「Rose with Zombie's」本編
■あらすじ
■登場人物
月季雪如(げっきゆききさ):薔薇ショップのフラワーデザイナー兼販売員
ヴァンパイア族。落ち着いているが
打ち解けた相手には意外と喋る。22歳。
父親が薔薇ビル22号棟の管理会社社長。
母親が22号棟の薔薇ショップの運営をして
屋上の薔薇園も管理している。
守晄世(もりこうせい) :交番勤務の警察官。雪如の幼馴染。
コウモリ族。22歳。
川堀教授(かわほり) :ウイルス学世界的権威。晄世の母方の伯父。
コウモリ族。47歳。陽気。
ウサギ :ヒト族でゾンビウサギウイルスに感染し
ゾンビを発症した者の最初の通称
ウサギに噛まれる女性 :クラブ帰りのパリピ。ヒト族。
夜は人が噛まれる事件が発生しているので
外出しないようにと言われていたが
出歩いてしまっていた人。
■種族設定
ヴァンパイア族 :代々薔薇ビル(屋上にバラ園・12階に薔薇ショップ)
の棟管理を生業とする一家が多い。
美しいものを愛で、穏やかに平穏に暮らしたい性質。
ゾンビウサギウイルスには感染も発症もしない。
アジア系の色白、黒髪、切れ長一重。容姿端麗。
真面目。一途。綺麗好き。モテるが相手にしない。
太陽に弱いが、この世界では太陽の光を見ると
激しい眩暈を起こす程度。溶けたりはしない。
雨の日なら日中も行動できる。
平均寿命は800歳。40歳まではヒト族同様成長し、
そこから老化スピードが急激に遅くなる。
「ずっと若々しく羨ましいわ」と50歳ぐらいから
言われがちな種族。
血は「運命の魂の人」のみからしか吸わない。
コウモリ族: 頭脳明晰。器用。だが総じてチャラくて陽キャ。
ヴァンパイア族に負けず劣らず容姿端麗。モテる。
アフリカ系の肌はブラウン、金髪、くせ毛でふわふわ。
ゾンビウサギウイルスには感染するが発症はしない。
平均寿命は90歳程度でほぼ人間並みだが、ヴァンパイア
一族同様、40歳以降あまり老けていく感じがしない。
ヒト族: それぞれ多種多様な人生を歩んでいるが、
ゾンビウサギウイルス蔓延により危機に瀕している。
感染状態ではもちろん日中も夜も動けるが
ゾンビを発症すると、太陽を避けるようになる。
ゾンビウサギ: ヒト族がゾンビウサギに噛まれる、もしくは
コウモリ族かヒト族との性交渉で
ゾンビウサギウイルスに
感染し、発症してしまった時の姿。
発症までは半年以上かかる。ある条件で
進行を遅くすることはできるが特効薬がない。
ヒトを噛むが食べたりはしない。
ゾンビになると薔薇を求めて、夜を彷徨う。
太陽は避ける。
■Rose with Zombie's 読切作品本編
<序章>12階の薔薇ショップ
○12階の薔薇ショップ
晄世「雪如、やっぱりこれって…」
雪如「あの絵本の"ウサギ"だな…」
ーー場面が変わる(時間が遡る)
○夜道
女性「キャアアア!!!」
女性の悲鳴が夜の路地裏に鳴り響く
通報を受けた交番勤務の警察官・晄世が駆けつける
女性はすごく動揺して呼吸する息が上がっている
晄世「どうされましたか?」
女性「急に…腕を…噛まれて…」
晄世「その人はどこへ」
女性「あの薔薇ビルのほうに…なんか…目が…赤く…光ってて…」
晄世「…わかりました」
「(無線で)応援よろしくお願いします」
晄世は応援を呼び、他の警察官に女性を任せ犯人の後を追いかけた
○薔薇ビル前
晄世「やっぱりここか…」
