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【展覧会】ザ・フィンランドデザイン展| なぜか惹かれてしまう理由を考えてみた

ザ・フィンランドデザイン展

今年初の美術館は、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでただいま開催中の「ザ・フィンランドデザイン展」へ。

ミュージアムに入ってすぐ、右手側が静かな活気に溢れていたので、目をやると、ショップに、たくさんのグッズを手にする人々が。

人気ですよね、フィンランドの雑貨たち。
マリメッコにムーミン、イッタラ、アラビア…などなど
わたしも大好きです。

なぜか惹かれてしまうフィンランドデザイン。
シンプルでありながら、心躍らせる。
大胆なテキスタイルでありながら、生活になじむ。

惹かれるには訳があるはず、ということで、今回は「ただ、かわいい〜♡」で終わらないように、少し意識しながら、展覧会を鑑賞しました。

自然をモチーフにしたデザイン

展覧会はじまって、しばし見ていくとアルヴァ・アアルトの有名なフラワーベースがありました。

よくインテリアショップで見かける、優美な曲線が美しい花瓶です。

一緒にフィンランドの湖の風景の写真が展示してあったのですが、
なるほど。この島々と湖がつくりだす曲線と花瓶のラインは似ている。

ほかにも氷だったり、波紋だったり、と自然の造形からインスピレーションを受けたデザインがたくさんあったのが印象的でした。

見ているうちに、んん…なんか知ってるな、この感じ…

…ああ!着物の文様だ!と思い出した訳です。

日本の文様も青海波とか、流水とか、自然をモチーフにした文様がたくさんあるな、と。

自然の美に心動かされ、生活のなかのデザインに取り入れる、そんなところは日本と似ているのかもしれない、と思いました。

生活に寄り添うデザイン

とてもシンプルだけど、かわいらしいデザインの食器たちがありました。

カイ・フランクの「キルタ」シリーズです。

展覧会では、当時のレトロかわいいテーブルウエアが並んでいましたが、このシリーズは、後に「ティーマ」として再デザインされて、いまも販売されています。

我が家でも大活躍中の食器たち。

このシンプルながらも飽きのこないフォルム、やさしいカラーは、実際の生活で使いやすいように、考えられているそう。

たしかにもう10年以上使っていますが、ほかの食器と食卓に並べてもなじむし、どんな料理にも合うし、でも使うと華やかな気持ちになる。

まさに用の美、といった感じだな、と使っていて思います。

意味合いは違うけど、日本にも「用の美」に価値を見出した民藝がありますよね。

民藝はもともとふだん使いしていた器に美を見出したものではありますが、

毎日使う、生活に即しているものこそ、人々の気持ちを豊かにする、という考え方は似ているかもしれません。

繊細で愛らしいデザインの理由

展覧会を見ていて思ったのは、デザイナー女性が多いなぁ、ということ。

今回展示されていたのは、1930〜1970年くらいの作品だったと思いますが、この時代にふつうに女性が活躍している。

こんな書き方してるほうがナンセンスなのかもしれませんが、どうしても日本と比べてしまう。

日本でも同時代に活躍していた女性はいらっしゃいますが、社会が受け入れたのは、1980年くらいにやっとではないでしょうか。

でもフィンランドは早くからデザインの現場に女性がいて、どんどん製品化されていっている。

あの可愛らしいデザインを生み出したのは、そういう点も大きいのではないかと思いました。

話しはズレますが、、、
展覧会にいく前日、民藝の番組をみていたのですが、そこに旦那さんの跡をついだという女性の陶芸家さんが出ていて、その方がつくるスリップウエアがとても繊細で素敵だったんですよね。

よく目にするスリップウエアはもっと大胆で力強いものが多かったので、やはり女性が制作すると雰囲気は変わるのだなと思っていたところでした。

だからこそ、この愛らしいフィンランドデザインの多くは女性だからこその雰囲気なのかもしれないなという目線で見てしまったのでした。

ということで、なぜ惹かれたのか、の結論。

展覧会を最後まで見て感じたのは、どうやらフィンランドデザインは、「感覚的な部分だけでなく、背景にある哲学的な部分にも惹かれているらしい」ということです。

フォルム、デザイン、テキスタイルがかわいい、という直球な理由は絶対的にあるのだけど、そこだけではない。

自然と生活をむすびつけて、身近に取り入れること、
日常で使う家具や食器は使いやすさまで熟考してデザインされていること、

そこに、ほっこりあたたかいものを感じるし、安心するような感覚もある。そんなところが、自分が好きな民藝的な視点とも似ているから、惹かれるのだろうと思います。

そんな結論に至りながら、帰ってきて資料をみると、2章のところで書いた「カイ・フランク」の説明のところに

日本の民芸に惹かれ、名も無き工芸品が人々の暮らしを支える控えめで素朴な姿に美の本質を見出していた。 〜作家解説より一部引用〜

と書いてあるではないですか!!

やはり!!同じ感性をお持ちだったのか!!と最後とても腑に落ちました。

国は違えど、表現方法は違えど、美の本質は1つ。

多くを語らずもデザインがそれを物語っている。

そんなことを体感できた展覧会でした。






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