【オチのないグチ1】イクメンは死語になりにけり
今から書く話は、別段珍しい経験でもなければ、「誰も言っていないから私がいち早く言ってやろう!」というオピニオンでもない。
それどころか、これまで何十人、何百人、何千人の母、そして妻たちが口にしてきたであろう文句だと思う。
話は週末にさかのぼる。
その日、私たち夫婦は、息子を連れてとある飲食店へ出向いた。
そこは主に夫がよく利用している店で、私は数回に一回同行する、というくらいの常連度。大々的に赤ちゃん連れOKと打ち出してくれているおかげで、息子が生まれてから立ち寄ることが多くなった(大人二人なのに、空いていれば四人がけの席に座らせてくれるのだ。ありがたや、ありがたや……)。
その日も広い席が空いていて、夫に抱かれた息子を見た店員さんは、すぐさま広い席へと私たちを案内してくれた。
そして、感心したように言ったのだ。
店員さん「旦那さん、イクメンですね! いっつも旦那さんが赤ちゃん抱っこしてますもんね!」
……。
夫「ありがとうございます」
私「そうですね、休日はそうですね!」
店員さん「うらやましいです~」
私「あっはっは!」
夫「……はは」
後に夫は言う。
「ぜったい、あのセリフ引っかかってると思ってた」
ええ、引っかかったさ。
「いつも赤ちゃんを抱っこしてる」から「イクメン」。
1週間の7日中、2日間、お出かけの際に赤子を抱っこしただけで(注:クソ重いママバッグは私が持っています)イクメン!
いいご身分!!
私、7日中5日間、毎日毎日息子を抱っこして出かけてるんですけど!!
誰か私のことイクジョって呼んでくれますか!!
誤解なきように言う。うちの夫は育児に関してはほぼ何でもできる。
ミルク、おむつ、お風呂ワンオペの基礎育児はもちろんのこと、完ミなので寝かしつけも私がいなくともできるし、一日私が出かけていたところで何も困ることはない。夫が息子を連れて友人宅へ遊びに行き、私は一人時間を楽しんだ、ということもある。
唯一離乳食をあげるのはちょっと苦手、と言いつつ手が離せないときに頼めば別に苦も無く食べさせている。
私が息子をお風呂に入れれば「あ、お風呂に入れてくれたの。ありがとう」と感謝の言葉をかけてくる、ごはんを食べさせたよ、とラインすれば(平日昼間)「ぺこり」スタンプを送ってくる、そういう育児の当事者意識を持っている父親なのだ。
そういう父親であるにもかかわらず、「抱っこしてイクメン」と言われたときの胸のもやもや。
これが本当にワンオペのご家庭の奥様だったらさぞや……!と思ってしまった。
***
イクメンという言葉が生まれたのは2010年。
お国の偉い人が「この言葉を流行させたい」と言ったんだそうで、それを機に爆発的に広まったという。
私も当時は働き始めたばかりの小娘で、親戚や知人が育児を「手伝っている」という話を聞くたびに「わー、イクメンじゃーん」と気軽に言っていたような気がする。
ただ、そもそも当時は「男が育児をする」というケースがまだレアだったのだ。男が仕事を、女が家庭を担当する、そんな親に育てられた世代が親になってきた、過渡期だったんだと思う。
この時代にイクメンという言葉を使ったのは、「男も育児に参加するべきだ」という意識を植え付けるのにきっと有効だったのだ。
だが今は。
それから10年が経過した今は。
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特に結論やオチはありません。
ただ、これから私はイクメン撲滅委員会を名乗り、かつ自分も育児している男性に気軽に「イクメーン!」なんて言わないように気を付けたいと思います。
そろそろ「意識高い」「インスタ映え」みたいに「(笑)」がついちゃうワードになってもおかしくないと思うんだな。