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YUKIのJOYとメランコリニスタに見る、違ったアプローチで極めた2つのMV(オススメMV #51)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の51回目です。(連載のマガジンはこちら)

ここ数回洋楽MVが続いたので、今回は邦楽MVの紹介です。
今回は邦楽の女性アーティストの中でお気に入りのひとり、YUKIさんのオススメMVを2つ紹介します。
2つとも素晴らしいMVなのですが、それぞれ全く違ったアプローチで成果を上げているところが見所です。

では、さっそく最初のMVをご覧いただきましょう。
YUKIさんの「JOY」です。どうぞ!

ショッカーのような黒衣のダンサーとYUKIさんのダンスが印象的ですね。
ビートが効いていながらも不思議と落ち着いて聴ける素晴らしい楽曲と、抑え気味な映像とのマッチングも素晴らしいMVです。

YUKIさんは(いまさら説明もないでしょうが)元々JUDY AND MARYのボーカルとしてデビューし、その後ソロになられましたが、この「JOY」はソロになったYUKIさんの最初のヒット曲で、YUKIさん自身も相当思い入れがある楽曲のようで様々なインタビューでJOYのことを語っています。

また、「JOY」は蔦谷好位置(つたやこういち)さんという方が作詞作曲されているのですが、蔦谷さんといえば私の中では「関ジャム 完全燃SHOW」というちょっとベタなタイトルのテレビ番組にたまに出てくる方...というイメージです。
少し脱線しますが、この「関ジャム 完全燃SHOW」は、私のような「音楽は好きだが、楽曲の構造などの知識がない」という人には最適の番組で、私が観る数少ないテレビ番組の中のひとつです。

「JOY」は蔦谷さんとしても思い入れのある楽曲のようで、なかなかヒット曲が生まれず悩んでおられる中で最初にヒットしたのがこの「JOY」であり、その後も複数の楽曲でYUKIさんと組まれています。
「JOY」でヒットを飛ばした蔦谷さんは、その後多くのメジャーアーティストに楽曲を提供し、今や一流の作曲家でありプロデューサーとして活躍されています。

そして次に紹介するMVも、その蔦谷さんが作曲しYUKIさんが作詞を手掛けたヒット曲となります。
YUKIさんの「メランコリニスタ」です。

一度観たら忘れられない、独特な世界観の不思議なMVですね。
サムネイルにもありますが大きな手のオブジェと絡むYUKIさんや各国の男性の映像が絶妙な組み合わせで、もちろん楽曲も素晴らしく、かつ映像と楽曲のバランスも最高ですす。

さて、さっそく本題のMVの解説にはいりましょう。

まず、両方のMVに共通する点といえば、ダンサブルな楽曲にもかかわらず、映像のインパクトを抑えているところにあります。
映像の色遣いがどちらかといえば地味で、「JOY」などは使われている色の数自体が極端に少ないことがわかります。
照度(映像の明るさ)も抑えてあり、こちらも「JOY」のほうがより抑え気味になっています。

しかし、2つのMVとも映像のインパクトはないものの、映像の印象付けそのものは強く、これはコンテンツの内容そのものが素晴らしいからにほかなりません。
そして、コンテンツへのアプローチがこの2つのMVでは全く違います。
「JOY」は、明確に「ダンス」を主軸に置いています。
「メランコリニスタ」は、女性と男性の関係性を独自の世界観で表現するこが主軸と思われます。
それぞれをもう少し詳しく見ていきましょう。

「JOY」は、中村剛さんという多くのMVを手掛ける映像作家が監督を務めておられますが、もう1点注目すべき点はダンスの振付を香瑠鼓(かるこ)さんという著名な振付師の方が担当されていることです。
このすばらしいクリエイターおふたりの感性と能力が組み合わさり、素晴らしいMVに仕上がっているのです。
いくつもの場面で「これはスゴイ...」と感嘆することしかりですが、1つ例をとると、以下の場面も技ありのシーンです。

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このシーンは、このnoteを観られた後、ぜひ皆さんに実際のMV(動画)でご覧いただきたいのですが、YUKIさんのダンスのテンポとダンサーの皆さんのダンスのテンポが違うように見えます。
具体的に言うとYUKIさんがゆっくりで、ダンサーの皆さんが早い動きのように見えるのです。
しかし、実はテンポは全く同じで、ダンサーの皆さんは全身が映っており体全体を動かしてダンスをしているため動きが早く見え、YUKIさんは手だけの動きのためゆっくり見えているのです。
そのため、全体の調和が取れつつ妙な違和感で印象付けられ、かつYUKIさんの動きが強調されている...というスゴイ技あり映像です。
この場面でYUKIさんの全身が画面に映り手だけを動かしていれば印象付けは弱くなっていたと思われるため、YUKIさんを上半身だけ映す...という判断がこのシーンのポイントとなります。

このように一見何気なく見えるシーンであっても、制作に携わる方々が細部にまでこだわって作っておられるからこそ、素晴らしいMVが出来上がり、それを観ている我々が楽しみ、感動できる...というわけです。
制作されている方々に感謝ですね。

もう1つのMV、「メランコリニスタ」のほうは、私の感性では全く思いつかない世界観が提供されており、ロジカルな説明ができないのがツライところです。
なぜこんな独特の世界観を構築できたのか?その秘密は監督を務められた平野文子さんにあると考えています。
平野さんはYUKIさんとの親交も深く、YUKIさんのMVも数多く手がけられているのですが、この「メランコリニスタ」のMVは女性ならではというか、女性の感性でしか思いつかない世界観のように思います。
大きな手のオブジェは男性の象徴そのものですし、赤ん坊の顔も女性から見た男性像のひとつを表現しているのではないでしょうか。
それに、各国や各地域の男性が登場しますが、これも女性から見た様々な男性像の象徴とも思えます。
各国・各地域の男性が登場するシーンなどはコミカル感が強いものの、全体としては実はめちゃくちゃエロチックなMVではないかと、観るたびに思いつつ、また観てしまう不思議なMVです。

実は、今回リンクをはっているYouTubeの2つの動画は、完全版のMVではありません。
オリジナルの楽曲自体は4分以上あるのですが、YUKIさんのオフィシャルチャンネルで提供されているこれらのMVは残念ながら両方とも途中で終わってしまっています。
しかし、MVの構成や特徴はダイジェスト版のMVでも把握でき、かつMV自体としても楽しんでいただける内容ですので、今回紹介させていただくこととしました。

YUKIさんの違ったアプローチで極めた2つのMV、いかがでしたでしょうか?
ぜひ両方ともご覧いただき、比較しながら楽しんでいただければと思います。

ではまた次回に。

追記(2023/08/26)
朗報! ~フルサイズ版のMVがアップされていました~
YouTubeでMVを観ていたところ、YUKIさんのJOYがレコメンドされたので、「ダイジェスト版だが、流し観しよう...」と思いそのまま観ていると、なんとフルサイズ版のMVがアップされていました。
どういう経緯や理由かは分かりませんが、非常に喜ばしいことであり、その判断をされた関係各位に感謝感謝です。
せっかくですので、久しぶりに「JOY」と「メランコリニスタ」のフルサイズのMVを観てみたのですが、やっぱりいいなーと思うことしきりです。
ぜひ皆さんもフルサイズ版の「JOY」と「メランコリニスタ」をお楽しみください。


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