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こんな色使いってアリ?UKアーティストの攻めたMVとデュアリパのライブ動画をご紹介(オススメMV #118)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の118回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回のテーマは「色使いが攻めているオススメMV」、加えてUKアーティスト縛りでお届けします。
色使いが攻めているだけでなくその結果として視覚的に優れた映像であり、もちろん楽曲も素晴らしくかつ映像と楽曲とのマッチングもいいMVとなるとなかなかないのが実状です。
そして、オススメかどうかの基準は、ズバリ「何度も観たいと思えるか」という点に尽きます。

では、そのハードルを越えた最初のオススメMVはコチラ。
キャメルファット&エルダーブルックの「Cola」です。そうぞ!

テーマにある通り多くの色が使われていますが、ギラギラ感が少ないためか抵抗なく観ることができます。
映像にも様々な工夫がされており楽しみながら見ることができますが、モリモリ過ぎる感があるのが少し残念なところです。

この「Cola」は、キャメルフィットとエルダーブルックという2組のアーティストの合作として2017年にリリースされた楽曲で、USのダンスチャートでは1位になるなどスマッシュヒットになっています。
まず、キャメルフィット(CamelPhat)ですが、2006年にデビューしたUKの二人組のエレクトロデュオで、この「Cola」は2020年リリースの1stアルバム「Dark Matter」に収録されています。
そして、エルダーブルック(Elderbrook)は、キャメルフィットから9年後の2015年にデビューした同じくUKのアーティストで、デビュー3年後にエルダーブルックと合作したこの「Cola」がヒットし、すでに2枚のアルバムをリリースしています。
と、さも知っているかのように書いていますが、この2組のアーティストとのお付き合いは、このMVだけ...というのが実際のトコロです。

さて、「Cola」のMVを観ると、5人のダンサーの服の色から部屋の壁紙、カーテン、カーペットなど、目に入るモノすべてに対して色にこだわった演出がされていることが分かります。
全体的に彩度を抑えた色調のため過度な印象付けがなく、かつシーンごとに使用される色の組み合わせがいいのか、あまりに多くの色が入れ代わり立ち代わり出てくる割には見やすい映像となっているのが技ありです。
映像効果も面白く、画面のセンターを中心に回転するような映像(特に背景だけが少し早い速度で回転する映像)や、複数のメンバーあるいは同じメンバーが複数名、同じ位置で切り替わりながら踊る構図は新鮮です。

しかし、残念な点もいくつかあります。
多くの色を使うのはイイとしても、ダンサーの目に色を付けたりダンサー自身に色がついたりするのはチープさが出てしまい、せっかくの洗練された印象が台無しです。
同様にダンサーの手が踊っている時に延びるのはチープさの極みで、色を付けたり延ばしたりしなくても、十分に印象付けがされている良いMVとして仕上がっているので、残念でなりません。
また、カット割りが妙に細かく、映像効果として狙っているとはいえ、これも洗練さを低下させている原因です。
と、若干気になる点はあるものの、果敢に攻めている姿勢は観ていて気持ちが良く、お気に入りのMVであることには変わりはありません。

続いて紹介するオススメMVは、さらに色使いで攻めているMV。
フラー・イーストの「Sax」です。

インパクトのある色使いと色を生かした映像効果が際立ちますが、ここまで映像が強いにもかかわらず抵抗感なく観れるMVはなかなかありません。
色の組み合わせなどのテクニカルな要素ももちろんあるでしょうが、それよりフラー・イースト自身の飛び切りの笑顔とはつらつとした歌声とのマッチングが良いからですね。

フラー・イースト(Fleur East)は、2005年にデビューしたイギリスのアーティストで、最初はアディクティヴ・レディース(Addictiv Ladies)というガールズグループに所属していたようです。(実はその頃のことは全く存じ上げず、ネットの情報で知りました...)
8年程グループで活動したのちソロに転じ、2015年に1stアルバム「Love, Sax and Flashbacks」をリリースし、今回紹介する「Sax」はそのリードシングルとして同年にリリースされ、そのMVでフラーのことを知ったワケです。
フラーのソロとしてのデビューシングルにもなるのですが、なんといきなりUKチャートで3位のヒットとなります。

「Sax」のMVを観てみると、1つ目に紹介した「Cola」に比べてはるかにインパクトのある色使いで、本来なら目がチカチカして再見することはない(私としてはあまり好みではない)MVとなっています。
しかし、悪い印象どころか何度もリピートして視聴するお気に入りのMVとなっていいます。
その理由は上にも書きましたが色の組み合わせや表示する時間などのテクニカルな部分ももちろん大きいと思いますが、それよりもフラーの飛び切りの笑顔とははつらつとした歌声が、インパクトの色使いの映像にも負けずに印象付けがなされており、その結果、バランスが取れたMVとして仕上がっているからかと思われます。
また、色使いと色の組み合わせによる映像効果だけに絞り、あとはフラー本人とダンサーのダンスだけというシンプルな構成も、ギリギリの線で良質なMVとして仕上げている要因でしょう。
ちなみに、最初に紹介した「Cola」も、映像効果を絞りシンプルな構成にしていればさらに優れたMVになったのではないかとも思いますが、監督はじめ制作陣やアーティスト含めて考えられた結果かと思うので、これはこれで良いかと思っています。

なお、「Sax」という素晴らしいMVを生み出したフラーですが、残念ながらそれ以降ヒットに恵まれず、2ndアルバムを自身のレーベルから2020年にリリースしていますがチャートインせずなかなか厳しい状況です。
2ndアルバム「Fearless」は、楽曲自体は1stアルバムに比べて特段悪いということはなく、中には結構イケてる楽曲も入っています。(「Favourite Thing」は結構お気に入りです)
オリジナルレーベルのためコマーシャリングが弱いということもあるでしょうが、2ndアルバムに収録されている楽曲で良さげなMVがあまりないことも大きな要因ではないかと考えています。
ぜひこれから再度の活躍を願うばかりです。

さて、最後はMVではなくライブ動画になります。
しかし、上の2つのMVを凌(しの)ぐほどの攻めた色使いで、ぜひ皆さんにご覧いただきたく紹介します。

その、色使いでメチャクチャ攻めているライブ動画はコチラ。
デュア・リパの「Don't Start Now」です。どうぞ!