女性を噛みついたと思わしき人物Aが
薔薇ビルの中に入っていった。
晄世は拳銃ではなく、最近署から支給された
小型のジンバルカメラを構え、後を追った。
人物Aは迷わず
薔薇の香りが漂う端の階段を上り始めた。
○薔薇ビル 端の階段
薔薇ビルのエレベーターや中央階段の扉、各階の扉すべては
<太陽の刻印>が施され、太陽のような暖かい光を放っている。
ただこのビルの端の階段には
最上階の12階まで窓も<太陽の刻印>もない。
その人物Aはゆっくりとゆっくりと階段を上っていく。
晄世「遅い…でもやはり、こちらに全く気付きません…」
晄世はただただ、同じペースで少し距離を取り、カメラを向けながら
後を追って階段を上り続けた。
○薔薇ビル 12階の廊下(夜間用)
12階まで上りきると、明るい空間が広がる。
ただその光は人工的なもので
<太陽の刻印>も太陽が差し込む窓も、扉もない。
長い長い廊下が100mほど続いている。
その先に【12階の薔薇ショップ】の入り口があるのみだ。
その人物はゆっくりゆっくりとその店を目指していく。
20mほど手前に差し掛かると、待っていたかのように店の入り口に
店員が姿を現す
雪如「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました」
少し悲しそうな声で呼びかける
後ろからついて来ている晄世に視線を一瞬向け、軽く頷く
○12階の薔薇ショップ
雪如「まずはこちらをどうぞ」
口を開けたその人物Aの口の中に薔薇の花弁を差し入れる。
口を閉じ歩みが止まった。
雪如「こちらへどうぞ」
薔薇に囲まれた花屋の空間の中央にある
円形のソファに手を引き案内し、座らせた。
人物A「ごめんなさい…ごめんなさい…」
人物Aは意識がもうろうとした様子ながら
謝罪の言葉を発している
真っ赤だった目がだんだんと白くなっていく…
グレーの肌の頬に涙が伝いだす。
雪如「いいんですよ。さあ、このローズティーとクッキーを
お召し上がりください」
人物Aは差し出された薔薇の香りのする紅茶と
薔薇の花弁入りクッキーを口に入れた。
涙もやみ、少し笑顔を浮かべる。
雪如「それでは、あなたにこれを」
そう言って、跪いて棘のついた薔薇を
一輪その人の手に渡し握らせた
人物A「ありがとう…ありがとう…」
そう言って人物Aは光に包まれ、光の粒子となり消えた
晄世「雪如、やっぱりこれって…」
雪如「あの絵本の"ウサギ"だな…」
晄世はカメラをOFFにした。
<絵本「赤い目ウサギ」>
○12階の薔薇ショップ
絵本「赤い目ウサギ」を持ち出してきた雪如が、
晄世に絵本を渡しながら語り掛ける
雪如「ほとんど一緒だったな…」
晄世「ああ…」
この世界では有名なこの絵本の内容はこう描かれていた。
ふたりはページめくりながら改めて内容を追った。
--------------
・あるところに黒猫さんとコウモリさんがいました
2人はいつも仲良し!夜のバラ園で遊んでいました。
ローズティーを入れたり、薔薇のクッキーを食べたり
楽しく過ごしていました。
・ある時、そんな2人の元にグレーのウサギさんが現れました。
ずっと口を開けこちらを見ています。
・「きっと食べたいんだ!」と思った黒猫さんとコウモリさんは
ローズティーと薔薇のクッキーを
うさぎさんにも食べさせてあげました。
・するとウサギさんが嬉しそうににっこりと笑い、目が明るく
光りました!
