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往年のPOLYSICSのイケてるダンスMVが公開されてたなんて知らなかった。これはみんなに知らせなくては!(オススメMV #120)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の120回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回はPOLYSICSが20年近く前にリリースしたオススメMVを紹介します。
YouTube等でオフィシャルに公開されていなかったのですが、3年前に公開されたことに今更ですが気が付き、慌てて今回紹介する次第です。

では、そのチョット古いがイケてるMVはコチラ。
POLYSICSの「I My Me Mine(Strong Machine 2 ver.)」です。どうぞ!

キレッキレのダンスを踊る少女の映像のみで構成される、究極のシンプル映像のMVですが、それゆえにPOLYSICSの楽曲とのマッチングが重要です。
そして、その高いハードルを越えて仕上がったMVは、殿堂入り確実の名作MVと言えるのではないでしょうか。

ポリシックスと聞いて「テクノ御三家のプラスチックス(Plastics)?」と聞き返すあなたは相当のご年齢かと思いますが、ポリシックスとプラスチックスは全然別のグループです。(「言われなくても分かってるよ!」と言われそうですが...)

POLYSICS(ポリシックス)は、1997年に結成された当時「ニュー・ウェイヴ」と呼ばれていたジャンルのバンドで、私としてはジャンルとかは全く気にしないので、そもそも「ニュー・ウェイヴって何?」という感じですが、とりあえずそう呼ばれていたバンドになります。
私のPOLYSICSのイメージは「海外ツアーをメチャクチャやってるバンド」というもので、今回調べたところ2003年に初のUSツアーを行い、以降定期的にUS/UK等、グローバルでのツアーを積極的に行っているという、日本ではチョット珍しいバンドになります。

そんな中、この「I My Me Mine」は2005年にリリースされた7thアルバム「Now is the time!」に収録されている楽曲で、いつもようにこのMVでPOLYSICSと出会いました。
ちょうど折しも「少年チャンプル」というテレビ番組でストリートダンスが取り上げられ、ダンスが一部の間で盛り上がっていたタイミングでリリースされたのがこのMVなのです。
ちなみに、「少年チャンプル」およびのちに続く「スーパーチャンプル」は、今でこそポピュラーなストリートダンスを(多分)日本で初めてメインに据えたTV番組で、私のお気に入りのダンサーは「ひとりでできるもん」さんや「はむつんサーブ」さんでした。
そして、はむつんサーブさんやTOZAWAさんの「アニメーションダンス」は私のダンスの概念を超えたダンスで、よくこんなダンスを考えた人がいるなと思いつつ、このダンスを素晴らしいと認識する人間の認知構造を不思議に思ったことを思い出されます。
だいぶ脱線してしまったので元に戻しましょう。

この「I My Me Mine」は、POLYSICSの代表曲のひとつで、ポップな色合いが濃いのですが、実験的なチャレンジをした楽曲なのです。
というのも、「サビのメロディがよければ歌詞は不要」という考えのもとに制作され、その結果はMVを視聴されたとおり大成功で、この楽曲のクオリティの高さにつながっています。
つまり、このMVは、映像も「たったひとりの少女ダンサーが踊るだけ」という究極のシンプル構成にチャレンジし、かつ楽曲も不要な歌詞は排除するというチャレンジをおこない、その両面で高いクオリティーを実現することで、高次元のバランスを実現した稀有なMVなのです。

と書きましたが、これは制作側が狙って実現したものではなく、ある種の偶然(私は偶然や奇跡を実は信じていないのですが)の産物なのです。
というのも、当初制作を予定していたMVは別にあるのです。
そのMVもリリースされているので紹介しましょう。
POLYSICSの「I My Me Mine(All Star ver.)」です。

基本的に画面にはひとりのダンサーのみで、数名のダンサーが入れ代わりながら登場し、そこに映像効果が加えられている楽しいMVです。

当初作成を予定していたのはこの「All Star ver.」だけだったのですが、収録当日に「Strong Machine 2 ver.」に出演している少女ダンサーが自分がソロのみで踊るダンスを用意しており、それを見たスタッフが急きょソロバージョンのMVを制作することとし、出来上がったのがこの「Strong Machine 2 ver.」となるのです。

そして、その少女ダンサーが、タイトルにもある「ストロングマシン2号」といい、なんでこんな名前を付けたのか不思議ですが、お父さんが「ストロングマシン1号」のためこのステージネームになったようです。
ちなみに、彼女はその実父が住職を務めるお寺の副住職でありつつ空手の有段者でもあり、上で紹介したダンス番組「スーパーチャンプル」ではアシスタントも務めるという八面六臂の女性なのです。
そして、彼女の踏み込んだアプローチがなければ、この名作MVも生まれなかったため、彼女には感謝しかありません。
しかし、ひとりのダンスで最初から最後まで全く飽きさせず、かつ楽曲とのマッチングも素晴らしい構成のため、これを彼女ひとりで考えたとは驚愕ですね。

