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保つ

水族館の金魚の夢が サメになることだとしたら
わたしの夢は 小さい
昨日迷い込んだ画廊でみた写真が 知っている場所だったので
小さな期待をもって そこへ車を走らせた
ネオンが美しい 幻想の世界のようなあの場所は
確かに記憶の片隅に存在していたのだけれど
残酷な現実世界では 輝きを失ってしまい
その世界だけ忘れ去られたように
もうそこには存在していなかった
その世界を切り取ったら 私もそこに行けるんだと思っていた
そこにいたあなたと ちょっと同じ位置にたてるんだと思っていた
あああ、もう空っぽ
ずっと空っぽ
どうしてこんなに意地らしいの
怖ろしく速くまわる観覧車に吹き飛ばされようと
必死になって強がっていたあの夏の日
あの時あなたはそこにはいなくて
遠くで色々なことを語ってた
時間が経てば経つほど美化されていく思い出に
死にたくなるほど 恥ずかしくなった
手に触れて 急に死にたくなった
そういう人間だった
午前二時過ぎの24時間営業スーパーで美しい人をアイル越しに追いかける
この場所だけ切り取れたらいいのに
そしたら古い凝った作りの額縁に入れて
あなたに送って 嫉妬させるのに
湿った風が吹く 死んだように熱い砂漠の夜は
人ひとり狂わせるには 十分すぎる

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