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シビックテックでサウナなサーフィン。

2020年は想定以上にシビックテックに突っ込み、働き方が変わった。学び方(研究)はコロナの諸々で思うように行かずに進まないことが多かったけど、働き方は自分の想像より前のめりに方向転換した。

時間通りに出勤する週5会社員を辞めてしまい、週4リモート勤務、週1サイドプロジェクト、元気な時に集中して大学院みたいな組み合わせで調整できたし、有難いことに物理的制約も少ないスタイルだったのでコロナが落ち着いていた時期は大学やら海沿いやら好きな場所で働かせてもらった。

シビックテック って?

Civic(市民) + tech(IT活用) = Civictech

市民・地域住民が主体的にテクノロジーを活用して、行政サービスの問題やや社会課題を解決する方法を編み出していく取り組みをいうが、近年これに対して、

Government(政府) + tech(IT活用) = Govtech

中央省庁や地方自治体の行政サービスの効率化などにIT活用で取り組んでいこうという、民間と行政機関の協力でのアプローチも増えています。これらに加えて、ITを活用して政治や政治家の魅力を国民へ訴求し、国民の政治参加を促す、

Politics(政治) + tech(IT活用) = Politech

も米国や台湾などでは盛んで、日本に足りなくて必要な領域でもあると考えられている。3つが広義的なシビックテックに含まれているような形で、ざっくりは①トップダウンじゃなくてボトムアップ型、②ウォーターフォールよりはアジャイル的に、③独占的なものではなくオープンソース・オープンデータでつくられていくことが多い。(細かな事例はインターンが毎度のイベントで解説してくれているのでそちらへ!)

解きたい課題が多すぎる

LGBT・女性・ノンバイナリー(特権的な男性以外の性)、発達障害、子どもの人権、STEAM教育、医療福祉、発酵技術、環境…取り扱いたい課題かつ諦めたくない問題が多く、自力だけではやり切ることができないので、地道にコツコツシビックテックするのが近道なのではないかと考えた。

シビックテックはオードリー・タンさんのイメージが今年日本で先行してしまったので誤解があるかもしれないが、本来1人の立派なヒーローが世を変えていくのではなく、①困った時にみんなが寄り集まってみて、②まずはバケツリレー的にプロトタイプでやってみて、③本格的につくりこまなきゃいけなくなったらヒトとお金をちゃんと用意して消防車つくるみたいな自衛的な消防団のようなもの。バケツリレーに常駐して取り仕切ってくれる人もいるし、来れるときだけ来て助けてくれる人もいる。週5・会社員が今の社会の当たり前だが、そんな柔軟な働き方や社会貢献の仕方、チーム組成の仕方がもっと社会にあっていいと思える、ある種の社会実験的な組織体制でもある。

前職が未上場からマザーズ、東証へと大きくなる中で組織化し、トップダウン比率が上がっていったところにいた自分にとっては「why not?(やるでしょ)」スタンスで何でもボンボン投げつけて委ねてくれるボトムアップなコミュニティ運営が面白いというのもあったかもしれない。また、海外連携も盛んになっていく中で肌感を持ってアジア圏の仲間たちとコミュニケーションをとることができるこの環境は、台湾や香港、韓国がどんどん前に進んでいる中で、日本でぬるま湯につかりながら呑気に見守っている場合ではもうないという事実を目の前に突きつけてくれて、ヒリヒリしながら手にとれること、そしてそれが絶望ではなくて、いきなりは変えられない現実を目の前にしながらも、ちょっとずつ変えていこうと手を動かすことができるのがシビックテックの魅惑的なところでもあった。

無意識と扇動、波とスタイル、調整と即興。

シビックテック とサウナとサーフィンが2020年の個人的三大ブームで、「無意識」と「波」と「調整」がこれらの共通点のように感じている。

シビックテックの最大の特徴は「社会課題を自分ごとにできること」「誰でも手を動かせること」「個と環境の相互作用が大きな変化をもたらしうること」だと身に染みて実感している。無意識によって既存の社会のバイアス満タンの社会は無意識・無関心な人たちがつくる空気によって流れがそのまま進んでしまうことやを扇動していってしまうことがある。それに対して「こうかもしれない」「こんなことができる」と形にして目の前に出すことによって、そのつくるプロセスに少しずつ参加してもらうことによって、当たり前だったことに疑問を持ち、自分なりの行動に進めるきっかけができる。またその結果を受けた人がそこから得たエネルギーで次のアクションに進んでいく。私たちの取り組みだと東京都コロナ感染症対策サイトがもたらした波は、Civictech Challenge Cupになり、Civichatに繋がっていって、外部にどんどん拡がっていることが誇らしくもあり、責任を感じるところでもある。

