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映画タイアップMVはチョット苦手。でもマドンナのLiveToTellだけは別格だ!(オススメMV #109)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の109回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は映画とタイアップした楽曲の中からオススメのMVをお届けします。
また、久しぶりに私のお気に入りのマドンナのMVを紹介できるので、今回はテンション高めの出だしとなっています。

実は、映画とタイアップしている楽曲のMVはあまり好きではありません。
映画の中で楽曲が使用されるのは映画を引き立てるためですし、逆に独自の映像でMVが制作されるのは楽曲を引き立てるためです。
しかし、MV独自の映像の中に映画の映像が差し込まれると、多くの場合アンマッチが生じてしまい、ちぐはぐなMVとなってしまうのです。
そんな中、まれにマッチングの良いMVもあり、今回紹介する2つのMVは代表例ともいえます。

中でも最初に紹介するマドンナのMVは、映画とタイアップしているMVの中でもダントツNo.1となる素晴らしい作品で、このMVを紹介するために今回の特集をお送りしているといっても過言ではありません。
その素晴らしいMVはコチラ。
マドンナの「Live To Tell」です。どうぞ!

もう感嘆しかないほど完成度の高いMVです。
映画の映像とマドンナの映像、そして楽曲が全く違和感なく調和し、かつ相乗効果すら生みだしており、何度見ても驚くばかりです。

マドンナは、上でも書きましたが私のお気に入りのアーティストで、この連載では過去7回というダントツの登場回数を誇ります。
一番最初は第7回目の「ヴォーグは古典にて名作」で、直近では第97回の「ジャパニーズ洋楽MV第二弾」となります。
ご興味ある方は他の回も含めてご覧になってください。

この「Live To Tell」は、1986年の3rdアルバム「True Blue」に収録されていますが、アルバム用に書かれた楽曲ではなく、今回のテーマの通り同1986年の映画「At Close Range」(邦題:ロンリー・ブラッド)のために書かれた楽曲となります。
というか、この「Live To Tell」は、偶然に偶然が重なって出来上がった、奇跡の楽曲ともいえ、同様にMVもまた奇跡の産物ともいえます。
マドンナが3rdアルバムの構想を練っていた時、プロデューサーとして声をかけた2人のうちの1人が「Live To Tell」の作曲をしたパトリック・レナード(Patrick Leonard)です。
レナードは、当初別の映画(Fire with Fire)のためにこの曲を書いたのですが、それが採用されず、マドンナに声をかけたところ話が進み、マドンナが詞を書いて、当時付き合っていた(のちに結婚する)ショーン・ペン主演の映画「At Close Range」の主題歌として採用されることになります。(ちなみに、それが縁で映画の音楽監督もレナードが務めることになります)
そして、映画「At Close Range」の監督であるジェームズ・フォーリーがMVの監督も手掛けることで、この奇跡のMVが世に出たわけです。

この3rdアルバム「True Blue」からマドンナはイメチェンをはかります。
前2作までは、明るいキャピキャピした楽曲やMVがほとんどで、マドンナのイメージも同様でした。
しかし、この「True Blue」では一転、しっとりとした楽曲が多く、かつMVも重めのものが増えており、その代表ともいえるのがこの「Live to Tell」でもあります。
なお、マドンナは、ショーン・ペンに触発され、そしてショーン・ペンに捧げるアルバムとしてこの「True Blue」を作ったのですが、それを彼女自身が更に飛躍するきっかけとしているのが、なんでも自分に取り込み成長と成功の糧にするマドンナらしいですね。

メチャクチャ前置きが長くなりましたが、MVの話に入りましょう。

「Live To Tell」は落ち着いた楽曲でありMVですが、MVの展開としてはめちゃくちゃスピーディーなのです。
MVの開始とほぼ同時に曲が始まり、暗闇の中から後姿のマドンナが小さく浮かび上がるオープニングから17秒という絶妙なタイミングでマドンナが歌いだし、32秒という早いタイミングで映画の映像が表示されます。
このスピーディーかつ無駄のない流れで、視聴者はMVの世界にぐっと引き込まれてしまいます。
しかし、32秒で映画の映像が表示されるとは、映画の宣伝のために作られているという目的もあるとはいえ、早すぎますね。
にもかかわらず、それが気にならないのがこのMVのスゴイところです。
これは、楽曲の印象というかテイストと、MVで使用されている映画の映像のテイストが完全に一致しているからではないかと思われます。
また、使用する映画の映像のチョイスも絶妙で、意味が分からないはずなのですが、何となく意味が分かるような気にもなるので、欲求不満感が起きないことも特徴となります。

