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「本を語る」2024/6/11「人新世の『資本論』」


❶[1BOOK]
「人新世の『資本論』」
斎藤幸平著 (株)集英社 集英社新書1035A
2020年9月22日第1刷発行 2021年1月30日第7刷発行

❷「本を語る」
昨日に続いて「資本論」についての本を紹介するわけですが、ここで重要なのは、資本主義社会は、とうの昔に「行き詰まっている」という現実を、しっかり認識した上で、これからどう生きていけばいいのか、を一人ひとりの人間が考えるべき時に来ているということです。
[思いついたこと]
この本が、ベストセラーになったことは、資本主義の行き詰まりを感じている人が多いということではないか、と思います。だからこそ、カール・マルクスが200年前に書いた「資本論」に立ち返り、そこから新たな道として「脱成長コミュニズム」という方向性を示しているわけです。戦後70年以上の時がたち、中心に立つべき世代もまた、変化しています。ようやく、それらの「行き詰まり」をどう解消していくか、真剣に考え、行動してけばいいのか、試行錯誤の時代の真っ只中、コロナ禍が起こりました。つまり「自然」の方が、先に悲鳴をあげたということです。
[そして]
自然を破壊することによって、成長してきた資本主義社会が、自滅の方向に進んでいることをはっきりと認識し、滅亡を回避するためにはどうすればいいか、という問題に対して、過去のパラダイムは通用しない、ということを改めて思い知ったわけです。やみくもに、行動するのではなく、「考える時間」「整える時間」を与えてくれたのが、コロナ禍だったとも言えるのではないでしょうか。
[しかし]
変化は、コロナ禍以前から、すでに起こっていたのです。資本主義での成長は、言い換えれば「男性中心主義」です。女性の特性や力を無視して、ひたすら経済力だけを追いかけてきた戦後日本の社会です。上べの変化だけをみていると、低成長時代とか「失われた10年」とか、いろいろな言われ方をしていますが、水面下では、着実に「女性が力をつけてきた」のです。ここではとりあえず「女性」と表現していますが、実は性別には関係なく、男性中心で構成された日本の資本主義社会から「疎外」され、端っこに追いやられていた人たちの総称だと考えてください。
[だからこそ]
そこにあるのは、決して「恨みや妬み」ではありません。同じように虐げられた人々同士の「愛のあるコミュニティ」であり、思いやりや相互扶助と言った「暖かい」集団意識です。先に気づいた者が、知らずに苦労している者たちに教えていくという形で、徐々に、しかし確実に広がってきたものです。自分の利益だけ、自分たちの利益だけを追求する「男性たち」に対するアンチテーゼとして、「愛や思いやり」でつながる「女性たち」、そしてやがて、それらは「新しい社会秩序」として統合されていくことでしょう。それが、人類の滅亡や地球の破壊を防ぐ道だと考えます。そのために、私にできること、それは半歩前に出て、躊躇する人たちに勇気を与えることです。


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