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マドンナのメッセージMVでは、サステナブルなExpress Yourselfが最高だ!(オススメMV #74)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の74回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回もまたまたマドンナ特集です。
どうしても好きなアーティストに偏ってしまいますが、中でもマドンナはMVのクオリティが高く、かつほぼすべてのMVがマドンナの公式YouTubeチャンネルで公開されているのもスゴイところ。
きっちり権利を押さえているところがさすがマドンナ!という感じです。

今回のマドンナ特集のテーマは「メッセージMV」。
メッセージ性の高いMVをいくつか紹介します。

では、まず最初のメッセージMVはコチラです。
マドンナの「Express Yourself」です。どうぞ!

パワフルな楽曲であり映像で、圧巻としか表現ができません。
初期マドンナのすべてが含まれているといっても過言ではないMVです。

マドンナについては、以前の連載で紹介しているのでそちらをご覧ください。(マドンナ特集:第1回マドンナ特集:第2回

この「Express Yourself」は1989年リリースの4thアルバム「Like a Prayer」に収録され、2ndシングルとしてリリースされた楽曲です。
アルバム「Like a Prayer」は1980年代の初期マドンナの集大成ともいえ、ポップミュージックとしてのクオリティを保ちつつゴスペルやR&Bの要素も加え、このあとの様々な要素を取り入れるきっかけともなった名盤です。
歌詞もマドンナの内面を投影したものが多く、今回のテーマであるメッセージ性も強く感じます。

では、「Express Yourself」のMVの解説にまいりましょう。
このMVは以前特集でもお送りしたデヴィッドフィンチャーが初めてマドンナのMVを監督した作品となっています。
映画監督を目指していたデヴィッドフィンチャーは、このMVではSF映画の古典であり名作であるフリッツ・ラングの「メトロポリス」をオマージュして制作しています。
そして、この「メトロポリス」と「Express Yourself」のつながりは、今回のテーマである「メッセージ」とも深く関連しています。

「メトロポリス」は現在のSF映画の礎ともなった名作ですが、メッセージ性の高い作品ともなっています。
1927年に初公開されたこの作品は、プロレタリアートとブルジョアジー、共産主義と資本主義の対立と融和がテーマとなっています。
そして、「Express Yourself」はフェミニズム、つまり男性支配からの女性の解放がテーマです。
マドンナのすごいところは、単なる女性解放や狭義の男女同権的なアプローチではなく、女性は女性らしくあるべきだ!というメッセージとして発信しており、かつ男性/女性という枠ではなく「自分らしく生きる」という性別を超えたアプローチであるところが驚きです。
これは、昨今の「サステナブル」と同義ではないかとすら思えます。

本題からそれてしまいますが、映画「メトロポリス」もオススメです。
今から100年近く前のSF映画とは思えない完成度で、かつモノクロのサイレント映画なのですが色と音は不要ではないかと思わせられるほどの没入感を提供してくれます。
SF映画好きの方で未見の方は、ぜひご覧ください。

本題に戻って、この「Express Yourself」のMVを見ていると、のちのマドンナの最高傑作MVを称される(と私が勝手に評価している)「Vogue」のカット割りや映像の構図と共通する部分が多く見受けられます。
同じデヴィッドフィンチャーが監督しているので、当たり前といえばそうですが、「Express Yourself」でいろいろな映像表現に取り組み、いいところだけを「Vogue」で利用したのではないかと思っています。
そういう意味でも、「Vogue」はデヴィッドフィンチャーとしても集大成のMVでもあろうかと思われます。
マドンナの登場シーンや男性の映像など、「おっ、これVogueと同じだ!」という部分があるので、ぜひ皆さんも探してみてください。

さて、そろそろ次に参りましょう。
メッセージMVの2つ目はこちらとなります。
マドンナの「Like A Prayer」です。

ダンサブルと荘厳という相反するテイストが見事に融合しています。
映画のような作りですが、しっかりMVとして成立しているところが、これまた見事ですね。

4thアルバム「Like A Prayer」のタイトル曲であり1stリリースシングルでもある本楽曲は、アルバム全体のエッセンスを凝縮したような名曲です。
ダンサブルであり、かつゴスペルやR&Bの要素を組み合わせ、それらをポップスとして気負わずに聴かせてくれます。

