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『Mrビーン』の復活はあるのか!?特別番組『Happy Birthday Mr Bean』で出演者たちが語った過去と未来



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『Mrビーン』この名前と顔を知らない人はもはや世界中で、いないのではないだろうか。

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先日、『Mrビーン』30周年を記念する特別番組『Happy Birthday Mr Bean』がITVにて放送された。Mrビーンを演じるローワン・アトキンソン、大学時代の友人であり、同番組のライター&プロデューサーであるリチャード・カーティス、Mrビーンのガールフレンド Irma を演じたマティルダ・ジーグラーなどの出演者が、放送されたコメディのアーカイブを観ながら、当時を振り返るインタビューで、心に残るオモシロエピソードを語った。

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1990年1月1日午後8時、英ITVにて、コメディ番組『Mrビーン』が初めて放映された。ITVは、TVの放映スケジュールに30分間のギャップがあり、そこを埋める番組が作れる人間を探していたという。「チームの中でも、自分たちしかやる人間がいなかったんだろう(笑)」とローワンは振り返る。「(人気ソープドラマ)『コロネーション・ストリート』のすぐ後というプライムタイムだったからね。やる価値はある、と思ったんだ」。

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初回放送のスケッチ。ビーンは数学のテストでカンニングをしようとして、隣の人の答案を息で吹いて、答えを見ようとする。

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時は遡って、1975年。イギリス名門オックスフォード大学のスケッチ(寸劇)クラブでローワン・アトキンソンとリチャード・カーティスは出会う。

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リチャード・カーティス。話題作『フォー・ウエディング』(脚本)や『ラブ・アクチュアリー』(監督・脚本)などの制作にも加わっている。


リチャードはローワンの最初の印象をこう語る。「最初の3回のミーティングでは一言も言葉を発しなかったから、大人しいヤツだなあと思ったんだ。それが、課題提出の時、いきなり立ち上がって自作のスケッチをやり始めたんだ。天才だとだと思ったね」。

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オックスフォード・レビュー(同大学のコメディ・サークル)に属していたローワン・アトキンソン、リチャード・カーティスは音楽担当としてハワード・グッダルを加え、寸劇シアター・ツアーを始める。


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オックスフォード大学時代のローワン・アトキンソン(左)、ハワード・グッダル(中央)、リチャード・カーティス(右)


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公演を重ねるにつれ、メンバー達は、オーディエンスがローワンの身体的パフォーマンスにどんどん引き込まれていくのを感じたと言う。

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『Mrビーン』記念すべき第一回目のパイロット版で放送された教会のシーンはシアターツアーで使用したネタだった。

「リハーサルには時間がかからなかった。元々のアイデアはリッチで良かったから。僕がアウトラインを描いて、そこにローワンが色付けをするんだけど、その最中は本当に面白くて笑い転げていたね」とリチャードは語る。ローワンも「『Mrビーン』はもともとシアター型のスケッチだった。視覚的ににストーリーを展開するにあたり、ああいうキャラクターになったんだ。表情や動作のみの身体的表現だけだから、観客はますます目が離せなくなる、というわけさ」と言う。

こうして『Mrビーン』は放送から間もなくしてTVオーディエンスを獲得し、瞬く間に人気番組となった。

シリーズ1終了後、ローワンとリチャードは、番組に新しい風を吹き込むべく、俳優兼脚本家のロビン・ドリスコルを制作に迎える。

そして、ロビンのアイデアをもとに作られたスケッチがあの有名な、アームチェアーを愛車ミニの上に乗せてロンドンの街を走るスケッチだった。

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「このアイデアを思いついて打診してみたものの、正直制作には金がかかりすぎると思った。だから無理だろうと。でもやってみようということになった。そしたら大ヒットだった」とロビンは語る。


ローワン:「ネタ晴らしをすると、あのシーンではミニの中にドライバーが隠れていて、車内の小さなスクリーンを頼りに運転していたんだ」

ロビンは、俳優としても、数多くのスケッチに出演している。ローワンの身体的パフォーマンス満載の『クイーンマザーに謁見する』回(動画下)では、ビーンの隣に立っているのが彼だ。

