見出し画像

座間9人殺害事件は解決したのか?

3年前、神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件で、今月白石被告の死刑が確定しました。

たった2カ月という短期間で9人もの若く、尊い命を残虐極まりないやり方で奪ったこの事件は、日本だけではなく、世界中をも震撼させました。Twitterという、誰にでも身近なツールを駆使して白石被告の餌食になってしまった9人の被害者たち。大切な我が子に先立たれてしまった遺族の悲しみは計り知れません。世間からも「死んでその罪を償え」という声も多く聞かれますが、この事件には未解決な部分があると思っています。

幼少時代の人柄と家庭環境

先日ポレポレ東中野プリズン・サークルという、日本国内の刑務所に初めてカメラを入れて取材したドキュメンタリー映画を鑑賞してきました。島根県浜田市にある刑務所で官民協働で新しい刑務所をつくり、受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促すTC(Therapeutic Community=回復共同体)を導入している施設としても日本で唯一の場所になります。

そこで見えてきたのは受刑者が過去に負った傷(いじめ、性的暴力、親からの虐待、社会的孤立)でした。またある受刑者は「自分は加害者だと思っていなくて、ずっと自分が被害者だと思って生きてきた」と話していたんです。頭をハンマーで殴られたような衝撃でした。

速報で入ってきたニュースを見た私たちは"容疑者S"という見方でしか情報を享受できませんが、彼らが事件を起こすもっと前まで遡ったとき、私たちが経験したことのないような傷を負ってきた過去があったということ、彼らは自分たちのことを"被害者"と思ってきた経緯があるからこそ、加害者になることによって「過去の弱い自分を乗り越えることができた!」という思考になる人もいるそうです。

それは別の方法でもっとポジティブなパワーに変換できればいいのですが、一旦その話は置いておきます。

それほど幼少期や人格形成期において受刑者が家族や社会とどのようなかかわり方をしていたか明らかにすることで、後学に繋がったりするのですが、座間の事件での白石被告は全くと言っていいほど幼少期のエピソードが出てこないのです。Wikiによれば

1994年(平成6年)ごろ、当時4歳だったSは自動車関連の仕事をしていた父親と母親・妹とともに座間市の一軒家に引越し、2009年(平成21年)3月に横浜市内の県立高校(神奈川県内の商業系高校)を卒業してからは大手スーパーに就職した。就職後は正社員として勤務しており、目立ったトラブルはなかったが、2011年(平成23年)10月に自己都合退職してからは海老名市内のパチンコ店に勤務するなど、神奈川県内で複数の職を転々とした。幼少期のSは「おとなしく目立たない存在」で、両親・妹との4人家族だったが、事件発覚の数年前に母親・妹と別居し父親が1人で自営業を営んでいた。事件より少し前までは東京都新宿区歌舞伎町にある職業紹介会社で風俗店などに女性を派遣する仕事をしており、2017年2月6日には職業安定法違反(有害業務の職業紹介)の疑いで茨城県警生活環境課と鹿嶋警察署に逮捕され、同法違反の罪で同年5月29日に水戸地裁土浦支部から懲役1年2月・執行猶予3年の有罪判決(同年6月13日に確定)を受けていた(一部省略)。

とだけしかありません。殺人の罪に問われた容疑者は一般的には「共感性に欠如している」「慈悲の念がない」「サイコパス」などといった特徴が挙げられますが、白石被告に関しては生活感が一切伝わってこないですし、殺害した動機に関しても言論から強い攻撃性などは感じられません。彼の人生のどの時点で"歪み"が生じたのか。そして今回のような凄惨な事件に発展したのか。

被告の弁護人は東京高裁に控訴しましたが、被告が取り下げてしまったので、もうこれ以上後学に寄与するような、二次被害をうまないようなヒントを今回の事件から抽出することができなくなってしまったことが残念でなりません。

弱さをひきつけてしまった白石被告

ABEMAニュースで若新さんが話していたことが全てなのですが、いくらTwitter日本公式がルールを改定したり、厚労省が自殺防止相談窓口などを設けたとして、「苦しまずに死なせてあげますよ」というメッセージの方が強い救いのように見えてしまう可能性があったとき、それでもそっちにいかせずとも、目線合わせをして生きる意義を一緒になって考え見出してくれる、より共感力の高い方のサポートが必要ですよね......。

凶悪殺人犯とは言え、当時被害者の家族、友人、学校や会社では救ってあげることのできなかった悪い方の救いで(殺めるという選択肢)白石被告は被害者を救済していたことになります。何かのインタビューで「付き合っていた元カノは皆病んでいた、弱い人がいい」と話していたので、精神的に弱っている人間とのコミュニケーションには人より長けていた可能性がある→よって被害者も心を開きやすかったのかもしれません。

専門家も頭を悩ます、歴代稀に見る猟奇殺人事件

全国刑務所連盟理事で桐蔭横浜大学教授の阿部氏は白石被告を「生に対する執着心が欠落している」と考察しています。

これは白石被告に限った話ではなく、多くの猟奇的殺人犯に当てはまる特徴とも捉えます。また前章では「白石被告は弱さをひきつけてしまった」と書きましたが、まさに「生への執着が薄れかけてきた」状態である男女が本件のターゲットになったと思っています。

阿部氏はじめとした様々な専門家の見解でも今回の事件における白石被告の人となりを断定するのは難しいとしており、「死人(被害者)に口なし」なので事件の手掛かりは永遠に葬り去られることになります。

最後に

白石被告の実刑はいつになるのでしょう。私はこの事件のことを調べてこのnoteを書いているうちに夜、ロフト上で寝るのが怖くなってしまいました...。(笑)住まいは千葉ですし、何も起こるはずはないのに。ただそれほど一般人からしても日常生活がちょっとしたトラウマになるくらい、衝撃を与えたニュースだと思っていますので、悩んだときは身近な人や支援をしている公的機関に相談してみましょうね(自分にも言い聞かせる)!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?