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ゆる言語学ラジオ視聴感想 #2

ゆる言語学ラジオの感想二度目。

またしても食レポ回。ただし今回はほぼ雑談回。でもPR案件という。雑談でPRとか、やべーんだわゆる言語学ラジオ。
それでもPRが成り立つのが凄いんだけど。

日本酒のPR案件とは羨ましい。なお、コレを書いている現在、京都はみやこめっせで開催されるSake Springというイベントに参加する予定で、電車移動中である(3/11)。
視聴で溜めた酒フラストレーションを存分に解消する予定。
酒好きの皆さんも、アンテナを高くして近場の酒イベントを見つけて参加しましょう。とんでもなく珍しい酒をガンガン振る舞ってくれる販売店が多くて幸せになれるぞ!

美味しんぼの感想回と言ったら、何と言っても「ヤバさ」だ。これについては美味しんぼ未視聴であっても楽しめると思う。美味しんぼの登場人物が現実にいたら、それはもうサイコパスとかでは済まないくらいのクズだらけ、というネットミームがあるくらいには酷い。予想通りコメント欄もお祭り状態である。
そして「ラーメン発見伝」まで言及が。さすがですな。ラーメンハゲって言ったらダメなのかい、水野さんよ!ハゲじゃない時代の芹沢さん、ちょっと水野さんっぽいんだけどな!

全てを轢殺(略)ラーメンを食う水野芹沢氏

なお、ラーメン発見伝の現在進行形「ラーメンハゲ」主人公編では、かなりの場面でラーメンハゲネタをセルフで擦っています。作者さんは分かってらっしゃる。

1 両タイトルの主人公について

個人的にちょっと違和感を覚えたポイントだ。
「ビジネス書」としての美味しんぼとラーメン発見伝という話題に関しては、両者のストーリーの時代背景からみると、むしろ差異を明確にするべき部分では?と思った。
どちらも「ぐーたら社会人」なのは間違いないのだが、美味しんぼの主人公は、初期に関して言えばほぼ目的の無い、ガチのダメ男だ。そして、その出自(日本の美食の大家)を知られていて、会社のためにグルメ企画をすることになるが、その折りにライバル社が恨みつらみのある実父・海原雄山を同様のグルメ企画を立ち上げたことで、対決として向き合う羽目になっている。時代背景としては、バブル真っ只中を突き進む華やかさが感じられた。勝負に関しても珍しい食材であったり、とんでもなく貴重な食材なんかがポンポン出ます。
ラーメン発見伝は、主人公は最初からラーメン屋として独立したいという目的があり、その開店資金を貯める為にのんべんだらりと宮仕をしている。上司の機転でその能力が会社の為になるのは共通しているものの、そこには確実に脱サラやリストラといった、平成不況や就職氷河期のキーワードが付き纏っている。RPGで言えばパラメータがほぼカンストしている主人公だが、作戦や戦略といった点で未熟なため、ライバルの芹沢さんにやられる場面が多い。それも「味で勝ったところで恒常商品化が無理」みたいな、それこそ皿の外で商売が決する事も多々。

グルメ漫画のフォーマットに関して言うと、美味しんぼはバブル期におけるグルメの追及が重点に置かれていて、美味の追及が「至高・究極」と描かれている。
対して、ラーメン発見伝はかなり飲食店の経営論に踏み込んでいる。「美味ければ売れる、不味いから売れない」が全く通じないという現実を、ラーメンハゲのセリフである「客は情報を食ってるんだ!」と表現しているのが、これを象徴していると思ってる。

バトル物に近いフォーマットなれど、その描き方は両者共に、その時代では新しい切り口を模索した結果、今になっても語り継がれるグルメ漫画の筆頭になっていると思うし、やはり尖ったキャラが多いというのも人気の理由だろう。

2 美味しんぼのヤベーやつ

たびたび話題になる「美味しんぼの登場人物はヤバい」というネットミームだが、これもネタになっていた。
一番有名なのは、主人公の直属の上司であるトミーこと富井。仕事関係の話で大体トラブルの中心にいるのがこの人。トミーの奇行で打線が組める、いや、サッカー2チーム組めるとすら言われるぐらいに「ほんとにいい年した社会人か?」と思わせる行動をしてるので、興味がある人は読んでほしい。
レギュラーキャラにしたって、行き過ぎてんじゃない?とさえ思える罵詈雑言を、済ました顔で言うもんだから、現代の感覚で読むと確かにヤバい。
そんなとんでも理由で周囲がガッツリ怒る→俺が本物を用意してやると豪語する主人公、という構図で、美味しんぼ構文、山岡構文というのはまさにここから来ている。

