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小さな宇宙が終わるとき

私にとって 誰かの死は
小さな宇宙が終わるとき
小さな宇宙の終末は 角砂糖が溶けていくように
すうっと消え入るかのよう
そこにあった 星々の輝きは
永久に消滅する
それはまるであらかじめ存在を消された
パラダイスのような
掴めない 想像もできない 奇妙な空間
確かにあったのに 曖昧で 悲しい
小さな宇宙を そっと手に取る
でもそれは想像上の小さな宇宙で
本物ではない
その偶像を 人々は信じ 崇拝する
私はその偶像に 唾を吐く
消えてしまったものは もう存在しない
その存在の否定は 私の存在さえも否定する
私はもう消えてしまうから
ここには存在しなかったことになってしまうから
だから 私の宇宙が終わっても ここに居たいと願う
それはきっと不可能だけれど
たぶん誰も 私の小さな宇宙なんて
どうでも良い事なんだろうけど
そうやって 今日もどこかで
誰かの小さな宇宙が終わりを告げる
宇宙は無限の広さで
人間はその無限の広さを誰もが平等に背負ってる
その平等が 感覚的に曖昧だ
人々の消滅の恐怖と共に文字が生まれ
文字の宇宙は不滅の道をたどる
この星が滅びぬ限り 願いを込めた小さな宇宙の
小さな祈りは 今日も誰かの宇宙を翻弄し
迷わせ ため息をつかせる
あなたの宇宙が滅びても
あなたの綴った文字は残り
私の心を震わせる
陳腐な感動を 私は笑う
ああ あなたも人間だったのだ、と

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