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似ているかどうかは関係ない!明るく楽しいデュアリパと暗めのビリーアイリッシュの本人登場アニメMVをご紹介(オススメMV #94)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の94回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回はアニメMVの紹介です
アニメMVというと、以前にもこの連載で「アニメの思い入れすごすぎ!」などいくつか紹介しているのですが、まだまだオススメのアニメMVがたくさんあります。
今回はその中から「アーティスト本人がアニメの中で本人役で登場する」というチョット変わったアニメMVを紹介します。

まず最初の本人登場のアニメMVはこちら。
デュア・リパの「Levitating」です。どうぞ!

アニメの主題歌のような明るくディスコティックな楽曲に、そのまま美少女キャラのアニメオープニングとして通用するような映像の組み合わせがバツグンのMVです。

デュア・リパ(Dua Lipa)は、2015年にデビューしたUKのアーティストで、風貌や歌う姿を見るとシンガーのようなイメージなのですが、ソングライターでもあり、ほとんどの楽曲の制作に携わっています。
2017年に1stアルバム「Dua Lipa」をリリースし、最新版となる2ndアルバム「Future Nostalgia」を2020年にリリースしています。

この「Levitating」は、その最新アルバムに収録されている楽曲なのですが、そもそもデュア・リパはポップ・アイコンとしてUKでの人気がすさまじく、ほとんどの楽曲がUSよりUKのほうが断然上位にチャートインしている中で、数少ないUKよりUSのほうがチャートが上になっている楽曲になります。(ちなみに、UKで最高5位、USで最高2位)
その理由としては、ある種単純でノリがいい明るい楽曲だからではないかと思うのですが、真偽のほどは不明です。

さて、「Levitating」のMVに目を向けてみると、単純明快、1980年代から1990年代の美少女アニメのエッセンスを凝縮したような内容です。
月がドーンと出てくるとなるとセーラームーンですし、ひとりの主人公が変身してバンドマンを模したサブキャラを従えるのはミンキーモモですね。
もう少し細かく見ていくと、オープニングで月を背にタイトルが大きく表示されるのはセーラームーンRのオープニングのリスペクトと思われ、様々なアイテムやキャラクターのポップなデザインはミンキーモモのテイストが強く感じられます。

このアニメーションは、日本のアニメーション制作チーム「NOSTALOOK」が手掛けているのですが、「NOSTALOOK」は他にも多くの同種のアニメMV制作に携わっており、その集大成ともいえる作品ではないかとも思えます。
それだけに凝った作りになっていて、もちろん画面サイズは懐かしの4:3で、昔のTVアニメの再放送を見ているかのような少しノイズが乗った映像ですし、色合いやデザインも様々な昔のアニメの要素を取り入れているのですが、そのバランスが秀逸で、違和感なく観ることができます。
変身アイテムも、ミンキーモモはステッキ、セーラームーンはスティックですが、デュア・リパはマイクが変身アイテムになっているのもちょうどイイ感じですね。

しかし、MV中の主人公のデュア・リパが、ホンモノのデュア・リパの容姿とはチョット(いや、だいぶ...)違っていて、本当なら違和感を感じそうなところですが、なぜか違和感がなく、逆に既視感すら覚えてしまうのは、よくできたMVだからこそなせる技なのかもしれません。

この明るく楽しいデュア・リパの本人登場アニメMVに対して、ダークな本人登場アニメもあります。
それが、ビリー・アイリッシュの「you should see me in a crown」です。

ロートーンの楽曲と完全に同調するダークな映像ですが、緻密で繊細な映像に加えて、ビリーアイリッシュの雰囲気が活かされている秀逸なアニメMVです。

ビリー・アイリッシュについては、以前の連載「女性が鼻血を出すMVってアリ?」で紹介しているので、ご興味ある方はそちらをご覧ください。
この「you should see me in a crown」は、以前のその連載で紹介した「bad guy」同様、2019年リリースの1stアルバム「When We All Fall Asleep, Where Do We Go?」に収録されている楽曲です。

