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神戸とカレーと仕事

夏の暑い日は夕食に何を食べようか悩む。
食欲がない訳ではないのだが、こういう時は食べて元気を出したい。
カレーはそういう時には心強い味方だ。

神戸の街はカレー屋さんが多く、個性と味が多様で面白い。
昔ながらのSavoy、本格スパイスカレーのぶはら、スリランカカレーのカラピンチャ、水を使わないシャミアナ、優しい味わいのみみみ堂といった個性的なお店もあるが、新しくオープンしたラージクマールやアグロカリーといったお店も人気がある。他にも多くの店があり、選ぶのが楽しい。

結局、今回は気分でサトナカに行くことにした。
ここはチキンカレーの専門店で、他にメニューはトッピングしか無いという潔さ。化学調味料は使っていないこともあり優しいお味にファンが多い。
物静かな店主が淡々とカレーを作ってくれる都会の隠れ家でもある。

店に入るといつものように店主が迎えてくれたが、客は自分たちだけだった。
閉店間際に入ったからかもしれない。
時間もないので、早々にスパイス多めのチキンカレーと半熟卵を注文した。

一見、優しい味わいで食べやすいようにも思えるが、しっかりスパイスは効いていて、チキンもしっとりとして旨味がある。
相変わらずとても美味しい。それでもたったの700円。破格の安さだ。

客にとっては「いつもの味、いつもの価格」というのは嬉しい限りだが、これだけ丁寧に作ってこの値段ではかえって申し訳ない気もする。
便利な立地にあるわけでもないし、新しい店のオープンも多い。
店を続けていくことは簡単ではないだろうに。
余計なお世話とは思いつつ、ついそんなことを考えてしまう。

仕事をするなら評価されたい。誰もがそう思うのではないか。
だからこそ他人の評価が気になってしまう。
暮らしの面でも収入が重要でないと言い切れる人も少ないだろう。
サービスも値段も変えずに店を続ける動機は何なのだろう。

ふと思い返して見ると、サトナカに限らず、神戸で長く続いているカレー屋さんは、いつもの味を決まった値段で提供している店が多いことに気づいた。
店主としては作るのに飽きているかもしれないが、それでも自分のレシピだから誇りの持てる仕事をしているんじゃないか。自分が誇れる仕事が、この人達にとっては、たまたまカレー作りだったのかもしれない。

色々考えている内に、気がついたら食べ終わっていた。
食後感はあるがもう少し満足感を味わいたかった気もする。でも、良い気づきも得られたことだし、また来れば良いと思い直して店を後にすることにした。

こちらがカレーを食べながらあれこれと思案をしている間、店主は淡々と閉店の準備をしていた。その様子を見ると、少し考えすぎのような気もしてきた。

店構えもシンプルで無駄がない

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