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MARUYOSHIKOSAKA STORY~伝統工芸への想い・大切にしていること~


長野県は塩尻市・木曽平沢。
漆工・木工の町として江戸時代より栄えてきたこの町は、日本有数の漆器生産地として、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。
周辺は美しい山々に囲まれ、多くの自然資源に恵まれたこの地に、1945年職人工房・丸嘉小坂漆器店は創業されました。

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©有限会社丸嘉小坂漆器店

丸嘉小坂漆器店は、元々2代目社長の小坂康人さんが「呂色塗り」の座卓中心の制作をしていましたが、時代の流れとともに需要が減少したのを機に、本来では相性の悪いとされる「漆」と「ガラス」をマッチングさせる技術を長野県工業試験場と研究開発し、1994年には先駆けとなる「すいとうよ」が誕生しました。

その後さらなる研究を重ね、ドリンク用途のみならず、あらゆる場面で使用できる「器」製品として生み出されたのが、「百色ーhyakushiki-」ブランドです。

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©有限会社丸嘉小坂漆器店

従来の漆製品の概念を覆すかのように、料理の盛り付けされる内側が「ガラス」となっているのがこちらの製品の特長。現代の生活様式にあわせ、金属カトラリーを使用することができたり、「器」の用途も幅広くアレンジ可能なテーブルウェアとして注目されています。

そのうえ、デザイナーさんとの掛けあわせにより、どこか温かさが感じられながらも、クールでスタイリッシュな斬新な表現方法が、これまた魅了されるものになっています。

このように、古き良き伝統を残しつつも、時代に合わせながら実用性も兼ね備え、毎日の暮らしを「彩っていく」ような、新鮮で個性あふれる漆器を作り続けています。

こちらの3代目社長に就任されたのが、小坂玲央さん。そして、二人三脚で日々玲央さんを支えている奥様・小坂智恵さん。お二人にとって、伝統工芸への想い・大切にされていることを伺いました。

塩尻・木曽平沢の良いと感じるところ

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智恵さん:私は元々、長野県の中でも長野市よりも北に位置する中野市というところに住んでました。木曽に引っ越してきたのは19歳の時。それまで塩尻はあまり来たことがありませんでした。ただ、個人的には住む前から結構すきだったというか、専門学校のために木曽に来たのですが、結構この谷が気に入っているんですよね。生まれ育ったところと全然景色も違うし文化も違う。私が住んでいたところは近くに信濃川へ繋がる千曲川が流れていたので、川の概念も違っていたり。美しい山々が近くに見える、澄んだ川に触れられる。そのような環境が本当に心地よくて一番すきなところでもあります。なんというか、守られている感じがあるんですよね。

玲央さん:質問としては困ってしまう質問ですね(笑)当たり前にあったような景色なので。私は、出身は木曽平沢なのですが、小学校2年生の頃に塩尻市内のほうに引っ越したこともあるので、(塩尻ー木曽平沢間は)30分くらいの距離ではありますが、故郷が2つあるような感じです。育った時間がわりと塩尻市内のほうが長いので、住む環境としては塩尻市内のほうが慣れているのですが、ただ、仕事をする環境としては、木曽平沢は「適している」なと感じます。木曽漆器という家業があって、幼い頃にみていた環境なので「馴染み深い」という言葉がしっくりきます。そして何より、漆器業自体がすきなので、今はそれがある町というのが一番ですね。

お二人にとって「伝統を受け継ぐ」とは?

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©有限会社丸嘉小坂漆器店

玲央さん:
実をいうと、はじめは家業である漆器業は継ぐつもりはなかったんです。大学を卒業して塩尻に戻ってきた頃は、会社員として1年半ほど働いてました。当時は、親の仕事は当たり前の環境すぎて、かつ親への反発もあったり、なんとなく同じ仕事をしたくなかったんですよね。それが、会社員として働き始め、客観的に「漆器」「ものづくり」という親の仕事を見るようになってから、だんだんと惹かれていくようになりました。そしたらいつの間にかやりたくなっていて、最初の仕事は辞め、家業に携わるようになりました。はじめの3年間は、勉強と修行をしてましたね。親父だけの仕事を見ていても、そのやり方だけになってしまいますし、そもそも当初私が目指していたのは、漆器の「作家さん」だったんです。

私:漆器の作家さん?