本題からそれますが、最初のギターはなんとプリンスが引いています。
プリンスはこのアルバムへは深く関与しており、アルバム3曲目の「Love Song」はプリンスとマドンナの合作ですが、ほとんどプリンスが作ったのではないかと思えるほどプリンス節バリバリの楽曲に仕上がっています。

MVの解説に参りましょう。
この「Like A Prayer」のMVのメッセージは何かと思いますか?
それは、「信仰からの解放」ではないかと考えています。

このMVがリリースされると、教会等からすさまじいバッシングを受け、イタリヤでは放送禁止になったほどです。
その理由は、映像の中でキリストやキリスト教を冒涜する表現が見られるというもので、確かにそう思われても仕方のない表現も含まれていますが、それでもあえてその表現のままこのMVをリリースしたのは、意図と覚悟があってではないかと考えています。

決して信仰を否定するものではなく、信仰は人を自由にするものであって縛るものではないことを、マドンナはこのMVで伝えたかったのではないかと考えています。
というのも、マドンナは厳格なカトリックの家庭で育てられ、それが重圧にもなりつつ、マドンナの成長の中での一部になっていることを、マドンナ自身は把握していたと思われます。
そのため、宗教を否定するのではなく、かといって宗教に縛られるのではなく、宗教が人々を自由にすることこそ、マドンナの思う宗教の在り方だとこのMVが語っているのではないでしょうか。

上に紹介した2つのメッセージMV、「Express Yourself」と「Like A Prayer」は、強いメッセージを発してはいますが、あくまでもMVとしての存在があったうえでの話です。
しかし、メッセージが前面に出すぎたMVもマドンナにはあり、決して悪いというわけではないのですが、私の思うMVとはチョット違うな...と思っています。

代表的な2つのMVを紹介します。
まず1つ目はこちらです。
マドンナの「God Control」です。

めちゃくちゃインパクトのあるMVですね。
ほとんど楽曲が印象に残らず、過激な映像のみが脳裏に残ります。

この「God Control」は、最新の14thアルバム「Madame X」の3曲目に収録されている楽曲です。
アルバム「Madame X」も私的にはチョットなじめないのですが、この「God Control」のMVも大好きなマドンナのMVの中でも上位ランクの「再見のないMV」となっています。

銃犯罪に対するメッセージが強く打ち出されていますが、上にも書きましたが楽曲と映像のバランスが悪いどころか楽曲が全く印象に残らず、これでは同じMVでもMusic Videoではなく「Message Video」ではないかと思うほどです。
もちろん、この「God Control」のMVを否定しているわけではなく、楽曲を引き立たせるためのMVという(私の中での)前提条件が完全に崩れ去っているため、MVではないのではないかと考えているのです。

MV自体についても少し書かせていただくと、冒頭1分は全く楽曲が流れず、1分あたりから楽曲が流れ出しますが過激なシーンが中心で楽曲がかき消され、そのうち楽曲も途絶えてしまいます。
再び楽曲が始まるのはなんと3分近くたってからで、全体の8分という時間のうち(というか、この8分も長すぎでしょう!)3分の1を超える時間が楽曲のない映像のみに使われているというのは驚愕です。

ここまでヒドくはないですが、同様にメッセージが前面に出ているMVをもうひとつ紹介しましょう。
マドンナの「Dark Ballet」です。

重厚かつ荘厳なMVです。
クオリティの高い映像表現ですが、映像が前面に出すぎているのが悲しいところです。

この「Dark Ballet」も、14thアルバム「Madame X」に「God Control」のひとつ前の2曲目に収録されているのですが、楽曲としても全般的に「Madame X」の収録曲は私のマッチングが悪いようで、ほとんど聴かないアルバムとなっています。
13thアルバムの「Rebel Heart」が結構お気に入りなだけに、この14thアルバムの「Madame X」がなかなかキツイ感じです。

「Dark Ballet」のMVは、ジャンヌダルクにリスペクトされて制作されたとのことで、映像にもはっきりそれがわかるほど描かれていますが、上の「God Control」ほどヒドくはないもののメッセージが前面に出すぎており、Music VideoならぬMessage Videoになってしまっています。

と、悪いように書いていますが、この「Madame X」でも大いなるチャレンジをマドンナはしているので、そのチャレンジには大いに称賛を送ります。
そして、次に出すアルバムが楽しみでなりません。
そのアルバムが私的に好みかどうかは大きな問題ではないのです。
常に変化しチャレンジするマドンナこそが、私の大好きなマドンナなのですから。

ではまた次回に。

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