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舞台「いい人間の教科書。」2024Ver.①演出

イイショ2024終幕から一週間ほどが経ちました
構成・演出の鈴木茉美です

これからイイショ展までの間、イイショの振り返りをしていけたらと思っております
演出について、構成について、お話しできること、思いついたことをつらつらと語っていきます
よろしくお願いいたします!

一回目の今回は、演出についてお話しできたらと思います


技術スタッフとのアップデート


イイショももう5回目です

舞台を作る上で、稽古より前に技術スタッフ打ち合わせというものが行われます

通常は脚本を読んだ上で、
演出家がしたいプランなどを話しつつ、
予算面含めて落とし込んでいく作業になるわけですが、

イイショになるともう何をやるのかが決まっているので、
スタッフさん達も0から頭を悩ませるのではなく、
前回からプラスで何をしていこうという発想になってくれます

もちろん、
今回のイイショでやりたい私のテーマ的なことは共有しつつ、
その上でじゃあ今回は何をしようかと


小道具の出し方・レーザー・カメラ・音


まずは、小道具の出し方
前回はこうだった、前々回はこうだった
じゃあ今回はどうする???

小道具の出し方

私と一緒にやってくれている技術スタッフは、ほぼ毎回同じチームなので、話し合いがとてもしやすいです

前々回までは役者の一人がそっとおくというスタイルでした
前回から、やはりあれはテクニカル的な何かでやりたいよね、と、箱が降りてくるスタイル
では今回は・・・
レーザーで床を指して、役者に芝居として床を開けてもらったらどうだろう?と

結果とても不気味で今までにない小道具の出し方になり、よかったなと思いました
レーザーの可能性はまだまだあるんだなと


レーザー

レーザーで言ったら、
最初の個室時代もそうでした
いつもは照明で区切られて個室時代を過ごすのですが、
今回はレーザーで区切るという、これまたアップデートされた方法でやってもらえました
今まで床だけだった閉じられた空間が、立体的になり、壁の役割をし、異質な空間を作り出してくれました
あれ少し楽しそうですよねw


カメラ


前回に引き続き、監視カメラ9台を搭載していただきました
監視されている感の演出、気に入っています
さらに今回はアップデートとして、なんと一台【追尾カメラ】を実験的に入れてもらえました
真ん中一番下の段にあったモニターですね
これは、とても嬉しかった
より監視されている感と、人が動くのを感知して動くんですが、その動きが思ったより人間的で、誰かが撮影しているかのような動きをしてくれました
その不気味さが作品にマッチしていました

もう一つ、一番右の真ん中のモニターには、探知システムを入れてもらえました
これこそAIでして
映像さんがシステムを作ってくれました、凄い・・・
人間だと判別できるものを計測してくれます
緑の丸が出ます
ちなみにここだけの話、より一番人間的なものは青の円が出るのですが、これが今まさにこの時の一番いい人間を表しているようでより不気味だよね、と、映像さんと話していました


音の魔術師川西さん、今回はやはり、「実況中継のアレンジ」が最高でした
この歌詞入れたいとか、この歌詞はここならいけるとか、色々と話し合い、その中でアレンジを作ってくださいました
いつも本当にありがたい
英語のアナウンスを入れてくれたことで、世界観を広げてくれましたし、この作品の核となる「赦し」を尊重しつつ、今回のテーマにある「AIとの共存」を落とし込んでくれました

最後の演出部分についても、実はゲネと初日で変わっています
演出は実際にお客さんを入れた空気でやらないとわからないこともあります
今回もゲネが終わった後で、川西さんと舞台監督はじりさんとああでもないこうでもないと、演出部同士のように話し合い、「なんかこれ大阪(イイショ2020)でもやってなかった?w」と話しつつ、作品について最後まで足掻いていました
このチーム感がとても好きです


最後の四角レーザー


演出意図を説明するのは意見が分かれることだとは思いますが、、、

あれはなんなんだろうで終わってももちろんいいと思いますし、
答え合わせとして読んでもらっても構いません

イイショでは毎回、最後、お客さん自身が次の番になるかのような演出を入れています
それは音響さんの発想による音で表現してもらっていました

今回はレーザーでやったらどうかと
不特定のお客様の前に、レーザーの四角、つまりは劇中小道具が入れられていたのと同じような光を当てて、自身の小道具を想起させる=イイショに選ばれる
を表現してみようと


最後のモニター演出について


カテコが終わって拍手の中、
音が変わりモニターに文字が並べられていきます

「あなたは神様です、以上の情報を踏まえて一人いい人間を決めてください」

こんな文章だったと思います
それに対して、しばしの沈黙の後、文章が流れます

アフタートークでも話しましたが、
チャットGPTに実際に情報を入れて導き出された答えを抜粋して使用しています

昨今OpenAIの流れが来ています
チャットGPTに判断を任せることも多々増えています
AIはどんどん学習し、
私たちの生活をより便利にしていってくれます

だとしたら、私たちが話し合うことは無駄なのでしょうか?
全てをAIに決めてもらったらいいのでしょうか?