リチャード「実際にクイーンマザーに謁見した際に、何が起きうるだろうということを想定するために、自分自身スーツで固めて鏡の前に立って想像してみたんだ。7つのアイデアが浮かんだので、それをリハーサルに持って行った。そしたらそのアイデアが15個に膨らんだんだ」。こうして生まれたこのスケッチ、もう本当にシンプルなオチなのだが、何度見ても大爆笑してしまう。

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『Mrビーン』の中で重要な役割を果たしているキャラクターの一人が、Mrビーンのガールフレンド Irma Gobbだ。 

 Irma を演じたマティルダ・ジーグラー。上のクリップでは、、Irma がクリスマスディナーのためにビーンのフラットを訪れる、あの『クリスマス・ターキー』のシーンが観れる。まさにこの回は全英で1億9千万人の視聴があったという。私が特に好きなのは、Mrビーンがサルベーション・アーミー・カルテッドの指揮を執るシーン(動画2分あたり)。ハワードのインタビューにもあるように、"Mrビーンの指揮により演奏がめちゃくちゃになる"というアイデアもあったそうだが、ここは逆に「正確に細かく表現」した方が面白いと思った、という。「精密美」がビジュアル・コメディに反映したいい例だ。


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そしてこれが「ターキーが頭に!」の図。誰も予想しなかった展開。

リチャード「最終的にはエジプトに持っていけるか?(比喩)というのが課題だった。つまり、世界中の人たちが理解できるネタかどうかということ」。

彼らの思惑通り、『Mrビーン』は世界中で大ヒットとなり、ローワン・アトキンソン aka Mrビーンは「世界でもっとも認識される顔」の第7位に輝いた。「笑いの内容はとても英国的なのに、同時に世界的でもある、というのがウケたんだろうね」とリチャードは語る。

ローワンはその成功を「(Mrビーン)はとても自分勝手で、自己中心的なのに、なぜか人を魅了するところがある。それは同情や哀れみに似た感覚かもしれない」と分析し、「"やるべきこと"と"やりやいこと"との葛藤を感じているキャラクター。そしてそれはまさに僕の一部でもあるんだよ」と告白する。これにはリチャードも「(Mrビーンとローワンは)なかなか興味深い並列をなしているんだよ。というのも、Mrビーンを知れば知るほど、あの物静かだったローワンを、そしてこのサイレントワールド存在するキャラクターの要素を理解することができるからね」。

サイレントワールドの喜劇といえば、フランスの映画監督・俳優、ジャック・タチだが、『ぼくの伯父さんの休暇』は、特にローワンに強い影響を与え、『Mrビーン』のキャラクターへ大きく反映しているという。


『Mrビーン 歯医者に行く』のシーン。歯医者役のリチャード・ウィルソンが良い。"誰もが予測できる結果なのに、実際に見るともうおかしくてたまらない"という分かりやすさが人気の理由だろう。


上のスケッチでも分かるように、『Mrビーン』のストーリー展開の手法として度々用いられているのが、「普通の人」を傍らに置いて、その反応を映し出す、というもの。その人が、時に驚いたり、時に気分を害したり、時に困惑したり、時に同意できなかったりするのを見て、視聴者はその人に共感する。だから、Mrビーンを面白と感じるのだ。

「パフォーマンスは自分が得意とすることではあるけど、常にストレスを感じていた」と語るローワン。共演者たちは、ローワンは完璧主義者で、照明は正しいか、椅子はそれでいいのか、今隙間風が入らなかったか、などを常に気にしていたという。これについてローワンは「完璧主義ってすごい、と人は言うけど、僕は、パーフェクショニズムとは感嘆すべきものではなく、クオリティというよりも、病気のようなものだと思う。そしてそれは不健康かつしんどいものなんだよ」と語る。しかし、そのパーフェクショニズムがあったからこそ、絶対に笑いを逃さない瞬間を作ることができたのだろう。

1995年10月31日、『Mrビーン』最後のエピソード「Good night Mr Bean」が放送される。「TVワールドにおいてはもうやり遂げた感があった」とローワンは語る。1990年から開始し、全14エピソードで世界中を笑いの渦に巻き込んだTVシリーズ『Mrビーン』はこうして幕を閉じた。

そして、1997年に最初の映画『Bean-The Ultimate Disaster Movie』公開、続いて『Mr Bean's Holiday』と2本の映画を製作。立て続けにヒットを飛ばし、2本で興行収入5千億円を上げた。

