高校一年の「ビューティフル・サンデー」
高校一年の頃、女の子と九段下で待ち合わせたことがあった。どうして九段下だったのかは思い出せない。地下鉄の改札を出て地上に上がると武道館が見えたのでそちらに向かった。行くあてはなかった。ただ歩いた。
この歌の通り、芝生を抜けて、お堀を抜けて、オフィスビルの建ち並ぶあたり(それが丸の内だと知ったのは大人になってからのことだった)をただただ歩いた。
どれぐらいかかったかは忘れてしまったが、新橋駅に着いた。あっという間だったような気もするし、2〜3時間かかったような気もする。
駅に着いてしまうと、もうそれ以上何をしたらよいのかわからなくなってしまった。「いっしょに歩く」ということ以外に、デートのアイデアを持っていなかったのだ。お茶するとか、買い物をするとか、そういう大人びたことをしたことがなかった。つい何ヶ月か前までは中学生だったのだ。友だちと遊ぶと言えば自転車で遠出をするとか、コロッケやパンを買い食いするかぐらいだ。当時はカラオケやショッピングモールはなかった。ヴィレヴァンもGUもスタバももちろんなかった。
せめて新宿か池袋で待ち合わせていたなら、映画館に入るとかサンシャインシティに行くとか、僕にでも何かできることがあったかもしれない。九段下〜新橋は難易度が高すぎた。
何をしていいかわからず、何もすることがなくなって、じゃあまたねと別れたんだった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?