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【今日の論文】自由の将来:非自由主義的民主主義(Zakaria 2007)
今日の論文
Zakaria, F. (2004) The future of freedom : illiberal democracy at home and abroad / Fareed Zakaria. New York ;: W.W. Norton & Co.
読みやすさ:★★★★★
目新しさ:★★☆☆☆
面白さ:★★★☆☆
比較政治学と政治哲学を嗜むすべての政治学生に贈る本。
はじめに
図書館で勉強することの良いところは、ぬくぬくと暖かいところと、デジタル・レポジトリがない本でもフラッと立って借りに行けるところである。授業の予習のためにセミナークエスチョンに答えていたら、突然 illiberal democracyとは何か?というコンセプト系の問題が出てきた。さっきまでスロバキア(チェコスロバキアから独立した方)の民主化についてやっていたんじゃなかったのか。
だけど、そういえば、illiberal democracyってなんだ?
Democracyという概念は、政治学を学ぶものなら飽きるほどやるものである。Democracyは様々なグルーピングが可能。ギリシャからの歴史を経て、「人々による統治」を意味する。だけど、じゃあilliberalにしたら何だというのか?
去年政治哲学の授業を受けていたからわかるはずなのに、明確に言葉で説明できない気がした。これは一大事であると思い(短期的にはセミナーで、長期的には政治学の学徒として)、席をふっと立って図書館サービスで検索したら、古典らしき本がうちの図書館にあった。メインライブラリーで貸し出し中でも、うちの学部図書館には残っていることがあるので便利だと思う。
「古典らしき本」というのは、それに対して様々なBook Reviewが出ているもののことを指す。批判文や賛成文が色々出ていればいるほど、その本は論争を巻き起こしたんだな、とわかるようになってきた。
長いので、IntroductionとChapter3: Illiberal democracyを読みました。
自由民主主義とは何か?
政治学を学ぶ者は全て、こんにち私たちの生活の中に蔓延る自由民主主義の歴史を知っている。
自由民主主義の定義は、大体こんな感じだ。
Liberal Democracy: a politiclal system market not only by free and fair elections but also by the rule of law. a se[eartop pf powers, and the protection of basis liberties of speech, assembly, religion, and property
Democracy:こちらは、どちらかといえばプロセスの話をしている。政治権力を握るものが(ここでは便宜上powerを政治機構の中の意思決定を行える、つまり議会での議席を指すものとする、異論は大いにあると思うがPowerについての議論をしていたら終わらなくなってしまうためだしこれは学術論文ではない)、競争的で平等な選挙を経て選ばれたかだ。つまり、民主主義は、必ずしも自由を保障しない。「特定の民族を虐殺します」と言って選ばれた意思決定者でも、選挙で選ばれれば民主主義ではあり得る。
だが、これは自由民主主義ではない。
ここで19世紀にヨーロッパで発展するConstitutional liberalismの概念が出てくる。政治権力(アイデアが発展した当時は絶対王政期の国王)を背景に、Constitutional liberalismといえば個々人の発言の自由、政府権力からの自由(いわゆるnegativeな自由)を意味する。
これとDemocracyがくっつくから、Liberal Democracyになるわけだ。
政治のプロセスの中で、政治権力を一点集中されること、そしてリベラリズムの方を害することは多くある。だからPeril of Presidentialism (Linz 1990)というように、政治権力が集中しやすい大統領制は問題を引き起こしやすいと言われるし(半大統領制と区別するように)、DemocracyとLiberalismとくっつけるのに貢献したトクヴィルやマディソンは民衆が間違いを起こしうると述べたわけである。‘Tyranny of majority’だし、これは遡ればJon Stuart Mills On Liberty で活発に述べられている議論でもある。
こうやってみてみると、今まで色々なところで扱ってきたそれぞれの政治思想が、つまりリベラリズムと民主主義と、それから自由論とが綺麗に結びつくのではないだろうか?私は綺麗に整頓されたような気がして嬉しかった。なんとなくそれがわかっていても、教科書やブック・リビューなどを超えてそれを説明する文献に触れることがなかなかないのだ。
要は、constitutional liberalismが失われたDemocracyがIlliberal Democracyとなるわけだ。
比較政治学のエッセンス
ついでにいえば、かなり大雑把だけれど比較政治学のエッセンスが詰まっている。比較政治学の大御所Linzへのレファレンスがあるとこもあるけれど、プーチン時代のロシアの民主主義の発展、インドやラテンアメリカ、ヨーロッパでの発展。Democracyの概念を学ぶためには読み飛ばしても全く問題ないのだけれど、ケーススタディのアイデアを拾ってくるには便利だな、と思った。多分別の記事で触れると思うのだけど、東欧とラテンアメリカは政治学(民主化)においては頻繁に比較の対象となるものだった、とか、そういう学問上の常識みたいなのがわかると途端にやりやすくなる。
なんとなく今まで日本語でやったこと、大学でやったこと、少しフガフガしていた民主主義論がうまくストンストンとあるべき場所に落ち着いたような気がして、それがとても嬉しかったのだった。
ちなみにilliberal democracyについてのディスカッションは、セミナーでは全く触れられなかった。なんだったんだ。
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