・なんでウサギさんはここに来たかわからない様子で
ぼーっとしていて言葉は発しませんでしたが
まわりの薔薇にとてもキラキラ目を光らせなら、
ゆっくりと見渡していました。
・黒猫さんとコウモリさんは
お土産に薔薇を一本持たせてあげました。
・すると、ウサギさんは「ありがとう!」と話し
にっこり笑いながら眠り、
大きな温かい光に包まれその場から消えてしまいました。
--------------
晄世「同じことが今起きたよな…」
雪如「ああ…」
晄世「そして俺達には襲い掛からなかったな」
雪如「"ウサギ"はヒト族しか襲わないんだろうな」
晄世「今日、今の何人目だった?」
雪如「今日はもう5人目だった。日に日に増えてきてる、
だいぶ慣れてきてしまったけど…一体何なんだろうな」
晄世「うちの伯父さんも研究しているらしい。この映像も
研究素材になるだろうな」
ーー場面が変わる
<ゾンビウサギウイルスについて>
○学会の会場
川堀教授が発表を始めようとしていた
全局で一斉放送されている
コウモリ族の特性でなんだか口調は陽気だが、ウイルス学の世界的権威だ。
川堀「皆様!1か月ほど前、梅雨の開始時期より発生している
"グレーの肌で赤い目をしたヒト族による噛みつき事件"について」
「警察や薔薇ビル管理者等とも協力し
グレー肌のヒト族についていくつかわかったことがございます!」
「それは~
1.太陽を避ける!
2.ヒト族しか噛みつかず、ヴァンパイア族とコウモリ族には無関心!
3.薔薇に引き寄せられる!
4.今のところヒト族のみに起きている
ということです!」
「加えて、噛みつかれた被害者の血液サンプルを採取させていただき
研究を重ねた結果、新種のウイルスを発見いたしました。」
「SNSでも特徴が絵本「赤い目ウサギ」と酷似ているという理由から
赤い目ウサギ現象と言われていたきておりましたが
この未知のウイルスの正式名称を「ZOMBIE(ゾンビ)」と
命名し、発症者をゾンビウサギいう呼び名で進めます。」
会場:(どよめき)
「このウイルス、発症まで潜伏期間が長いようです。
今のよくわかっておりません。
またウイルス検体に太陽光を当てると
活動が遅くなることが判明しました」
「加えて今のところ発症者の特徴が
夜勤の人や夜行性の人が多く、
また日照時間の少なくなる梅雨時期に発症者が出はじめた件もふまえ
太陽を苦手としたウイルスであり
太陽が何か抑止力、特効薬の鍵になるのではないかと考えられます」
「ただいま特効薬はありません。
太陽のない時間はくれぐれも
ヒト族の皆さまは外を出歩かれないよう、
<太陽の刻印>の扉の中で
お過ごしいただくことをお勧めします。
ーー場面が変わる
<withゾンビの始まり>
○日中、12階の薔薇ショップ定休日
雪如と晄世が薔薇ショップにいる、今日は定休日、晄世もたまたま休み。
薔薇ショップは外の太陽光が差し込まない
二人は川堀教授の発表をワイドショーで見ていた
幼馴染のゆるい会話が進む
晄世「ゾンビウサギって言うんだな」
雪如「ゾンビウサギって言うんだな」
「ゾンビウサギ…光の粒子にしていいのかな」
晄世「家族とかどういう気持ちなのかな、跡形もなくなるって…」
雪如「なんか言ってこないの?警察上層部」
晄世「俺ら下っ端はまだわかんないけど…薔薇ビル内での失踪は
今のところ問わない、って通達は来てる」
雪如「今のところ?怖いよ…でもゾンビウサギ来たら
溜まっていく一方だし、
薔薇の花弁食べまくるし…。
最初よくわからなくて、
どんどん薔薇ショップがゾンビウサギのたまり場みたいに
なっていってさ…
そしたら棘に触れたゾンビウサギが光になって消えてさ…
棘なのかもと思って他のゾンビウサギにも刺してみたら
また消えてさ…
全部気づいたら棘刺して光にしちゃってて……」
晄世「絵本に書いてあることも、薔薇ビルががあることも、
なんかすべてが用意周到で気になるよな」
雪如「俺もまだお前と同じ22歳だし、
他の長生きのヴァンパイアは知ってるのかな…
父親も200歳とかだけどわかんない世代っぽくて…」
晄世「それ以上昔から…?探っていくしかないんだな、この世界の真実」
~終わり~
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