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和製オードリータンを待ってしまう私たち


は、事実を受け取って、手を動かして進むしかない。


2021年度初日ということで、Code for Japanの入社1日目を迎えた御三方のLTを聴きながら、今年は何ができるかなと考えていました。

3月から約1ヶ月、Code for Allの提供するシビックテックコミュニティ向けのトレーニングに参加していました。これまでもg0v(台湾),g0vHK(香港),Code for Korea(韓国)のコミュニティとはFacing the Ocean(東アジア合同開催ハッカソン)で定期的にコミュニケーションはとっていたものの、英語圏を含めての連携は、Code for All summitに単発で少しだけ登壇した程度だったので、複数回連続で関わるというのは初めてでした。

トレーニングの内容自体で学んだことも多いのですが、副産物として大きかったのは「私はアジア人なんだ」という事実を体感したということでした。

トレーニング自体は大変丁寧に設計されていて、母語が英語ではない私が参加しても無理がなく、テキストチャットや自動翻訳機能を組み合わせれば比較的ストレスなく参加できるものだったし、一緒に参加していた人たちも優しかったし、彼らから何かを受けたわけでもありません。(シビックテックコミュニティにいる人は基本的には社会のために何かしようという人達なのでどこの国に行ってもウェルカムで前向きで、優しい人が多いです。)

それでも、「自分以外は全員が母語が英語」「アジア人は一人だけ」という環境はコロナで日本に閉じこもっているこの1年弱では起き得なかった環境で、「自分がマイノリティである」ということ久しぶりに強く体験しました。

前職で、学習障害についての説明をする際、手元の資料が全部いきなり英語になる、複雑計算を瞬時に解けている人たちに囲まれている中で自分だけ全然解けないまま話が進んでいく。そういう状態にあなたが置かれたと思ってみてください…。と同僚が例えていて「なるほどな」とは思っていたけど、その「なるほどな」はやっぱり観客席側からみたものであって、リアリティを伴った共感が持てていませんでした。実際に自分だけが不利な条件で集団に投げ込まれることによって、久しぶりに肌で感じることができました。

昨年のBLMムーブメントの時も賛同はしていても手触りはなく、「ああ、こうやって社会が変わっていくんだな、すごいな」みたいな感じで眺めていたし、今年の「カンフーウイルス」発言やアジア人ヘイトの問題についても、「アメリカに住んでいる友人たちは大丈夫かな」みたいなふわっとしたもので、それも観客席的なところから眺めていたにすぎない気がしています。

#DontBeSilentに関してもツイッターしてみたり、終わらないメーター作ってみたり、あーだこーだ言っていましたが、それも今振り返れば自分が一番しんどい状態には置かれていなかったからこそ、できたことだったのかもしれません。

擬似体験的ではあるものの自分が「少数派」の「英語が話せない」「アジア人」になることで、弱者になることの怖さや辛さを色々思い出すことができました。

それゆえ研修終了後、敗北感に突き動かされたのか、「これじゃダメだ」という焦燥感にかられるがままに、Code for Allのスタッフや普段交流しているg0v,Code for Koreaの人達に、「今できることは何かないんだろうか? BLMの時みたいに何かできないだろうか? stop---hateというのは相手に一方的に求めているみたいで違和感があるから、自分たちも内包する形で何か発信はできないだろうか?」と声をかけました。Allのスタッフは、チームに持ち帰ってアクションできることを共有すると即答してくれたので安堵して眠りについたのですが、翌朝、

Do you want to have the “statement”?(声明を出すことを望んでいるの?)

という台湾の友人からの投げかけに、はたと気付かされ、Allの人達に声をあげてもらって助けを乞うのではないなとなり、国内メンバーも「BLMもstopAPPIhateもそうだけど、欧米の事柄に乗っかるだけではないよね」と賛同し、そもそもシビックテックコミュニティでできること・するべきことからやりましょう。と原点に戻ってきました。そしてこの経緯について自分の感情の変化や経緯について説明をしていたら韓国の友人からの

Don't be sorry. Why we are here? It is order to share worries, news, and anything. I totally feel the same.
(謝らないで。私たちはお互いに困りごとや悩み、出来事や活動あらゆることを共有し合うために、シビックテックコミュニティにいるんだから)

という言葉に励まされ、「ああ、一人じゃなくてよかった」というなんとも基礎的なところに気持ちも戻ってきました。

シビックテックに数年関わってきて、特にここ数ヶ月で何度も頭を巡るのは、「オープンソース・オープンデータ・シビックテックの本来的な強みを発揮するには、英語の文献・海外のシビック事例を収集することと、日本の事例を英語で外向けに発信することは避けては通れない」ということです。

最近「DIY都市」というコンセプトのもと進めているDecidimやFIWAREを活用した都市OSに関わる取り組みもバルセロナ発なこともあり、輸入にも、カスタマイズしていくにも海外事例・文献がありますし、

台湾のsch001プロジェクトや韓国Partiの取り組みを理解したり参加したりするにもコミュニケーションやキャッチアップ事態に英語が必要です。

解決するべき課題が多く、世の中の流れが早い以上、国内事例だけで国内リソースだけで、0から1を発明し、ひとつずつ丁寧につくっていくでは間に合わないことが増えてきている気がしています。より多くのリソースを活用しながら対象者に必要な価値を提供していくには、ガラパゴス化の逆アプローチをし続けることが求められていきます。

去年はオードリーさんが大ブームで、ファンな私はオードリーさんのことを周りが話しているのを聞くのが嬉しくもありました。しかしながら、私たちがどんなに待ち望んでも、待っているだけではオードリーさんも透明な政府も、あらゆる人にデジタルのいいところが行き届いている素敵な世界も、手元には来ません。

Civictech Challenge CupもSocial Hackdayもですが、幅広い年齢・性別の仲間とともに、あらゆるスキルやリソースを持ち寄って、建設的な議論とアジャイル的な開発を行き来しながら、一歩ずつ地道な取り組みを進めるしかありません。

基本スタンスをHappy Civic Hackingで構えていても、うまくいかないことや悲しいことが起きたり、「ちっぽけだな」「虚しいな」と思える時もあります。でも、シビックテックコミュニティでは「一人じゃないよ🙌」と言ってくれる人がいたり、みんなが作ったものが実際にまちで活躍している瞬間に出会えたり、遠くの知らない街に住む人と合作できたりするのが救いだったりします。

自粛やマンボウの見通しが立たないことに不安を感じたり、#DontBeSilentや#StopAPPIhateや、あらゆる社会情勢にうずうずしてしまうことがあれば、シビックテックコミュニティに遊びに来てください。日本にオードリーさんはいませんが、一緒に手を動かしながら考えてくれる人たちがいます。


この記事が参加している募集

シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。