見出し画像

なぜ、ジェンダーにまつわる話は複雑化するのか。どこから始めればいいのか。

#DontBeSilent#わきまえない女 がTwitter上に溢れてからまだ1ヶ月にも満たないが、あの会見は区切りだったのか、区切ってしまっていいのかわからないまま、緩やかに静まりつつも、違和感が残る日々が続いています。

「おわらないメーター」は可視化ツールとして、Code for Australiaの前例を参考にしつつ形になっていき、Code for Koreaやg0vの協力で多言語化しています。具体的な言動レベルで何ができるのか、少し長めに生きている人たちが、若い世代や子どもたちにジェンダーの問題を山積させたまま受け渡さないように何ができるのか。教育系の人たちと話していたことをまとめてみます。

前提1:複雑化するのは、「敵の敵が、味方ではないから。」

「BTSは好きですか?」のような質問は、Yes/No(/無関心)で分かれて、好きな理由と好きではない理由をお互いが並べれば済むし、仮に友達がBTSを好きでも嫌いでもはたまた知らなくても、それだけで関わり方が変わることはそんなにない。しかしながらジェンダーの話になると「人間は好きですか?」みたいな抽象度になり、「男性」「女性」「LGBTQ」の「社会的な機会・権利」から「暮らし方や働き方など実生活」まで多層になっていくし、「性」に関係がない人間はいないので、自分を話題の外においておくことができない(無関心・回避がしにくい)。

画像2

フェミニストの対戦相手が特権階級男性ではなくフェミニストになることもあり、パートナーや親や同僚が敵になることもあり、味方を見つけることも、狙いを定めることも難しい。故に、こんな混乱も発生してしまう。

前提2:アジア(の中の日本)は、とても遅れている

「性差(ジェンダー)の日本史」企画展示に行った時も、出てきたが、平安時代以前は大規模首長は男性、小規模首長は女性などの棲み分けがあったり、儀式にも男女が出ていたが、御簾の奥に隠すようになり、絵画から存在が排除され、挙句1948年に「男女同一労働同一賃金」、1949年に「先ず勇気を出して発言しましょう」のポスターが掲げられていた頃から70年経った今、#DontBeSilent で同じ言葉を掲げながら戦っている。

先ず勇気を出して発言しましょう

どこから始めるか1:性別の「らしさ」の話をしないこと

この前放映されたu&iの動画がものすごくわかりやすい。私たちはかなり小さい頃から親や教師や、それらの影響を受けた友人からの「らしさ」呪縛に囚われながら生きている。

子どもたちは大人が描いたものに乗っかってあげることができるので、近しい人から「女性らしくない」と言われれば、その選択を諦めたり、諦めたフリをしたりすることができてしまうし、「らしさ」の話はそのままひきづられて「ジェンダーロール」につながっていく。「女性だから家事をする」「女の子だから可愛く」「男性だから筋骨隆々で強くなる」はお互いの呪いになるので、本人らしさの話をするとしても、性別に紐づけたらしさの話はシャットアウトし、子どもからバイアスを投げてきたときは丁寧にその「らしさ」が幻想であることを教えてあげることが求められる。

どこから始めるか2:二次性徴に「穢れ」を混ぜないこと

子どもたちが性別の話をタブーにしていく段階に二次性徴とそれに伴う「穢れ」の概念がある。

これはアジア特有・日本固有の部分が大いにあると思っていたが、生理用品メーカーがカンヌ受賞した2014年の作品「#LikeAGirl」を見る限り、世界共通の部分も一定あるんだなと思える。(見たことがない人は見て欲しい。)

「女の子らしく走って」と言われた人の反応とその分岐点についての発信だが、生理を境に女性が自信を喪失し、社会に求められた形に嵌っていくことが謳われている。これは女性の月経だけでなく男性の射精にも同じことが言えて、両方とも「蔑まない」「汚いというイメージを勝手に植え付けない」「フラットに、淡々と、事実や必要な情報を教える」ことが重要になる。

どこから始めるか3:恋愛・家族に「正解」を出さないこと

自分の家の家族の形や親が育んできた恋愛を事例として伝えることが構わないが、それが「スタンダード」「正しい」「当たり前」だと伝えることは必ずしも子どもたちにプラスな情報にはならない。時代も違えば文化も違う中で、過去の情報を固定して伝えることは子どもたちの選択肢や理解を阻む可能性がある。そもそも恋愛を必要としない人や家庭や家族にトラウマがある人もいる。素敵な異性愛の恋愛をして暖かな家庭を持つことが全てではない。家庭をもったとて必ずしも幸せになるとは限らない。「こんな家庭もある」「こんな人もいる」という事実から遠ざけることなく、自分たちのケースと社会におけるその他のケースに優劣をつけることなく並べていくことが必要になる。

まとめ:子どもたちの邪魔をしないためのリスト

Don't
1-1. 女性らしさ・男性らしさを押し付けない(色、持ち物、趣味、発言、本人が選んだものを勝手な偏見で変えさせたり、指摘したり、嘲笑ったりしない)
2-1.二次性徴や性の話に感情を混ぜない(月経や射精に関して、知識を共有する際に教える側の勝手な感情的表現や偏見を添えない)
3-1.自分の価値観で家族観や恋愛観を子どもにインストールしようとしない、自分たちと違うパターンを否定したりしない
Do(can)
1-2.自分らしい選択・判断は見守ったり、応援したり、仲間になったりできるかもしれない(本人が望んでいること、挑戦していることは、無理強いしない範囲で寄り添えたらいいかもしれない)
2-2.二次性徴に関する相談があれば、事実を確認し、それに対して必要な情報を淡々と伝える(からかったり、困ったり、悲しんだり、喜んだりしない)
3-2.自分と異なるパターンの家族・恋愛の話が出てきても、話を聞き、対話する。わからないときは必要な資料や本、漫画、映画など参考になるものを探してみる。

どこからはじめればいいかわからない。何がダメかわからない。という人がいたら、この辺りから始めてもらえたら変わっていけるような気がする。


この記事が参加している募集

最近の学び

シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。