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【大学の話】安全保障とRiskの概念

はじめに

We are colonising the future. ということがある。スーパー端的に言えば、私たちが今やった何かが、必ず将来に影響を与えるという意味である。

しかし、それは、逆ではないのだろうか?と思う。私たちは、より良い未来のために現在を犠牲にしているのではないだろうか。そんな疑問に答えてくれそうな概念を取り扱ったので、ここに記しておきたい。

安全保障とRisk、将来

文献を振り返る

国際関係論から知識を引用しよう。いわゆる啓蒙主義と近代化の時代を経て、人間は今まで漠然としていた「時間」や「空間」の概念を持てるようになった。こちらに来て、というか大学で真面目に勉強してみて、'Moden' という時代に移り変わったということは、本当にエポック・メイキングな出来事なのだとわかった。

安全保障に関していえば、人類は「自分達が生きている世界に」インパクトを与えられることを自覚するようになってきた。同時に、「今私たちがしている何か」が将来に問題を起こすことも多々増えてきた。「過去からの引き継ぎでいつか何かが起こることはわかっているが、それが何なのかいつなのかがわからない」、それを安全保障ではRiskと言う。多分「危機」と訳すので良いと思うが、日本語ではもしかしたら独特のタームが振られているかもしれない。誰のせいで今日危ないことが起こっているのかといえば、私たち自身のせいというわけだ。

同時に、このRiskというものは、いろいろなアクターの間で非平等的に分担されていて、完全に対策することはできない。消し去ることができないと言う点で、脅威と性格を異にするんどこに問題が発生するかわからないからだ。これをKnown Unknownと呼ぶ。

Riskは上手く分散させることで、それに対応することができる。そういうことができる社会をRisk Societyという。Surveillanceと呼ばれるように、Riskは完全に消し去ることができない(Threatとの違い)一方で、柔軟に対処することもできる。

一方で、フーコーの生政治におけるDispotif(手段)とRisk Societyは異なっている。これは生政治においてはその対象を「予測できるもの」とするものの、Risk Societyではその概要しかわからないためだ。

一方で、Resillienceという概念もある。Riskの場合は「何が発生するかはわかっていた(Known Unknown)」が、Resilienceでは「何が発生するかすらもわからない(Unknown Unknown])」。こちらは何をしようが将来的に必ず問題が発生するという前提に立った上で、何か問題が発生した時に、それに対応することができる社会や手段を作り上げよう、という考えに基づいている。

それを踏まえて

さて、ここまできて私は、Riskの面からでも、Biopoliticsの面でもResilienceの面でも、現代と未来の関係は離れているようで近いと思った。今何か対策を練ることは、未来に対して何か残そうととしているように見えて、現代の我々が(もしくは過去の誰か達が)作り上げた何かに対応しているのと同様である。それを「今を生きている」と評することができるのかは甚だ疑問だが、そのRiskの形の不明確さとかそれへの対応の理論を知ることができたのは有意義であった。

ついでにいえば、ここにきてようやくデジタル化とか、リスクマネジメント担当職みたいなものが栄えている理由の一端を見たような気がした。統計情報やら情報管理を通じて少しでもその危機の形を捉えようとして、また特定のテーマに対して、つまりインフラやら公共サービスの提供やらなんでも、レジリエントに対応できる社会を作ろうというわけだ。そう思うと、フーコーの政治や規範への捉え方は、きちんと理解する必要があるな、と思う。

終わりに

Riskの概念と言うのは、分かったようで分からない気がする。同時に、今年に入ってからフーコーの生政治の概念を強く意識することが増えた。また要所要所で触れられたら良いな、と思う。

代表的な参考文献

Beck, U. (2002). ‘The Terrorist Threat: World Risk Society Revisited’, Theory, Culture & Society, 19 (4), pp.39-55. Available at: https://doi.org/10.1177/0263276402019004003

Croft, B., Vaughan-Williams. N. (2013). 'Introduction: An Agenda for Resilience Research in Politics and International Relations', Politics, 33(4), pp.221-228. doi: 10.1111/1467-9256.12032. 

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