とはいえ、これこそが一般的なグルメ漫画の構文だというのは、意外と知られていない。
美味しんぼに限らず、大体のグルメ漫画についてはトラブルメーカーが問題を提起するのだ。それを対決で解決していたのが、それまでの少年漫画を中心としたグルメ漫画のフォーマットだった。
ここからは私見だが、その対決というフォーマットを外れる試みこそが、美味しんぼのおそらく最初の目的であり、リアリティを求めたが故の専門的な解説を多用した描写だったのだと思う。
ただ、その後に様々な事情から対決という構図を使わざるを得ないみたいな話になってきて、結果として究極vs至高という構図になったのかな、と思っている。

大体がそれまでのグルメ漫画がノリと勢いに任せたものだったのを、一線を画すためリアリティを出し、社会問題にまで踏み込んだというのが、美味しんぼの大きな功績なのだと思う。罪の部分も確かにあるが、知識欲を備えた読者には、その欲を満たす起爆剤になったということなのだろう。

3 日本酒の表現

日本酒は好きだ。今ではもう、そこまでマニアな活動には走っていないが、かつては日本酒専用の冷蔵庫を買ってウン十本ストックしていた
コレクションの為ではない。この日本酒を厳重にアルミホイルでくるみ、野菜室に寝かせて保存するのだ。
こうすることで、劇的に味が変わるのだ。

某菌類が見える主人公の漫画で有名になった日本酒がある。この日本酒が急激に入手困難になっていた折り、僕ら(複数人いたのだ)は同じ蔵の別の酒に目をつけていた。
火入れ酒なのだが、味が抜群に良い。キレ良し、というのは辛口の酒に使う言葉だ、とはよく言うが、この酒に関しては甘口であるのにキレるのだ。
そして、先に述べた保存法で寝かせ、同時に入手したての同じ酒を飲んで味を確かめていた。
そして一年越し、その酒を開けて飲んでみたところ、「これが『水の如し』か!」とその場の全員が叫んでいた。

日本酒としての旨味の癖がほとんどない、なのに果実のような甘さが舌を撫で、喉へ落ちると、芳醇な香りのみが鼻に抜け、水を飲んだかのような清涼感がある。

日本酒が苦手だという者もそこにいたのだが、この酒には目をひん剥いて「なんじゃこりゃ!」と何杯も飲んでいた。
「水の如し」を冠する銘柄の酒はあるが、失礼ながらこの酒と比べるべくもなく、これこそが水であったと断言する。

さて、褒めちぎるような文言を並べたわけだが。
みなさんは違和感を覚えなかっただろうか?

僕はいまだにこの例えについて、納得はしていないのだ。
果たして「水」は日本酒の褒め言葉として適切な表現なのか?

今回においても言及された「ねこのオシッコ」という味の例え、これはワインのソーヴィニヨン・ブラン(白ワイン)に対する香りの比喩であると、おそらく調べた方は知っていると思う。
この表現は、確かに面白い。日本人であれば「乾燥しつつある青草の、焦げのニュアンス」を「オシッコ」に例えるのは、まぁ思いつかない。
しかし、日本酒に関して「上善如水」があるが故に違和感なく受け入れているのかも知れないが、水と例えるのは、諸外国から見た場合どう思うだろうか。
案外受け入れやすい話なのかも知れないが、決して日本人の感じているニュアンスと同じとは限らないだろうなぁと思うし、なんなら褒め言葉とは思わないんじゃないか?とも思う。

(「アクアヴィテ」とか水を語源とした数々の酒の名称やブランドがあるのは承知の上で言ってます)

と、まぁ屁理屈を述べたところで、酒なんてのは楽しく飲めたらええんですよ。
好みの酒に出会えるのが一番で、うんちくは味付け程度に、それもなるべくポジティブなところをスポイルしたいなぁ、と思う次第。
だから「ねこのオシッコ」は笑って良いと思います(結論)

余談だけど、マツタケって外国だと「死体の臭い」として嫌われるってホントなんですかね。
自分は、死体の臭いは、ありとあらゆるモノを嗅いできたけど、流石にそのものではないのは知ってる。でも、ニュアンスはわかる、みたいな感じです。
詳しい方がいたら聞いてみたい。

以上、ゆる言語学ラジオの感想でした。

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