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もし、バンクシー作品が突如として自分の住む街(もしくは自分の家の壁!)に現れたら!?

写真上: ブリストルのM shed ミュージアムに展示されているバンクシーの作品「Grim Reaper」

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先日、バンクシーの作品「Show me the Monet」(2005年、写真上)が英サザビーズでオークションにかけられ760万ポンド(約10億4千万円)で落札されたというニュースが駆け巡ったが、実はそのオークションがロンドンで行われているちょうどその頃、私は「ピアスの少女/Girl With a Pierced Eardrum(S)」の前に立っていた。つまり同じ日にバンクシーの出身地であるブリストルを訪れていたのである。

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言わずもがな、バンクシーのストリート・アートを見るのが訪問の目的の一つであり、いくつかをこの目で見ることができて、それは満足な旅であった。

高価なストリート・アート。モノによっては10億円以上する作品が路上の壁に書かれている不思議さ、というものを感じずにはいられないが、ブリストル在住の人々はもう、生活の一部になっているからか、セルフィ―を撮る人すら見かけなかった(コロナで観光客が激減しているのもあるが)。しかしながら、ブリストルは街全体がアートといわれるように、バンクシーをはじめ、様々なストリート・アートに出会うことができ、素晴らしい時間を過ごせた。

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バンクシー繋がりということで、先日、面白いニュースをBBCで見つけた。「バンクシー作品が突如として現れたら、次はどうなるのか」という記事。先述したように、ともすれば億単位の値段がつくアートがもし自分の住む街(もしくは自分の家の壁!)に現れたら!?

先週、英ノッティンガムにフラフープで遊ぶ女の子の絵が現れた。フラフープ?近づいてよく見てみると、タイヤだ。しかもその絵の近くには壊れた自転車が置いてあり、後輪が無くなっている。現れた絵はステンシルによって描かれたもので、後にバンクシーが自分の作品であるという声明を出した。専門家によると「どのような状況下でも、何か楽しいことを見つけようとする前向きな思考を表しているいるのではないか」とのことだが、ノッティンガムは、コロナの感染率が非常に高く、イギリス政府が導入した3段階の規制ルールにおいても、一部の地域において、一番厳しいTier3が適用されることになるため、少しでも気持ちを明るくするために、この地を選んだのではないか、と言われている。

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しかし、これらのバンクシーによるストリートアートだが、一体誰に所有権があるのだろうか?

2014年にイギリス南東のシーサイドタウン、フォークストンに現れた「Art Buff」という作品は、女性の後ろ姿で、彼女は何も乗っていない柱脚を見つめている。バンクシー作品ということで、一躍注目を集めたのだが、その2か月後、ここのテナント(賃貸主)がこの壁画をアメリカまで運び、売りに出したのだ。もちろん、建物のオーナーは所有権を主張、この論争は裁判に持ち込まれた。判決はというと、作品の所有権は建物のオーナーにあるため、壁画は戻すようにとのことだった(その後オーナーは地元フォークストンのアートチャリティーに寄付)。

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また、同じ年に、ブリストルにて、やはりバンクシーの作品を巡って、絵が描かれたボーイズ・クラブのオーナーとカウンシルで所有権論争が勃発した。

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「Mobile Lovers」と名付けられたこの作品だが、のちにバンクシーの声明により、この作品はボーイス・クラブに所属しており、しかもすでに£403.000(約5600万円)で個人コレクターに売却済みとのこと。つまり、これにより資金繰りに苦しんでいた地元ユースクラブが救われたというわけだ。

ノッティンガムの弁護士によると、これらの作品のコピーライト(著作権)はバンクシー自身に残るものの、作品自体の所有権はその建物のオーナーに所属し、その後、そのまま残すか、売りに出すか、取り除くかは、オーナーの自由であるという。

実は、それをバンクシーと知らずに取り除かれた作品も実はいくつかある。今年、7月にロンドン地下鉄に現れた「If You Don't Mask, You Don't Get(マスクをしなければ、得ることはない)」だが、車内清掃員がバンクシーとは知らずに消してしまったとのこと。

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駅構内、電車内への落書きが後を絶たない上に、コロナで消毒もしなくてはならないので、これは仕方ないことなのかもしれない。しかし、ラッキーなことに、バンクシー自身がこの作品の制作過程を録画しており、今でも動画にて楽しむことができる。

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前述のノッティンガムの「フラフープの少女」だが、このビルのオーナーは「とりあえずは皆に楽しんでもらいたい」と述べたものの、この先の予定についてはまだ(BBCの記事の中では「これ以上のコメントは控えたい」のような言及を避ける様子)未定とのこと。

いちファンとしては、このまま残して、道行く人の心と頭をハッピーにしてもらいたいと切に願うのである。

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最後にこちら。『Dear NHS (親愛なるNHSへ)』は、109人のセレブリティによるNHSとの思い出話や関連エピソード、そして感謝の意を紹介した本。監修は『すこし痛みますよ』(羊土社)のアダム・ケイ(インスタのリンク下)。表紙は言わずもがなのバンクシーだが、この作品は、コロナ禍の真っただ中にサウサンプトンの病院へ寄贈されたもの。本の売り上げはすべてNHSチャリティー&ララバイ・トラストに寄付され、子供を失った両親へのサポートに充てられる。


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