いい人間を合理的にAIが決めることと、
5人が頭を悩ませて決めた結果は違いました

それはつまり、
瞬間的な感情が、
合理性・効率的要素とは違う結論を出す可能性があるということです

結論が違うというだけで、
5人が話し合う意味はあったわけです

事実、
AIが決めた栗田ではなく、
5人が決めた川本が出ることになったわけです
(それから先のことは除外して)

AIが出した結論だから正しい、
なのか、
5人が悩んで決めたことだからそれでいい、
なのか


AIとの共存が未来ではなくなっています
皆さんは、
AIに全てを委ね、
依存し、
考える力をなくし、
何かを決めることを放棄していきますか?

それとも、
AIを利便性のみに留まらせ、
選択すること、
考えることを止めず、
脳を衰えさせていくことに恐怖を覚え続けますか?

いやいやそれとも・・・

なんでもいいと思います
少しでも、何かを考えるきっかけになればと思います

演劇は、そうでありたいと私は思っています


メソッド演劇であること


あまり多くは語れませんが、
この作品は、
演劇として基本的なメソッドを使っています

これもアフタートークで少し話したかな

演劇とは嘘です
嘘をやるわけです
でもその嘘が、
できるだけ嘘に見えないように、
つまりは方法はさまざまなれどできるだけ本当のように見せるわけです
目の前のことが本当だと信じさせること、
嘘とわかりつつも役者の芝居はそう思わせないこと、
それが大事です
フィクションであろうとノンフィクションであろうと同じです
こういう世界がこの中では存在するんだと信じさせるわけです
「お芝居が上手い」とよく言いますが、
つまりは、
「これは本当なんだ」と信じさせる力がある・強い、
ということです

イイショは俳優さんの持っている人間性の一部分をわざと誇張して使います
それが全てではなく、
その人の持っている一部を罪状の奥底に置き、
その人が感情を出しやすくします

どの演劇ももちろんそれが基本ですし、
それがその人が演じる個性になるわけですが、
イイショはそれが顕著に出ます


演じるということは、自分を隠すことではなく、自分を増やすことです
どんな作品であろうと、そのセリフを発する時、全てを隠して発したら嘘に嘘が重なるだけです
自分という可能性が発したら、どんな役でも嘘が減ります
昨今、自分を隠すことが正しいと思い込んでいる、むしろそれしか知らないという役者が増えているような印象を受けます
それをよしとする演出家も少なからずいるのでしょう
自分と役を乖離させるのが演劇なんだ、芝居なんだという考え方
ですがそれは着ぐるみ(以下)に過ぎず、その人間が演じる以上、その人の持つエネルギーがその役とどこかシンクロしているべきだと思います
キャスティング担当の方の役割の一部分はそれを見極める作業でもあると思います
でなければ芝居のオーディションの必要はなく、普段の話す様子や表情の動き、仕草を見る必要もなく、書類写真と声を聞けばいいわけです
「仮面を被る」とよく言いますが、その役の持つエネルギーを仮面を通して伝えることが必要なわけで、エネルギーを0にしてしまったら伝わるものがなくなってしまうんですよね
着ぐるみだって、中の人が無感情より、その役の内在する感情を自身の表現方法を駆使してなんかとにかく必死に伝え結果的にそれが役とリンクしてる方が伝わるんじゃないかと思います
少し話が逸れましたが・・・、私は、今後も役者と演劇を作りたいですし、それを望む人には自分のできる限りを持って導けたらなと思っています


と、今回はその辺にしておきます
またどこかでゆっくり話せる機会があれば・・・



というわけで、
今回は演出家として演出の箇所に焦点を絞ってお話ししてみました

次回は構成についてお話しできたらと思います

イイショ展まで1ヶ月を切りました
ぜひこの夏イイショを楽しんでいただけたらと思います

舞台「いい人間の教科書。」展示会
http://allen-co.com/allen-ningen2024-exhibition/

▶︎展示日程:2024年8月14日(水)〜19日(月)
8月14日(水) 1部:13:00〜16:00/2部:16:20〜19:00
8月15日(木) 1部:13:00〜16:00/2部:16:20〜19:00
8月16日(金) 1部:13:00〜16:00/2部:16:20〜19:00
8月17日(土) 1部:10:00〜13:00/2部:13:20〜16:00/3部:16:20〜19:00
8月18日(日) 1部:10:00〜13:00/2部:13:20〜16:00/3部:16:20〜19:00
8月19日(月) 1部:10:00〜13:00/2部:13:20〜16:00

※本展示会は時間入れ替え制で行わせていただきます
※開催日によって展示時間が異なりますのでご注意ください

前売り/当日券:1,500円(税込)
《チケット販売サイト》 https://t.livepocket.jp/e/allen-ningen2024-exhibition/
※前売り券のご購入はLivePocketへの会員登録および、+IDとの連携が必要です。
詳しくはLivePocket HP(https://t.livepocket.jp/help/about)をご覧ください。
※前売り券は前日の23時59分まで購入できます

▶︎チケット発売日程
■最速先行販売(抽選)
〜7月21日(日)23:59

▶︎一般発売(先着形式)
2024年7月27日(土)12:00〜

▶︎場所
大泉学園ゆめりあホール7階 ギャラリー
〒178-0063 東京都練馬区東大泉1-29-1


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