そして、構成がシンプルというのも特徴のひとつです。
基本的に2つだけで、1つは暗闇の中で歌うマドンナ、そしてもう1つが映画の映像となります。

実は、ここにこのMVが映画とタイアップしているにもかかわらず、良質なMVとして仕上がっている秘密があるのです。
多くの映画タイアップMVでは、MVオリジナルの映像の中に映画の映像が差し込まれているため、アンマッチが生じてしています。
しかし、この「Live To Tell」のMVは、MVオリジナルの映像はマドンナの歌う姿だけ、しかも暗闇の中で浮かび上がる姿という映像自体に意味合いを持たず、かつ印象付けが弱い映像として出てきており、アンマッチが生じる要素をほとんどなくしているのです。
(それに、映画の映像がメインなので、映画の宣伝効果も抜群ですね)

まだまだ技ありのテクニックがこのMVには満載です。
マドンナが歌う姿の映像では、マドンナの口元が画面の中央に表示されることがほとんどであり、そこには不要なイメージは与えず、楽曲そのものを前面に出したいという意図を感じます。
(中には、マドンナの頭が見切れる映像も多く、それをしてまでマドンナが歌う口元を押し出した表現にしたかったのではないかと推測されます)
そして、その狙いが十分に効果を上げていることは明らかです。
蛇足になりますが、MVの映像の中での口元の位置について解説した回がありますので、ご興味ある方はそちらもご覧いただければと思います。
「エンディングで出会った2つの名曲」

まだまだ解説したい内容があるのですが、恐ろしいほど文章だけが長くなってしまうので、これぐらいで切り上げましょう。(マドンナの回はどうしても思い入れが強すぎて語りが長くなってしまいます...)
本当は4つのMVを紹介する予定でしたが、次の1つで最後にします。(残りの2つはまた次の機会に)

最後の1つは、ガラッと変わって明るい楽曲でありMV。
シンディ・ローパーの「The Goonies 'R' Good Enough」です。

メチャクチャ楽しくて、思わず体がリズムに合わせて動いてしまいます。
落ち込んだ時でも元気にしてくれそうな楽曲でありMVですね。

シンディ・ローパー(Cyndi Lauper)はUSのアーティストで、1978年にバンドのボーカルとしてデビューしたのち1983年にソロとして活動を開始し、同年に1stアルバム「She's So Unusual」をリリースします。
そして、その1stアルバムがUSでチャート4位に、シングルが4曲連続トップ5入りを果たすなど(シングルでは1位も獲得!)、いきなりスターダムに上ることになるのです。

実は、マドンナとの共通点が多く、活動開始はほぼ同年で、1stアルバムは全く同じ1983年のリリースとなっています。
そのせいもあり、最初のころは比較される場面も多かったのですが、ふたりは全くキャラが違うのです。
マドンナは女王であり、女王であり続けるために自分自身を変化させますが、シンディーは変わることなく自分の音楽をやり続けています。
また、マドンナはリスナーとは一線を引いておりその点でも「女王」ですが、シンディーは普通のイベントにも結構参加するなど庶民派という点も違いますね。
ちなみに、下積み時代にニューヨークの日本料理屋で働いていたこともあってか親日派で、ライブツアー以外にも幾度となく来日しており、私もテレビのニュースで神社で豆まきをしているシンディの姿を見たことがあります。

なお、私もシンディの楽曲は結構好きでたまに聞くのですが、繰り返し観るMVがほとんどなく、その点ではお付き合いがほとんどない状況です。
そんな中でも、この「The Goonies 'R' Good Enough」のMVは、たまに観るMVの中のひとつになっています。

ということで、この「The Goonies 'R' Good Enough」ですが、1985年の映画「The Goonies」(邦題:グーニーズ)の主題歌として制作され、USチャートでトップ10になる大ヒットとなりました。
しかし、やたら長いタイトルで、しかも映画のタイトルと歌詞のサビを組み合わせたチグハグ感もあります。
というのも、シンディは「Good Enough」というタイトルにしようとしたのですが、映画製作会社の圧力で「The Goonies 'R' Good Enough」というタイトルになったようです。
シンディはめちゃくちゃ嫌だったようで、当時は演奏もせず、自身のアルバムにも収録していません。(サントラへの収録のみでした)
しかし、2000年代に入り、ようやくライブでの演奏もしはじめ、自身のアルバムにも収録しています。

さて、肝心のMVですが、シンディの明るく楽しい面がダイレクトに出ていて、かつ映画と混然一体になった映像となっており、全く「Live To Tell」とは真逆のMVのつくり方と言えますね。
しかし、いいMVではあるものの、1点だけ大いに残念な点があるのです。
それは、なんと冒頭の2分15秒は楽曲の無い映像だけで(ナレーションや会話のみ)、かつ最後の40秒も楽曲ナシなのです。

これは、「MVは楽曲のためにある」という私の(個人的な)MVの定義から大きく外れており、残念でなりません。
そこで、この「The Goonies 'R' Good Enough」のMVを観るときは、2分ぐらい飛ばして途中から観ています。

今回は映画とタイアップしているMVから2つ紹介しました。
特にマドンナの「Live To Tell」は超オススメなので、未見の方はぜひご覧ください。

ではまた次回に。

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