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映画の例のシーンを訊かれて、ローワンはこう語る。「そうそう、映画であの、ターキーを頭に突っ込むジョークをまた使うことにしたんだ。そしたら、みんなが言うんだよ『フレンズ』(アメリカの超人気シットコムTVシリーズ)のネタパクったでしょ?ってね」。

一方リチャードは、これに関して「『フレンズ』を盗んだ?何言ってるんだ?と思って実際にクリップを観てみたら、ええっ!?って思ったよ。なんでこんなことになってるんだ!?ってね。奇妙だ!」と苛立ちを隠しきれない様子。

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『フレンズ』シーズン5「The One with All the Thanksgivings」内のスケッチで、ジョーイがターキーを頭にかぶってしまう。筆者は『フレンズ』の大ファンでもある為、これはこれで笑ってしまった。だってジョーイだもの(笑)。

しかしローワンは「ジョークを盗むことはできないよ。ジョークは盗まれるべきものだし、インスパイアするものだからねえ。」と意外に寛容だ。

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TVショーと映画で大成功を収めた『Mrビーン』は、2002年、子供用TV番組でアニメシリーズを制作する。

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リチャード「ローワンから、いい話があるんだ、とアニメ化の話を聞いたとき、『僕だったらやらないね』と言ったんだ。でもあれは僕の仕事の中でも一番誇りに思う契約だったよ。たった1回のシリーズで、未だに小切手が送られてくるんだから(笑)」


アニメシリーズでMrビーンの声を担当するローワン・アトキンソン。「やってみて気付いたんだ。声を出すと身体も動いてしまうことに」。全身でパフォーマンスをしながら声を張り上げるローワン。ここまできたらもう職業病だ。

リチャード:「(上のクリップを初めて観て)思ってたより最悪だな。彼にはスイッチがあって、それを入れるとすべてが稼働するんだよ(笑)」

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そして、Mrビーンとして、一番記憶に新しいのは、2012年、ロンドン・オリンピックの開会式ではないだろうか。

ロンドン交響楽団の一員として、映画『炎のランナー』のテーマ曲でシンセサイザーを担当。

開会式に出席していた英国人アスリート、デニス・ルイスは当時を振り返り、「シンセサイザーのダンダンダンダンという音が繰り返されて、映像がその指から手、腕へと移っていく。そして現れたのが、Mrビーン!なんて天才なの!と思ったわ」と笑う。「ベッカムとボンドとビーン、最強じゃない!?」。しかしローワンはこう語る。「オリンピックの開会式では、ビーンを演じるつもりはなかったんだ。でもやっているうちに、"ビーンのような"キャラクターになってしまった。つまりそれは僕自身ということになるんだけど」。このクリップのYouTubeの再生回数は7千万回にのぼり、世界中で12億人がこのサプライズを楽しんだ。

最後に、『Mrビーン』の復活に関しては...。

リチャード:「年老いたビーン。もともと彼は不貞腐れた自己中な面があったから、あり得ないことはないね」。

ローワンもこう付け加える「ビーンのことは今でも大好きだよ。今でも面白いと思うし、今でも演じることができると思う。絶対ない、とは言わないね(Never say never)」。

当時のメンバーで、オリジナルセットを使ってミニ・リハーサルもされている、という証言が!これは『Mrビーン』復活の可能性を示唆しているのか!!??

番組の最後に、リチャードが「ローワンは自分の兄弟のようなものだ」と述べたことを聞いて、嬉しさでとろけるローワンをどうぞ。

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『Mrビーン』で超有名になる前に、ローワン・アトキンソンが出演していたBBCコメディ番組で『Not the Nine O'Clock News(9時のニュースではありません)』というのがあるのだが、これが本当に本当に面白い。特に、この「ゴリラのジェラルド」のクリップはマジで必見。


One of the best sketches from the 80s

Posted by British Comedy Classics on Wednesday, December 11, 2019


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こちらも併せて読んで頂きたい。ローワン・アトキンソンとリチャード・カーティスそして『ブリジット・ジョーンズの日記』の作者ヘレン・フィールディングは皆オックスフォード大学に同じ時期に在学していたのね。

















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