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『ハイ・フィデリティ』ドラマ版が(思いのほか)良すぎて。原作本、映画からさらにアップ・トゥ・デイトされた本作はジャンルを超えた名盤の宝庫

本も読んだし(99年に文庫本で)、映画も観たし(2000年)で、もう観る必要ないはないかなあ、と思っていたのが間違いだった!

『ハイ・フィデリティ』(2020年)が最高に良かった。 半信半疑で観始めたものの、Ep1で“Come On Eileen”が流れた時、既にこのドラマを好きになってた。

まずは、なんと言っても音楽。レコード・ショップが舞台だからあたりまでなんだけど、10エピソードもあるからか、そのジャンルの幅広さと言ったら!ボウイやマッカートニーはもちろん、ニーナ・シモンやフランク・オーシャン、アウトカストまで。しかもビータバンドの “Dry the Rain” が再び登場している(嬉泣)。ボウイの『The Man Who Sold the World』のレア・アルバムを見て悶絶した人も多いのではないかと思う。

さらに、舞台はブルックリン。原作がロンドンで、映画がシカゴ、そして今回はNY。ブルックリンという土地柄、人種のダイヴァーシティは免れないのは当然で、ロブをゾーイ・クラヴィッツが演じたのは当然の成り行きのように思える。だが、注目したいのは、シェリースを演じたダヴァイン・ジョイ・ランドルフ。ジャック・ブラック演じたバリーのイクイヴァレントだが、そのいで立ちやファッションも含めて存在感抜群。ラウドかつ歯に衣着せぬ物言いでコミックなキャラクターだが、実は繊細な感情の持ち主。このキャラクターを黒人女性が演じたというのもブルックリンらしい。また、サイモンがゲイだというのも2020年らしい設定。1つのエピソードを丸々サイモンのリレーションシップにフォーカスしたのも(ここでも第4の壁を使用)良かった。そして、ジェイク・レイシー!彼が出演しているの知ってたらもっと早く観てたかも!白人のミスター・プリウス・ナイス・ガイ!『ホワイト・ロータス』でのマザコン嫌な奴のイメージが強かったけど、ここではロブに翻弄され、困惑する役がいい感じで、実はこっちとくっついてくれればいいのに、とも思ったりなんかもした。

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シェリース( ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ):毎回登場するたびに、おおっ、と驚かせてくれるその衣装。髪もメイクも爪もすべてがラウド。


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ロブととても良い関係の、実は元カレ、サイモン(デヴィッド・H・ホームズ)、物静かで気遣いが押しつけがましくなくて素敵。


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「あのベスト男」(笑)と呼ばれていたクライド( ジェイク・レイシー)。ブルックリンにしては普通過ぎる白人という設定が良い。


それにしてもゾーイ・クラヴィッツ可愛いなあ。ビースティー・ボーイズのTシャツがあれほど似合う女優って他にいないよな。演技も少し抜けた感じがよかった。映画版のジョン・キューザックが敢えて熱心にカメラに語りかけるのとは違って、こちらは至ってロー・キー。煙草をふかしながら語るのもエフォートレスにクールだし、ジャッジメンタルなステートメントもない。かなりディザストラスな状況なのに、なんだか笑ってしまいそうになる、というかみずぼらしさがない。それは、何があっても家に帰ってレコードをかければ、多少現実の世界から離れることができるという、音楽の力を表現しているからか。レコードに針を落として、スマホでテキストを送る。テックとアナログが共存している感じも2020年らしくて良い。


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で、ロブの恋の行方は・・・・が大変気になるが、シーズン1で終わり!?どうしたHulu!?シーズン2の製作を見越しての終わり方だったから、尻切れトンボ?これはないでしょう。こんなに充実したリインベンションを見せつけておきながら製作中止とは、なんとお粗末な。酷すぎる。


あまりにも残念過ぎるので、公式プレイリストをどうぞ。


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