この「Strong Machine 2 ver.」のMVは、私もよく視聴する音楽専門チャンネルであるスペースシャワーTV主催の「SPACE SHOWER Music Video Awards」で、2006年に「BEST CONCEPT VIDEO」を受賞しています。
POLYSICSは広いターゲットでの評価を求めるバンドではなく、一部のコアなファンに向けた活動をしているように思うのですが、そのPOLYSICSのMVが栄えある賞を受賞するというのは、それだけインパクトを与えた証拠かと思います。
確かに大人の一流ダンサーと比べると、ダンス自体は粗削りで甘い部分があるのも否めませんが、「I My Me Mine」のMVとしてはメインである「All Star ver.」を押しのけて、急きょ作成されたある種オマケとも言える「Strong Machine 2 ver.」が受賞したというのは、まさしく受賞カテゴリであるコンセプトが評価されてのことであり、うれしい限りです。

ここで1つ、同種のMVと比較してみましょう。
その比較対象のMVは、シーアの「Chandelier(シャンデリア)」です。

このMVの解説は過去の回にありますので、ご興味ある方はそちらをご覧ください。(Chandelierを紹介した回はコチラ⇒「洋楽ダンスMV第二弾」

さて、この2つのMVは、「楽曲のアーティストと違うダンサーがひとりで踊るだけのMV」という共通点があります。
「I My Me Mine」で踊るのはストロングマシン2号ですが、「Chandelier」でおどるのはマディ―・ジーグラーというダンサーです。
MV出演時には12歳で、ストロングマシン2号は当時10歳ですから、同年代の少女ひとりが踊るMVとしても同じと言えます。

しかし、演出は正反対です。
「I My Me Mine」は、画面構成は全く変わらず同じ場所の同じ位置でストロングマシン2号が踊るだけの超シンプルな映像です。
それに対して「Chandelier」は、場面転換も多くダンス自体も躍動的であり、少女ダンサーひとりではあるものの変化にとんだ映像になっています。
どちらがいい/悪いということではなく、2つのMVともに素晴らしいのですが、「Chandelier」は相当な準備と様々なスタッフ(もちろん専門の振付師もアサインされている)によって成り立っていると思われるものの、「I My Me Mine」は何といってもストロングマシン2号だけで成り立っているというのがスゴイところです。

MVの話ばかりになってしまったので少し楽曲の話もすると、この「I My Me Mine」では、リコーダーの音色が印象的です。
ライブ映像を見ても、本当にリコーダーを吹いているので、「あっ、本当にリコーダーだ!」といつも思ってしまいます。
このリコーダーの音色を聴いていて、いつも思い出すのが、以前に本連載で紹介したSAKEROCKの「ホニャララ」です。
「ホニュララ」はリコーダーではなく別の楽器のようなのですが、似ていると思うのはなぜでしょうか...
ぜひ皆さんも一度「ホニュララ」と聴き比べてください。
(ホニュララを紹介している回はコチラ⇒「和洋のヘンテコMV対決」

最後にひとつ、おまけのMVを紹介しましょう。
上で紹介したPOLYSICSの「I My Me Mine」のMVには、実は続きのMVが存在しているのです。
それがコチラ、POLYSICSの「Electric Surfin' Go Go」となります。

ストロングマシン2号が、「I My Me Mine」のMVの撮影を終えてランドセルを持ってスタジオをあとにし、別のスタジオに入っていくとストロングマシン2号が3人ステージに立っており、一緒に演奏を始めると4人がPOLYSICSのメンバーに入れ替わる...というストーリーになっています。

MV自体は(失礼ながら)特筆すべきものはないのですが、注目すべきはメンバーの衣装で、「つなぎ」を着ていますよね。
POLYSICSは、この「つなぎ」を着て演奏するスタイルが多いのですが、これは海外のあるバンドにあこがれたPOLYSICSのリーダーであるハヤシさんが取り入れたスタイルなのです。
そして、そのバンドも素晴らしいMVをリリースしており、ぜひ紹介したいところですが、今回はだいぶ話が長くなってしまったので、続きは次回にさせていただきましょう。

今回のPOLYSICSの「I My Me Mine(Strong Machine 2 ver.)」はいかがでしたでしょうか?
「I My Me Mine(All Star ver.)」やシーアの「Chandelier」と比べながらご覧いただき、このシンプルさを極めたMVを堪能いただければと思います。

ではまた次回に。

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