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広告費でネットがマスメディアを上回った日

電通から「2021年 日本の広告費」の発表がありましたが、インターネット広告費がマスコミ四媒体の広告費の総計を上回ったことが、ニュースになっています。

「2021年 日本の広告費」解説-広告市場は大きく回復。インターネット広告費がマスコミ四媒体の総計を初めて上回る

ネット広告がテレビ広告を抜いた2019年も衝撃的でしたが、たったの2年でここまで来るとは、正直思っていませんでした(ネットの勢いを考えると、本当は不思議なことではないのですが)。

量的な変化の背景には、質的な変化があるわけですよね。

マスメディアというのは、規制に守られていて、新規参入が難しい世界です(出版系は別ですが)。
独占ではないですが、寡占状態の中で、限られたプレイヤーの間の競争になりますし、新規参入の脅威もほとんどありませんでした。

マスメディア業界、広告業界は激務でしたが、ビジネスモデルは長きにわたって崩れることはありませんでした。
メディア企業の社員は、視聴者、聴取者、読者を増やすために、魅力的なコンテンツをつくることに注力してくればよかったし、広告会社は良い媒体枠に広告を出稿して手数料を稼ぐことに注力すればよかった。

ところが、ネットという「代替品」が出ることによって、様相が変わってきました。

それでも、ネットの黎明期は(いや、つい最近まで!?)、「なんだかんだ言っても、多くの人にリーチ(到達)できるのはマスメディアだよ」という意識は広告業界で根強くあったんですよね。

電通が、ネット時代の購買行動モデルである、AISASを発表したのが2005年でしたが、私自身もその後の長きにわたって「AとIはマスメディアでカバーして、SASの部分はネットを活用し……」みたいな提案を広告主にしていました。

※AISASは、Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(購買)→ Share(情報共有)

大学教員になって学生と接していて、つくづく実感するのは、彼らの世代には、もはやマスメディアでAttention(注意)、Interest(関心)を十分にカバーすることはできなくなっているという事実です。

いまや、ローソンやスタバなどのSNSアカウントのフォロワーは、全国紙の発行部数を凌駕するようになっていますし、YouTuberのチャンネル登録数を見ても、トップクラスはマスメディアと勝るとも劣らない到達力を得ています。

2021年は「TikTok売れ」が流行語(?)となりましたが、いよいよデジタル起点で商品がヒットする時代が来ました(これまでは、「ネットだけでは大ヒットは生まれない」と言われてきていた)。

マスメディアや広告業界の人たちは大変だなあ・・・と思うわけですが、大学教員として広告を教えている私自身にとっても、「学生が卒業した後も、いま教えていることが社会で通用するんだろうか?」、「学生から『古臭いこと教えてるなあ』と思われないんだろうか?」と、不安に思うことも多いんですよね。

会計学とか、経営戦略論とか、理論体系があまり揺るがない科目を持った方が楽だったかなあ・・・なんて思ったりもしますが、私の専門分野ではないので、やむを得ないですね・・・

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