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360°MVは果たしてMVなのか?実験を続ける「やくしまるえつこ」ゆえに、新な取り組みを高みに昇華した(オススメMV #44)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の44回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回のテーマは、「360°MV」という新しい取り組みと、それを使いこなしたアーティスト「やくしまるえつこ」さんとなります。

なにはともあれ、まずご覧ください!
いきなり度肝を抜くMVですので、皆さん気合を入れて観てください。
やくしまるえつこさんの「放課後ディストラクション」です。

360°MVとあるように、映像がグルグル回せてしまいます!
こんなMV、観たことないですよね。
もうビックリです。

この360°MVは2015年から始まっており、一時は結構話題になったのですが徐々に使われることが少なくなり、今では話題に上がることも無くなってきています。
最も早く360°MVをリリースしたのはアヴィーチー(Avicii)と言われており、2015年5月に「Waiting For Love」の360Videoヴァージョンとして公開されました。
ちなみに、そのMVがこちらです。

他にも多くのアーティストが360°MVをリリースしていますが(いましたが)、どのMVも映像としての目新しさや面白さはあってもMVとのマッチングがイマイチで、リピートして観ることはほとんどなかった...というのが実状です。
しかし、このやくしまるえつこさんの「放課後ディストラクション」は他の360°MVと違い、何度観返したか分からないほどです。

やくしまるえつこさんは2006年より活動されているミュージシャンなのですが、ひとことで言えば「多芸な才女」。
おひとりでの活動に加えて様々なユニットでも活動されており、かつシンガーとしても素晴らしいのですが作詞作曲をはじめ楽器の演奏やプログラミングまで手掛けられます。

そのやくしまるえつこさんが2018年にリリースしたシングルが、この「放課後ディストラクション」です。
楽曲としても「やくしまるえつこ節」というのでしょうか、朗読のような語りのような独特な歌いまわしが安定の素晴らしさですが、度肝を抜かれたのが映像表現です。

文章で説明するよりそのすごさは見ていただくしかないのですが、これがMVなのかどうか大いに悩むところです。
楽曲の世界観と映像の世界観の絶妙なマッチングもあり、またシュールな楽曲にシュールな映像の組み合わせもバツグンで、その意味では完成度の高いMVとして仕上がっています。

しかし、この360度の映像が、果たしてMVに必要なのか?
これはもう映像作品としか呼べないのではないか?
しかし、MVとしては一級品だし...と悩みながらもMVを何度も視聴し、あっというまに3年が経ってしまいました。
つまり、「いいものはイイ!」ということでしょうか...

なお、様々な角度から見たひとつの対象を、2次元の限られたスペースの平面に表現するのがピカソが提唱したキュービズムです。
そして、このMVはひとつの対象が織りなす様々な感情や出来事や取り巻くモノを360度に展開し、かつ同時並行で進めています。
これは新たな表現手法ではないかとも思えます。
「視聴者に一度にすべてを見せる」ということを放棄した芸術ですね。

映像の話ばかりになっていますが、この「放課後ディストラクション」は楽曲自体が素晴らしいのでMVではなく楽曲だけで一度聴いてみてください。
MVの視聴では分からなかった楽曲自体の素晴らしさに気づくはずです。

なお、やくしまるえつこさんの360°MVには新作もあり、そちらの方がより考えられて作りこんであるのですが、なぜかこの「放課後ディストラクション」のほうがMVとしてのバランスは良いように思います。
それだけ360°MVによる作品制作は難しいということでしょう。

話は変わりますが、やくしまるえつこさんに最初に驚かされたMVは「ヴィーナスとジーザス」という2020年リリースの楽曲のMVです。
このMVも衝撃的で、小さなドットがやくしまるえつこさんの姿や他の様々な形に変わってゆく...という映像になっています。
ぜひ紹介したいのですが、YouTobeで探しても見当たらず残念ながら紹介できません。

そこで、代わりと言ってはなんですが、同じ2010年にやくしまるえつこさんが属するユニットのひとつである相対性理論がリリースした楽曲のMVを紹介しましょう。
相対性理論の「ミス・パラレルワールド」です。

これも独特のMVですね。
よくもまあ、この映像の企画をそのまま通したな...と思います。
ある種、視聴者を突き放している感すらあります。

相対性理論は、やくしまるえつこさんが参加する数多いユニットの中でもメインとして活動されており、イイ楽曲がたくさんあります。
その中で今回紹介する「ミス・パラレルワールド」は、相対性理論の3rdアルバムに収録されていて、いつもの「やくしまるえつこ節」がしっかり聴けるナンバーになっています。

さて、今回ご紹介したMVはいかがでしたでしょうか?
ぜひ「放課後ディストラクション」を何度も観ていただき、どっぷりとやくしまるえつこさんの世界に浸ってみてください。
また、やくしまるえつこさんはこれからも活躍が期待されるアーティストですので、ぜひ皆さん注目いただければと思います。

ではまた次回に。

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