トランス男性は女性ではない件。

補足が必要かなと感じたので、早めに1点だけ。
わたしが90年代から2000年初めにかけて『フリーネ』『アニース』を作っていたとき、“女性を愛する女性“を読者として想定し、そのように銘打っていました。当時を振り返り、著者名や年表を書き写していて、FTMTS(当時のご本人の表現)である虎井まさ衛さんや「FTM日本」を注釈なしに含めておくのはよろしくないかな?と感じています。

虎井さんに初めてインタビューをお願いしたのは1995年の『フリーネ』1号。今、改めてリード文を確認してみたら”彼は「女性を愛する女性」ではないけれど、セクシュアリティの多様さと可能性をフリーネたちに伝えたくて、ご登場願った“とありました。あらま、わたしったら当時から抜かりがなかったわ(自画自賛)!
書いていて、虎井さんと彼が主宰のFTM日本とは、ミニコミ「LABRYS」がきっかけで縁ができたことを思い出しました。セクシュアルマイノリティ向けのミニコミ同士、ということで、相互に情報を掲載したのではなかったかと思います。MTFTSレズビアンの麻姑仙女さんも「LABRYS」の著者のおひとりで、その流れで『フリーネ』や『アニース』にも執筆をお願いしました。

90年代の『アニース』には「MIX JUICE」というコーナーがあって、”セクシュアリティの多様なカタチと、それぞれの本当のキモチを伝えるページ“として、ゲイメンとの座談会、INTERSEX(半陰陽)、主婦バイセクシュアル、レズビアン・マザー、ヘテロセクシュアルなどのさまざまな当事者の方の声を掲載していました。FTMTSではゆうたさん、インターセックスでは「ヒジュラ・ニッポン」主宰のはっしーさんさんほか、多くの方にお世話になりました(皆さん、お元気かなー?) 途中からは、こちらが探してお声がけするのではなく、情報募集に応じて向こうからご連絡をいただくケースが多かったように思います。

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また、読者アンケートの声を受けて、1997年春号では「SEXUALITY 性別なんてもういらない!?」という特集を組んでいます。このとき、小倉東さん(ゲイ)と笹野みちるさん(レズビアン)の対談、自分と溝口彰子さんとヘテロセクシュアル女性(お名前を出していいのか出さないほうが失礼なのかわかりませんが、ひとまず控えます)の座談会などを掲載したのですが、忘れられないのが“おなべ×FTMTS×タチ(レズビアン)“の座談会。おそるおそるお願いしたら、快く受けてくださって、各2名ずつ、しかも5人が顔写真OKで出てくれました。個人差はもちろんあるので、属性だけで決めつけることはできないのですが、共通点と違いがわかって、とても興味深い記事でした。

簡単に説明を、と思ったら、ついつい昔話が長くなってしまいました。当時の『フリーネ』『アニース』がトランス男性を含んでいたのは、トランス男性は男性であるという前提を踏まえた上で、自分の性自認に迷う読者のニーズに応えるため、でした。また、トランス女性への言及が比較的少なかったのは、トランス女性の多くは“女性を愛する女性“ではなく、抱える問題や求めている情報が異なるということと、彼女たちにはすでに独自のメディア(雑誌やミニコミなど)が存在していた、というのが主な理由です。

ぱらぱらと読み返してみると、状況が大きく変わった部分(戸籍上の性別の変更が可能になったこととか)がある一方、ちっとも古く感じない/あまり変わっていないなぁと思うことも多くて、複雑な気持ち。あと、マンガや小説、グラビアといった表現物の大半が女性同士の恋愛を描いたものだったのは事実なのですが、全体にやはり”レズビアン雑誌”とは言い切り難いなと改めて思いました(読者の方がどのように呼んでくださっても、それは自由です。ただ、歴史を記録したり語ったりなさる場合にはできるだけ正確な表記を心がけていただきたいです)。『アニース』を読んでみたいと思ってくださる方がいらっしゃいましたら、 セクシュアルマイノリティ女性のためのスペースLOUDや国会図書館で閲覧が可能だそうです。復刊は無理だと思うのですが、再掲載や電子書籍化、またはハギワラに何か書かせたいという方はぜひご連絡ください(笑)。

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