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©有限会社丸嘉小坂漆器店

玲央さん:
漆器産業は一般的に分業になっていて、工程として大まかに分けると、木地⇒下地⇒塗り⇒加飾があります。「職人さん」はその分野ごとに優れている人がいて、分業にすることで、生産効率を上げて、「製品」の価格を抑えることができます。それに対して「作家さん」は「作品」を作っていくイメージです。私は初め「作家さん」になりたいと思ってました。

ただ、修行を経て戻ってきた当時の丸嘉小坂漆器店は、人手不足で、注文をこなすことに必死で、とにかく今は会社の基盤を固めることが最優先だなと。それからは「職人」としての道を歩むことになりました。そこが本格的に「受け継ぐ」というターニングポイントだったのかもしれません。

そのようにして、初めは受け継いでいくつもりのなかった家業ですが、今は全くそうではなくて、繋げていきたいと強く思っています。家族を繋げていくのと同じような感覚かもしれません。丸嘉小坂漆器店は、祖父の代から受け継がれてますが、小坂家として考えると、もっと古くから漆器業に携わっていて、漆器自体も木曽平沢という地域も、ずっと繋がっているんですね。今はできる限り若い人たちを雇用しています。自分たちがやってきたことが「成長」なのか「価値あるもの」なのか。それはどちらでも良いと思ってますし、必ずしも規模が大きくなったり人が増えたりということでなくても、何かしらの形で私たちのやってきたことが残っていってほしいと思っています。

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©有限会社丸嘉小坂漆器店

智恵さん:
私は主人とは逆で、全く「受け継ぐ」とは無縁の環境で育っていました。父親も公務員でしたし。ただ「継がなくてはいけないもの」という部分に憧れはありました。職人さんや伝統工芸への憧れも強く、そのため、家具職人からはじめ漆の専門学校へ通ったりなど経て、この世界へ入ってきたのもあります。

伝統工芸は、魅力を感じている人がいなくなってしまったら廃れてしまうものだと思うので、魅力を感じている人がいる以上は、繋げていける世界だと思っています。その魅力を感じてくれる人を増やすために、今は職人として日々踏ん張っていかなくてはいけないなと感じています。私は嫌いな仕事を続けられない人間なので、長く続いている今の仕事は本当に合っていると思ってます。寝ずに仕事をするときもあって、何日も寝ていないという日も過去にはありました。それでも好きな仕事なので、からだはすごく疲れているけれども、精神的には疲れていなかったというか。ただただ毎日が楽しくて仕方ないんですよね。

今後は次の時代に繋げていけるように、若い人を増やしていきたいという思いはあります。ひとりの職人として、若い子を育てていかなくてはいけないという年齢にもなってきたので、厳しくする部分もあるしそれに耐えられない子だったら仕方ないのかなと思う面もありますが、そこで頑張ってくれる子に対してはこちらも尽くしていきたいと。そうやって頑張ってくれる子が増えていけるように、私たちの作るものももっと魅力的なものにしていけなくてはいけないなと感じています。

これからの塩尻・木曽平沢がどうあってほしいか。

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©有限会社丸嘉小坂漆器店

智恵さん:
木曽平沢は見ての通り、本当に軒並み職人さんのお店ばかりで、つまりそれだけ「漆工の町」として根強く残っている地域でもあります。そのような町は、全国でも数少ないと思います。だからこそ漆工の町としての伝統が残っていってほしいと思っています。将来的に職人さんの世代交代を考えると、30代も片手で数える程度しかいない今の状況は厳しいと感じています。これからは職人さんだけでなく関わるデザイナーさんなども含めて、外部の人を「受け入れていける」町になっていったら良いなと思っています。やはり既存の概念だけでは限界もありますし、外からの視点を受け入れることで、さまざまな可能性も広がると思っています。

玲央さん:塩尻市内の方は移り住んだ人が多いんですよね。そのせいか人間関係はあまりこだわらないというか。地域との関わりはありながらも、さっぱりした関係を築いている印象があります。一方、木曽平沢は山に囲まれてどちらかというと人との距離が近い環境。近いからこそ良くも悪くも人間関係が濃い。どちらが良いというわけではないですが、元々住んでいる人も移り住む人も、それぞれの価値観を「理解しよう」とする歩み寄りは、大切にすべき心持ちなのかなと思っています。「合わせる」必要はないと思いますが、そこに「違いを認める寛容さ」があることで、お互いの働きかけも変わってくるのではないかと思っています。

最後に、告知です!

来る10月17日(土)に、木曽漆器祭がオンラインで開催されます!
今年の春の開催は中止となってしまいましたが、秋の開催はオンラインでのライブ配信により実施されることになりました。

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400年余りの歴史を誇る伝統工芸「木曽漆器」。もともとは、木曽の山々の良質な材を用いて作っていた木製品を丈夫にするために漆を塗ったことから始まったと言われています。木曽漆器の生まれた木曽平沢は、国の重要伝統的建造物群保存地区に漆工町としても選定され、現代でも変わらず多くの漆器店や工房が軒を連ねています。

そんな木曽平沢において、毎年春と秋に開催されている「木曽漆器祭」。今秋はオンライン開催ではありますが、木曽漆器の歴史はじめ、漆職人さんのものづくりへの想いなど、オンラインだからこそより手に取ってみたくなるような様々な「紡ぐ想い」を、盛り沢山に堪能できるコンテンツが詰まっています。

少しでもご興味ある方は是非!当日ご視聴・ご参加いただけたら嬉しいです。

■詳細はこちら
①オンライン漆器祭2020秋
https://shikki-online.studio.site/?fbclid=IwAR0LrGlyiDL9Nknx_WAYZAZmeM38_Tb7wUh9SpGkkWLbgGMNWkt755cPCrk
②Facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/652822822328867/

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