では、「you should see me in a crown」のMVの解説に入りましょう。
実は「you should see me in a crown」のオフィシャルMVは2つあり、ひとつは実写版のMVで、もうひとつがこのアニメ版のMVです。
しかし、断然このアニメ版のMVのほうが素晴らしく、実写版のMVは今回ひさしぶりに再見しましたが、当分観ることはないな...という感じです。

そして、クレジットにもある通り、このMVを製作したのは「村上隆」というポップな花を模したアイコンで有名な現代アートのアーティストで、様々な分野とのコラボレーションに取り組んでいるのですが、その中のひとつが音楽とのコラボレーションとなっています。
これ以前にも複数のアーティストのアルバムジャケットの制作やMV制作にも携わっており、カニエ・ウエストのMVの制作もされています。

しかし驚くべきは、通常のMVディレクターではない、いわばアート界の大物の村上隆さんとのコラボレーションを、1stアルバムのメインとは言えない楽曲のMVで実現していることです。
つまり、1stアルバムの企画段階で、既にビリーは通常のアーティストとは違う扱いを受けていたわけですね。
それだけの逸材ということかと思います。

MVの内容はビリーが怪物になって街を支配するというもので、歌詞ともリンクしているのですが、それよりも映像のクオリティがメチャクチャ高く、特に怪物になる前のビリーの雰囲気が実際のビリーそのものとも言え、驚くばかりです。
また、これから売り出す若い女性のアーティストを、怪物に模した映像としてリリースするのは普通はないと思いますが、それをサラッとやってしまうのが規格外のビリーだからこそとも言えます。

とここまで書きましたが、デュア・リパとビリーのMVを比較してみると面白いことが分かります。
まず、それぞれのアーティストのキャラクターとリンクした映像であるという点で、デュア・リパは明るく楽しいMV、ビリーはダークなMVとなっており、いわば「陰と陽」という感じです。
ちなみに、デュア・リパもビリーも2015年デビューで同期なのですが、キャラが全く正反対というのも面白いところです。
また、両方のMVとも日本人が制作しているという共通点があるのですが、そのアプローチが違います。
デュア・リパは昔のジャパニーズアニメのエッセンスを凝縮しており、ビリーは現代アートをアニメに取り入れており、違いが明確です。
そして、最も違うのは、本人に似ているかどうかという点です。
上にも書きましたがビリーの雰囲気をここまでアニメで表現しているのは驚愕に値します。
それに対して、デュア・リパはお世辞にも似ているとは言えないのですが、だからこのMVがダメかというとそうではなく、本人に似せることが目的ではなくMVとして視聴者に喜んでもらえるかどうかが重要で、その意味ではこのMVは大成功しています。
実際、私はどちらのMVが好きかというと、断然デュア・リパの「Levitating」がお気に入りです。

さて、最後におまけでもうひとつアニメMVを紹介しましょう。
デュア・リパの「Hallucinate」です。

これまたポップで楽しいMVですね。
デュア・リパのキャラクターがコミカルなのもいい味出しています。

このMVもデュア・リパが本人役で登場するのですが、上で紹介した「Levitating」のMVとは全く違ったテイストで仕上がっています。
本人役のキャラクターがコミカルな風貌で登場しており、眉毛や目、髪の毛や唇などのデュア・リパの特徴をデフォルメしたキャラクターになっているのは、アニメとしての表現としては王道的な取り組みですが、こちらも決して本人と似せることを目的として制作されていません。

しかし、似せることが目的ではないものの、アニメでは本人の風貌や雰囲気をそのまま再現することが難しいこともまた事実です。
そんな中、ビリーの「you should see me in a crown」のMVはその難しい取り組みにチャレンジし、成功した数少ないアニメMVの中のひとつであることは間違いありません。

さて、今回の「本人が登場するアニメMV」はいかがでしたでしょうか?
デュア・リパもビリー・アイリッシュもテイストは違いますが両方ともオススメのMVなので、未見のかたはぜひご覧ください。

ではまた次回に。

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