サーフィンも自分たちがどんなに波に乗りたくても天候や浜辺のかたちが許さなければ乗らせてもらうことはできない。周り影響を強く受け、環境を常に見て必要なところへ動くところ、そしてそれ故に海や自然といった人よりも大きな枠組みに対する一体感があり、それ自分ごととしてビーチクリーンなどの日々の行動変容まで持ってくることができる。これらはシビックテックの社会やコミュニティ内の人との関わり方とも似ている。また、状況を悲観するのではなく、「その中で楽しむ」「その中でできることを探す」という前向きなスタンスも源流のハワイのサーフィンスピリットに通じるようなところがある気がしている。

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自分が入る海が汚れていくことに気がついてビーチクリーンをすることも、ウェアや板、日焼け止めなど含め、Patagoniaのように素材について考えたり選び直したり、リペアして大事にしながら使い続けてみたりすることも、シビックテックの手を動かして、自分でできることからちょっとずつやってみるというコントリビューターのスタンス、そしてそこから生まれる楽しさや喜びに結構似ている。

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これはやっぱりサウナも似ていて、サウナ入るとき自分のルーティンで「12分入って、2分水風呂で…」とか強めにこだわりをもっていても、そこのサウナの種類や温度などの外的要因、今日は元気だと思いこんでいてもいざ入ると疲れとか寝不足とかで十分楽しめないみたいな内的要因もあったりして、ルーティンを数値的に守ることよりも体感の調子に合わせて変えていくことも求められる。外気浴の気持ちいいサウナをさがしているとやっぱり自然や周りの風景について考えさせられるし、サ飯も現地の食材を活かしたものがやっぱり一番美味しいし、その辺も地域の声・周りの状態・リソースに合わせるシビックテックとも、海次第なサーフィンとも似ている気がして勝手にこれらをつなげて楽しんでいる。

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ここまでイメージの紐付けについて書いてきたが、一方でイメージの紐付けがもたらす弊害があるのもひとつ。

「サーファーは?」「チャラい」
「エンジニアは?」「コミュ障」
「社会人は?」「週5で働く」

本当にサーフィンしているサーファーは大体ちゃらくはないし、シビックテックコミュニティにきているエンジニアは議論しながらプロトタイピングすることを好む。そしていろいろな働き方をしている人が多くて、いろいろな社会人や学生がいる。

「女の子は?」「すぐ泣く」
「障害者は?」「可哀想」
「学校は?」「行っといたほうがいい」

私たちが扱う社会課題もそういったイメージの紐付けがもたらすアンコンシャスバイアスや常識の強要が生み出しているものもある。カテゴリでくくって捉えるとそう見えるかもしれないが、大概はそんなことはない。あるいは、そうとも限らない。

サーファーは海を大事にするし、ストイックにトレーニングしていないと波に乗れない。大きなチームを形成してプロジェクトに取り組むエンジニアは周りのことを考えて動いてくれる人も沢山いる。強くてかっこよくて勇ましい女の子もいるし、幸せな暮らしをしているマイノリティも沢山いる。学校にいってなくても立派な大人になってる人は沢山いる。シビックテックをしていると、そういう当たり前をフレーミングしたりリフレーミングしたり、あるいはそもそもその当たり前を取っ払ったりする瞬間が沢山ある。

当たり前とされていることを鵜呑みにせず、違和感があるものには立ち止まって考え直し、新しい選択肢や方法を模索し、状況に合わせて今できる最善を手を動かしてつくってみる。誰が決めたでもないものに自分を縛り付けたりしないことが、これからの不確実な社会を生きていくために必要な自由さなのかもしれない。

私の原動力は怒りドリブンであることが多く、興味関心は懐疑的な見方で新しい方法を模索できそうなことに向いていいるので、混沌とした社会を楽しみながら乗りこなしていくみたいなスタイルを持ちたい。プロパガンダ(情報戦・宣伝戦・世論戦)を除き、個人に情報の収集と選択の権利が正しく行き届くかたちにしたいし、個人の意思決定を阻害するアンコンシャスバイアス(無意識からくる偏見)は可能な限り排除して、マイノリティでも、マジョリティでも自分らしくあれる場所を増やしたい。でも、それは誰かが無理強いして一時的に立ち上げる自己犠牲型ソーシャルグッド風サービスじゃなくて、集合知的にみんなで手を動かして享受し合っていくような形でやってみたい。


2020年が始まる頃にはLITALICOを辞めることは予定していなかったし、

NHK for Schoolさんとコラボして高校・高専・大学の学生とチーム組んでアプリ作るとも思ってなかったし、

Code for All summitやCode for Japan summit、g0v summitで拙い英語ながらセッションを持って話すこともこんなに沢山受け持つとは思っていなかったので、

総じて想定外だけど、総じて前に進めてはいけた1年でした。来年は研究も仕事もちゃんと進めながら、サーフィンとサウナと茶道もスタイル出していけるようにコツコツやっていけたらいいなと思います。家に引きこもっているとなかなか研究が迷走していくので、閉じこもりすぎないように、来年はたまにネットで繋いで人と時間を共有しながら働いたり勉強したりしたい。

2021年もよろしくお願いいたします。


シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。