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ニューオーダーって、楽曲もいいけどMVもホントいい!Blue Mondayの違ったMVを2つお届け(オススメMV #27)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の27回目です。(連載のマガジンはこちら)

前々回の「くせになる楽曲のニューオーダー、くせになるMVのエンパイアオブザサン、続けてどうぞ!」の回で、『ニュー・オーダーの特集をしたい・・・』と書いたので、今回はお約束通りニューオーダーのMVに絞って紹介します。
と言っても、ただ単にニュー・オーダーのMVの紹介はしません。
同じ曲を違ったアプローチで表現した2つのMVを取り上げます。

まず、前々回に紹介したニュー・オーダーで一番お気に入りのMVを再度紹介しましょう。「True Faith」です。

何度観てもいいですねー。
楽曲と映像の高い次元でのバランス、映像の様々な工夫、独自の世界観、どれをとっても素晴らしく、もう言うことはありません。

ニュー・オーダーは1981年に結成された伝説のテクノバンドで、詳細は前々回の「くせになる楽曲のニューオーダー、くせになるMVのエンパイアオブザサン、続けてどうぞ!」の回を観ていただくとして、さっそく本題に参りましょう。

今回紹介するMVは、「Blue Monday」というニュー・オーダーの代表曲のひとつで、最も人気がある楽曲になっています。
いくつかバージョンがあるのですが、今回MVとして紹介するのはオリジナルの「Blue Monday」と、1988年リリースの「Blue Monday 88」となります。

では、まず「Blue Monday 88」のMVをどうぞ。

ヘンテコ感というか不思議感が満載のMVですね。
うまくイラストと自社を組み合わせているのが印象的です。
それになにより、楽曲がいいですよね。
これだけ印象が強い映像にもかかわらず、楽曲がぜんぜん負けていません。

まず、楽曲自体を簡単に紹介しましょう。
Blue Monday(ブル・マンデー)は、ニュー・オーダーの代表曲のひとつで、1983年にリリースされました。
史上最も売れた12インチシングルで、レコードジャケットが凝ったデザインになっており1枚売れるごとに赤字がでていた...という逸話もあります。
ちなみに、ジャケットデザインは当時シーケンサーに使われていた5インチのフロッピーディスクを模していますが、今フロッピーディスクと言われても(特に5インチのものは)知っている方はシニア層の方だけですね。

Blue Mondayは、ニュー・オーダーの前身のバンドであるジョイ・ディヴィジョン(Joy Division)のボーカルであったイアン・カーティスの自殺を月曜日に知ったメンバーの心境を唄った、ニュー・オーダーとしても重要な位置づけの楽曲となっています。

楽曲自体も、今聞けば違和感なく「いい楽曲だ!」と思いますが、1980年代の初頭にリズミカルなドラムを前面に出した楽曲というのは珍しく、その意味でものちのクラブミュージックに影響を与えた名曲と言えます。

この名曲Blue Mondayを1988年にクインシー・ジョーンズ(!)がリミックスしたのが、上で紹介した「Blue Monday 88」となります。
ですので、オリジナルの「Blue Monday」よりも洗練されており、凝ったMVもそれを意識して作られていると考えられます。

では、最初に発表された「Blue Mondah」はどうかというと、もっとシンプルでよりリズミカルなドラムが印象的な楽曲となっています。

では、1983年発表の名曲「Blue Monday」をお聴きください。

こんなMV、観たことないでですよね?
というのもこのMV、MVとしてのリリースはされておらず、Lyric Video(リリック・ビデオ)としてリリースされたものです。

Lyricとは歌詞のことですが、Lyric Videoは映像自体には独自の意味を持たせず歌詞を中心に表現されたビデオのことで、最近増えてきています。
しかしこのMV、通常のLyric Videoとは違い、歌詞を表現した映像に特化しておらず、映像自体でBlue Mondayの楽曲自体の世界観を表現しており、まごうことなきMusic Videoとして存在しています。

まず、1983年にリリースされたBlue Mondayの12インチシングルのジャケットデザインをリスペクトした映像になっており、かつそれが楽曲とうまくリンクした表現になっています。
つまり、歌詞のみに絞った映像表現になっていないことが、このVideoがLyric VideoではなくMusic Videoである証と考えています。

このMVは、MVとしても画期的なものであり、人物の映像やイラストによる映像表現が一切なく、フロッピーディスクを模したCGと一部歌詞の表示のみに絞った映像表現のみとしながらも、最初から最後まで飽きさせず新鮮なままで視聴者にMVを観入らせるパワーとテクニックを併せ持った稀有なMVとなっています。

「Blue Monday 88」の楽曲もMVも洗練され素晴らしいのですが、新たなチャレンジではなく、MVの映像表現としても先に紹介した「True Faith」の独自の世界観に比すると正直印象としては弱いと言わざるを得ません。

しかし、「Blue Monday」については、楽曲もMVも今までにない表現に果敢にチャレンジしており、そのチャレンジが奏功し素晴らしい楽曲、素晴らしいMVとして仕上がっています。
私の想像ですが、「Blue Monday」のMVを制作することになったスタッフは、「True Faith」を超えるためには同じアプローチではダメであり、新たなチャレンジが必要と考え、Lyric Videoの形態をとりつつ新たな映像表現を模索・検討した結果、「Blue Monday」の画期的なMVを制作したのではないでしょうか。

新しい取り組みへのチャレンジが名作「Blue Monday」を生み、同様に優れたMVを世に送り出したと言えます。
新しい取り組みをすれば名作が生まれるわけではありませんが、新しい取り組みをしなければ名作は生まれないことを、この「Blue Monday」の楽曲とMVが教えてくれます。

さて、今回が2020年の「オススメMV紹介」の連載の最後の回となります。
2020年7月から始めた本連載も、ほぼ毎週1本のペースで連載し、気がつけば今回で27回目となりました。
紹介したいMVは多々あるのですが、私の頭の中のライブラリから様々なカテゴリを模索し、2~3本のMVをひとつのテーマに関連付けて引っ張り出す作業が楽しく、毎週末の作業が待ち遠しくあっという間に年末になってしまった、という感覚です。

2021年も引き続きオススメMVを紹介していきますので、「こんなMVもあったんだ!」と本連載を読まれた方の感動や気づきに少しでもつながればと願っています。

ではまた来年に!

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