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何かと物議をかもしている「エミリー、パリへ行く」だが、まあ、SATCほどの学びはないけど、エンターテイメントとしては最高だと思う。

ベレー帽にパン・オ・ショコラ。ヘビースモーカーで怠け者なフランス人。愛想のないウエイターに好色な男たち。そしてラブ・アフェア...。

なんだかフランスのステレオタイプを総まとめにしたようなドラマだな、と思ったのが最初の感想。そのせいからか、フランス人批評家からは、ずいぶんと叩かれている、という記事をどこそこで読んだんだけど、私は日本人だから?か、とーっても楽しめた。

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リリー・コリンズ演じるエミリー。リリーのインタビューによると、エミリーは23才くらいの設定なのだそう。

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Netflixで放送された『Emily in Paris(邦題:エミリー、パリへ行く)』がなかなか良かった。あのSex and The City のクリエーター、ダレン・スターの作品とあって、期待も高まるが、コミカルなテンポはそのままで、舞台をNYからパリに移し、主人公を若くした設定で、いい意味で違ったエンターテインメントだと言える。

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エミリー(リリー・コリンズ)は、シカゴのマーケティング会社から、フランスの"極めて保守的な”ファッション・PR会社へ転勤する。ソーシャルメディア部門担当へということで、パリのオフィスにアメリカ的思考、アイデアを持ち込むのが彼女の仕事。キャリアと恋と、友人関係(三角関係!)、カルチャーの違いに戸惑い(楽しみ?)ながら、パリで新生活を始める。

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ここで、笑いを誘うのが、アメリカvsフランスのカルチャーの違いなのだが、以下、アメリカ人であるエミリーが戸惑ったシーンをいくつか挙げてみた。

ーフランスの建物は地上階は0階(アメリカや日本では1階)。つまり、エミリーの住むアパートで5階はアメリカの6階にあたる(これはイギリスでも同じ)。しかもヨーロッパではエレベーターのない古い建物も多い。

ーエミリーがフランス語が出来ないと分かった途端、ボスをはじめ、同僚たちが彼女を避ける。

ーエミリーが8時半にオフィスに到着するも、まだ空いていない。パリの就業開始は10時半。

ーボスのシルビーをランチに誘うが、「ランチはタバコなの」と断られる。

ーシルビーは香水ブランドのクライアント、アントニーのミストレス。不倫は文化(!?!?)

ー香水のPRプロモ撮影現場。「モデルの女性が真っ裸で男性たちの間を歩く。彼女は男たちの目を惹きつける」という設定なのだが、アントニーは「真っ裸じゃない、香水を身にまとっている」と。これは「セクシー」なのか、それとも「セクシスト」?

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ーエクササイズを終えて出てきた女性たちが、スポーツジムの外でバーキンを片手に一服しながら談笑している。

ーフランス人は「生きるために働く」のであって、アメリカ人のように「働くために生きる」のではない。

ーフランス映画は「人生」を描いているが、アメリカ映画はハッピーエンドばかりで現実的ではない(エミリーはそれは「希望」を意味する、と反論)


このように例を挙げると、時代遅れな、保守的フランス人をアメリカ人視点から揶揄するような表現で描かれているシーンの快挙には暇がない。

これらのシーンをみてパリジャン達はどう思ったのだろうか?

英ファイナンシャル・タイムスの記事によると、意外にフランス人も楽しんで観ているようなのだ。

32歳の弁護士である女性は「ストレスの多い仕事から離れて、一息つくにはちょうどいいドラマよね。実はこのドラマでパリを違った角度から見ることができた。コロナ禍において、少しでもクスっと笑えるのは、いいことだわ」と述べている。また、パリの出版社に勤める男性も「いい意味でも悪い意味でも、クリシェの連続で、特筆すべきことは何もないけど、観る価値はあると思うよ」と。「多分そのクリシェというのは、誇大表現なんだよね。”パリの女性はタバコがランチ代わり”とか”キレイな服を着た女性の連れた犬のそばにウンコが放置されている”とか」と続ける。

