【ざっくりメモ】おせっかいな神々_笑い顔の神

はじめに

星新一さんの、「おせっかいな神々」と言う短編集の中の一作目、「笑い顔の神」と言う話について書いています。

https://www.shinchosha.co.jp/book/109818/

物語を読みながら感じたことをメモしていきます。もちろんネタバレも含まれているのでご注意ください。

物語を初めて読みながらメモ

物語の書き出しは下記。

むかし、あるところに小さな村があった。村人たちの暮らしぶりは平穏無事。だれもかれも、可もなく不可もないといったところだった。

普通の昔話の始まりみたいな書き出し。そこから今回の物語の主人公になるるであろう男の登場。ここまでで、「環境」と「登場人物」をさらっと紹介している。人物の口ぐせである、

「なんとかして、簡単に金持ちにはなれはしないものだろうか」

を書いているのは人物の性格の紹介と後の伏線?
短編なので、詳細に環境や人物については語らず、物語上必要な情報だけさらっと出している感じ。

しかし、ある日。なにげなくクワを川ぞいの地面にうちこむと、妙な手ごたえがあった。

ここで物語の本筋に入る。文頭の「しかし」で今までの日常との乖離が起きることを示唆。
主人公の独り言と、地の文の追加の説明で、掘り出した象の不自然さや不気味さを表現。
また、先ほどの口癖から、簡単に金持ちになれる方法につながる何かなのかな?と言うことが頭をよぎる。
男は掘り出した像と軽く会話し、願い事を叶えてもらうために家に持ち帰る。ここで、スムーズに像を家に持ち帰ることに違和感を感じないのは、男の性格や口ぐせを端的に表現していたため。

「神さま。なにとぞ金儲けをさせてください」
「よし、まかせておけ」

やはり男は普段の口癖からもわかるように、金儲けに関するお願いをし、像はそれを受け入れる。
そこから男のもとに幸運が訪れ、見事お金を稼ぐことに成功し、「簡単に金持ち」になる。

「どうも、なにか勘違いをしているようだな。力がすばらしいことはたしかだが、わしはお前が考えているような福の神ではないぞ。」

この発言からわかるように、物語のオチに向かっていく。
願いは、簡単に叶うようなものではないし、こんなに甘い話はない。
ラストは像が「自身の正体」と「男に訪れる不幸」について発言し、物語の幕を閉じる。
像の発言で物語が終わるため、男に本当に不幸が訪れるかはわからないが、像の「他の家具と一緒に川に捨てられる」という発言から、この像が川の近くに埋まっていたこと、過去にも同じことが起きたことをしっかり証明し、男に不幸が訪れるのが確実なことを示唆。

物語を読み終わって

まず第一に、6ページという短さの中にしっかりとしたオチがついているし、スッキリする。
起承転結は
起・・・男の登場、像を拾うところ
承・・・音に幸運が訪れ、金持ちになる
転・・・像が男が思っているような像ではないという発言
結・・・像の正体と男の未来への示唆
と言ったところかな?
転と結がかなり短いけど、像の発言で未来がわかるし、像と、物語の不気味さを読者に想像させ、いい余韻を残している。
また、お手本のような伏線の張り方をしてあって、物語を受け止めやすい。
別の物語が高校受験の国語の問題に出題されているのを見かけたが、読解力を測るのにすごく適している。
文章自体は
・できるだけ漢字を使わない。
・一文を短くする。
・(一文が短いおかげで)読点があまり出てこない。
・無駄な説明をしない
・読者の想像力をしっかり使う。
というようになっており、短編だからこそリズムよく読み切ることができる。
読みやすく、わかりやすく、想像しやすい。
あまり小説を読まない人でも、入門として適しているのでは?と思った。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?