こんな攻めた色使いと構成での企画を実現し、しかもライブでチャレンジしたことに驚きと最大限の賛辞を送ります。
そして、その結果、素晴らしいパフォーマンスとして仕上がっており、何度観ても感動を覚えずにはおれません。

この素晴らしいパフォーマンスの中心にいるのはイギリスのポップ・アイコンとなっているデュア・リパ(Dua Lipa)そのひとです。
デュア・リパについては、過去の連載「デュアリパとビリーアイリッシュの本人登場アニメMVをご紹介」で紹介しているので、そちらをご覧いただくとして、さっそくこの動画の話に参りましょう。

このライブ動画は、2019年のMTVヨーロッパ・ミュージック・アワード(MTV EMA)の授賞式でのパフォーマンス・ライブ動画になります。
「Don't Start Now」のリリースは2019年10月なのですが、MTV EMAの授賞式は同年11月ですので、リリース直後のパフォーマンスとなります。
1ヶ月でこのクオリティのライブはまずムリでしょうから、楽曲のリリース前から入念に計画し企画されたと思われます。

では、この素晴らしいライブ動画について解説しましょう。
まずこの「Don't Start Now」のライブ映像は、ほとんど黄色のみしか使用されていない、という点が最大の特徴となります。

使用する色数を絞ることで映像は洗練されますが、どうしても印象付けが弱くなるため、どうしても色数を増やしてしまいがちです。
このライブ動画では、黄色が約80%で残りは赤(ピンク?)の照明と、黒のデュア・リパのレオタードとライティングされいない空間という構成となっており、ここまで色数が少ない映像はなかなかありません。(モノクロの映像は違うカテゴリなので比較対象から省きます)
色数を絞っても一定レベル以上の印象付けを行うためには、画面構成やカット割りなどで工夫するしかありませんが、このMVではパフォーマンスエリアを2段階で広げるという、なかなか無いアプローチで印象付けを実現しています。
具体的には、最初は正方形のまっ黄色のひな壇エリアだけでパフォーマンスを展開し、途中からステージを交えた広いエリアでパフォーマンスを行うという2段階の変化で印象付けを行っているのです。
かつ、ステージを交えたパフォーマンスも前半と後半で構成が変化しており、さらには赤(ピンク?)の照明も交えることで、色数を増やさないまま印象付けを行っているという、神業(かみわざ)のような演出です。

そして、2つ目の特徴は、出演者のカテゴリ数です。
デュア・リパ本人と、同じ衣装とメイクのダンサーという2つのカテゴリの人物しか登場していないというのも驚異的なことです。
衣装が違ったり身長や性別の違いなど、多様なダンサーを組み合わせて変化をつけたいところでしょうが、そこをあえて抑えているところがチャレンジであり、そしてそのチャレンジが成功していることは明らかです。

最後の3つ目は、ライブだけでなく配信も意識した設計です。
上でも説明しましたが、最初は正方形のまっ黄色のエリアのひな壇に黄色いダンサーが整列し、その中心には黒いレオタードを着たデュア・リパが立っています。
冒頭の約1分間は、この黄色い正方形のエリアのみでパフォーマンスが行われ、配信された映像を観ている視聴者は通常のMVを観ているのと同様の環境で映像効果を堪能することができます。
そして、そののちステージを交えた広いエリアでのパフォーマンスに切り替わり、会場の観客に対して最大限の印象付けを行っています。
もちろん、ステージを交えたパフォーマンスについても、映像を編集することで最適なライブ映像として配信素材に仕上げていますが、最初に画面サイズのままの映像とすることで、配信映像の視聴者を動画の世界に引き込んでいるところが神業テクニックなのです。

そして、脱帽すべきは、最初の特徴(少ない色数でも印象付けるためのパフォーマンスエリアの拡大)と、3つ目の特徴(最初は配信視聴者向けに画面サイズの限定されたエリアでパフォーマンスし引き付ける)の両方を、同じ実施内容で実現されているところが、「ひと粒で二度おいしい」(?)という超絶スゴ技と興奮している所以(ゆえん)です。

とはいえ、後半のステージ中心のライブ・パフォーマンスは配信された映像では全体感がつかみ難く、会場で観ていた皆さんがうらやましい限りです。
できれば引きで全体を通しで撮影した映像も観てみたいので色々検索しましたが、残念ながらネット上ではみつけることができませんでした。(普通はそんな映像、配信しないので、当然と言えば当然ですが...)

デュア・リパの黄色で攻めに攻めた超絶ライブ動画で興奮してしまい、語りがメチャクチャ長くなってしまったので、この辺で終わりにしましょう。
(こんなことなら、このライブ動画だけで特集を組めばよかったと、チョット反省しています...)

今回の色使いで攻めたオススメMVと、その2つのMVを超えるほど攻めに攻めたデュア・リパのライブ動画はいかがでしたでしょうか。
攻めた(=チャレンジしている)MVや動画は、観ていてコチラまでアグレッシブにしてくれます。
未見の方はぜひご覧いただき、元気がない方は元気になり、元気な方はさらに元気になりましょう!

ではまた次回に。

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