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父と息子の旅日記~1000年生きる巨木と伝説の剣の巻~

愛知県にある熱田神宮に参拝した。

1900年以上前に創建されたとされる神宮で、周辺を囲む森には樹齢1000年を超える楠の木もあった。フリーレンくらい長く生きてる木だよ、と息子に説明した。やば。と息子は目をまるくしていた。

樹齢の長い巨木が、ぼくは好きだ。
これはもうなんだかよくわからないけれど、たとえば少年が電車や新幹線を見たときに「おおおお!!」と興奮するのにも似た本能的な嗜好だと思う。

とにかく大きくて、幹が豪快にうねっていて。太い枝から細い木が新しく生えていたり立派な苔に覆われていたり、長い長い年月を感じさせる風貌だけど、てっぺんのほうでは新緑が瑞々しく揺れていて。1000回以上繰り返してきた木としての営みを、巨木は今年もたしかに繰り返していた。

この場所に訪れたのは、“三種の神器”のひとつとして知られる「伝説の剣」(ぼくと息子は、そう呼んだ)が祀られているから、という理由だった。

しかし残念なことに、伝説の剣・草薙剣(くさなぎのつるぎ)は本殿に祀られていて見ることはできないらしい。さすがは伝説の剣だ。

熱田神宮の宝物館には同じく伝説級に古い奉納品がたくさんあるということで、息子を連れて行くことに。(妻と娘は外で待っていた。伝説のアイテムがたくさん見れるのに、もったいない

チケット販売のおじさんに雑談のつもりで「草薙剣は本殿にあるんですよねー」と話してみると、「あなたは神様を見たことがありますか?」と斜め上の回答が返ってきた。おじさんが急に伝説のほこらの前にたたずむご老人に見えてきた。

どうやら、草薙剣はとても神聖なものだから誰も見ることができないらしい。「誰も」というのは、本当の意味で「誰ひとりとして見てはならない」という意味のようで、天皇さまが伝承する宝であるにもかかわらず、その天皇さまですら箱の中を見れないとのこと。まじか。まさに伝説!

ぼくは嬉々としてこのことを息子に報告した。

伝説の剣はな、誰も見たことがないんやって。
日本でいちばんえらいひとも見たことないんやって。
めちゃくちゃ大事なものやのに、宝箱の中身をだーれも見たことないんやって。

やば。と息子は目を見開いた。

誰も見てはならない。
本当にあるのかすら確認できない。
神さまみたいな存在を、長い長い間祀り、ありがたいものとして崇めるわたしたち人間。
知的好奇心が刺激された、たのしい時間でした。

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