学の周りのスーパーやジムから、大学寮の洗濯機の使い方まで丁寧に説明してくれて、なんだか優しいなあ、と思う。スーパーに行っても、レジでマゴマゴしても店員に舌打ちされないし、ごめん、なんかダメかも…と言って店員さんを呼ぶと、大丈夫よ!と笑って対応してくれるのはすごく素敵なことに思える。私はロンドンという街の生活面に悪印象を抱きすぎかもしれない。
リサイクルがかなり細分化されていて、これは北欧諸国の特徴なのか?と思う。実際どれくらい実行されているのかは別の問題であるが(それは1ヶ月かけて見極めることにしよう)、日本ともちょっと親和性があるんじゃないかなあ、と思う。
そんなこんなをしている間に、自分の中で一番ホットな論文を書いた先生に出していた問い合わせメールに返信があった。Dear Manaka (if I may)と宛名になっていて、クソ忙しいだろうに素敵だなあ、と思う。こちらはストックホルム大学の先生である。PhDやるならこの先生にスーパーバイズされたいな、みたいな。マスターもここでやりたいけど、2年かかるのでやめましょう。人生って短いらしいので。
帰りにオート・ミルクを買って、北欧かぶれになって(別にロンドンでも買えるけど)帰ってきた。眠いから寝る。
↑これ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?