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エミリーは犬のウンコを踏んづけてしまう。


ドラマ中で繰り広げられる、エミリーのパリの生活が現実離れしていると感じるのは、彼だけではないようだ。「パリの美しい街並みにエレガントなディナー。洗練されたアートショーに目を見張るようなファッションパレード」...。これらは、パリジャン達の生活とは必ずしも一致しないという。「第一、エミリーがメトロ(パリの地下鉄)に乗っているシーンなんて一つもないよね。イエロー・ジレ(黄色いベスト)のプロテスター達にぶつかることもなければ、路上でホームレスに遭遇することもない。」「しかもあんなにきれいなパリは久しぶりに見たよ。関係者たちは撮影の前に路上を大掃除したんだろうね(笑)」。

ただ、フランス人同様、アメリカ人に対してもステレオタイプというのは存在するわけで(ここでは「bad sex, bad food, no culture」と辛辣だ)、フランス人もこのドラマで描かれているクリシェの中にもいくつか当てはまる真実がある、と認めている。

以上のようにFTは締めくくっている。

フランスでは、10月2日にNetflixで配信されてから、4日間で同局で最も視聴の多かった番組だったとのこと。とあるフランスのTV司会者は、「"Emily in Wonderland"というタイトルの方が合ってたわね。これは、SATCが本物のNYでないのと同様に、この(ドラマの中の)パリも存在しないものなのよ」と語っている。

フランス人には、暗いニュースの多い今、コロナ対策として、ある種の「解毒剤」、「ライト・リリーフ」として受け入れられているようだ。

まあ、ステレオタイプのクリシェとして、単に笑えるところと、マジで笑えないところがあるのは、文化の違いを描く時にはもっとも分かりやすい表現方法だと思うので、すべてのフランス人、すべてのパリジャンがそうではない、ということを理解して、ある意味話半分として受け止めていけば、エンタテイメントとしては最高だと思う。それよりも、話の本筋がパリを舞台にしている割には、アメリカのロムコム満載で、そんなことあるかいな的な展開が、ーー皆がみな、エミリーを好きになる。七転八倒しながらも、彼女のビジネスアイデアはいつも大成功、等々--ストーリーをチープにしているような気もするんだけど、最終的にはあまり頭を使わずに、サクっと観れて、目の保養、そしてなんだかハッピーな気分になる、これに尽きるかな。

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私は、カミーユがとても可愛らしくて好き。少しハスキーなボイスも素敵。


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エミリーの超ハンサムな隣人、ガブリエルはカミーユの恋人。エミリーとの三角関係はどうなってしまうの...? ガブリエルは地元ビストロのシェフという設定だが、演じているリュカ・ブラボーは元スーシェフとのことで、本当にあのオムレツが作れるらしい。



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深くスリットの入ったスカートを好んで履いている、エミリーのボス、シルヴィー。しなやかなスレンダーボディから大胆に露出した美脚。歳が近いのでお手本にしたいファッションだが、これは無理だな。


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実は、いつも楽しみにしているのは、エミリーではなく、ジュリエンのアウトフィットの方。着こなしもアクセサリー使いも美しいのよ。


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カミーユのファミリーが経営するシャトーを訪れた時に着ていたこのセーターは「Essentiel Antwerp」のもの。欲しい!と思って検索したら、すでにソールドアウト(泣)。

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ドラマの内容にイラっときてたのは、意外にもパリ在住のカナダ人だった!「Vogue」に投稿された「エミリーへの手紙」には、パリに7年住み、フランス人の夫を持つ筆者からの反論がギッシリと書かれている。

そういえば、英ガーディアンの記事にも、アメリカ人女性からの反論が載ってた。「私はパリに10年住んでいるけど、あんなハンサムな隣人には遭遇したことなんかないわ!」。笑!!

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パリのアメリカ人と聞いて、真っ先に思い出すのはウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリス』

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作品としてはこちらの方が好き。以下のnoteにも触れたけど。



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