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アニメMVの鬼才ジムブラッシュフィールドは、トーキングヘッズで覚醒しティアーズフォーフィアーズで解脱した(オススメMV #46)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の46回目です。(連載のマガジンはこちら)

前回、Nu Shoozの「I Can't Wait」というイケてるMVを紹介した際、「この監督の特集を組みたい」と書きましたので、さっそく組んでみました。

ということで今回は、アニメMVの鬼才、「ジム・ブラッシュフィールド」の特集です。最後までお付き合いください。

ジム・ブラッシュフィールド(Jim Blashfield)は米国の映像作家で、1944年生まれですので御大(おんたい)と言えるかもしれません。
多くのMVの監督を務めており、その作品はアニメ風の映像による独自なもので、1980年代の半ばから末にかけて怒涛のように駆け抜けました。
その中でも特徴的なMVが3作品あり、それぞれ紹介していきましょう。

まず1つ目は、ジムが最初に独自のアニメ映像で成果を上げた作品です。
トーキングヘッズの「And She Was」です。どうぞ!

実写アニメとでもいうのでしょうか?不思議な感覚の映像ですね。
そして、アートとも呼べるオシャレな映像が印象的です。
楽曲と映像のマッチングも秀逸で、特に歌詞と歌声が独自の映像との相乗効果を生んでいるのが特徴です。
最後まであっという間に観終わってしまうのも、優れたMVの証拠です。

トーキング・ヘッズは、トム・トム・クラブの回でも少し紹介しましたが1974年結成の米国のバンドで、様々な実験的な取り組みをおこなう革新的なバンドでしたが、1991年に解散しています。
この「And She Was」は1986年リリースの6thアルバム「Little Creatures」に収録されていますが、初期のトーキング・ヘッズの実験的な要素は薄れ、ボーカルのデヴィッド・バーンの歌声を含め楽曲全体が洗練され、多くの方に違和感なく聴いてもらえる楽曲になっています。

この「And She Was」、和訳すると「そして彼女は」という意味ですが、歌詞の内容はドラッグによる幻覚を表現しています。
それを踏まえてMVを観ると、様々な視点の動きがあるのも納得ですね。
つまり、視点が地面すれすれと思うと空の上から見下ろしたり、家の中に入ったり出たりと動くのは、まさしくドラッグの幻覚を表現しています。

今回のテーマである映像作家のジム・ブラッシュフィールドは、この「And She Was」で初めてMVの制作に取り組み、そこで実写風アニメーションによる独自の映像を作り出します。
まさしくアニメMVの鬼才としての才能が覚醒した瞬間ですね。

そして、覚醒したジムは更なる高みにのぼっていきます。
様々なMVを生み出しますが、その中でも秀逸なのが2つ目に紹介するMV、前回紹介したニューシューズの「I Can't Wait」となります。

この「I Can't Wait」は、「And She Was」と違い歌詞の内容と全く関連性のない映像で構成されており、また映像の中で組み合わされる要素自体もそれぞれの関連性が無い...という実験的なMVです。
しかし、MV全体としては調和が取れており、かつ楽曲とも高いレベルでマッチングし相乗効果すら生んでいます。

そして、独自の実写風アニメMVとして様々な取り組みをおこなったジムがその頂点に到達した記念すべきMVが、3つ目のMVとなります。
ティアーズ・フォー・フィアーズの「Sowing The Seeds Of Love」です。

もう圧巻と言うか、壮大な叙事詩ともいえるMV作品です。
歌詞とうまく絡み合った映像が流れつつ、全く歌詞と関係ない映像も加味され、独自の世界に引き込まれてしまいます。
その上で楽曲を前に押し出し、映像作品ではなくMVとして仕上がっているところが絶妙です。

このMVで、ジムは実写風アニメーションMVの頂点を極めたといっても過言ではないかと考えています。
それぐらいこのMVの素晴らしさは際立っています。

ティアーズ・フォー・フィアーズ (Tears for Fears、以下TFF)は1981年に英国でデビューしたバンドで、当初2人組でスタートし途中ソロプロジェクト化したものの再結成し今も活動しているご長寿バンドです。

この「Sowing The Seeds Of Love」は、ソロプロジェクト化する直前にリリースされた3rdアルバム「The Seeds of Love」からの先行リリースシングルで、いわば往年のTFFの集大成ともいえる楽曲です。
そのTFFの集大成の楽曲と、ジムの集大成の映像が組み合わさって生まれたのが、この「Sowing The Seeds Of Love」のMVなのです。

映像としては、上で書いたとおり歌詞と関連した映像がベースにありつつ、ニューシューズの「I Can't Wait」で成果を上げた関連の無い映像要素をちりばめつつ全体の調和を生み出す取り組みが高いレベルで完成されています。
色使いや登場人物の大きさや動きなど、計算されつくしており(計算でなければ驚きのセンスです)非の打ちどころのないMVになっています。

なお、この「Sowing The Seeds Of Love」は、タモリ倶楽部の空耳アワーで最初に流れた作品であり、出だしの歌詞が「母ちゃん、許してー」と聞こえることでも有名です。
一度それに気が付いてしまうと、毎回「母ちゃん、許して―」と頭の中では聞こえてしまい、元の歌詞がどうだかわからなくなっています。

話を戻して、この「Sowing The Seeds Of Love」のMVを生み出したジムですが、これ以降にはMV制作の数が激減し、今ではほとんどMV制作からは手を引かれているようです。
もちろんご年齢のこともあるでしょうが、最新の映像技術を使ってこの実写風アニメーションのMVを作っていただくとどうなるんだろう?とも思っており、更なるご活躍を期待してやみません。

さて、今回はアニメMVの鬼才、ジム・ブラッシュフィールドのMVを紹介しました。
様々な映像作家が新たな取り組みにチャレンジしてMVを生み出し、その取り組みが今のMVにつながっています。
ご覧いただいたことのない方は、この機会にジムの3つのMVをご覧いただき、1980年代の息吹を体感してください。

ではまた次回に。

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