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【出生率ショック2024】人口減少は悪いことなのか?

合計特殊出生率が1.20となり、過去最低を記録しました。
そうだよなぁ、と思う一方で、はて、こんなに少子化対策が叫ばれているが、人口減少は悪なのか?と疑問を持ちました。

そこで、人口減少について考えてみたいと思います。


人口減少は世界的なトレンド

米ワシントンは、20年7月、世界人口は2064年の97億人をピークに減少するという予測を発表しました。


引用元:人類史、迫る初の人口減少 繁栄の方程式問い直す(日本経済新聞)


人口減少は、先進国のみならず途上国でも見られる傾向です。
これは、ファクトフルネスという本でも述べられていますが、①安全な避妊法が普及したこと②女性の教育・社会進出が進んだことで、家族計画を主体的に策定するようになったことが寄与しています。

①②の事象は喜ばしいことであります。これらを過去に戻すことは許されません(し、許しません)。
では、どのようにしたらよいか?そもそも、人口減少は悪いことなのでしょうか?


人口減少のデメリット

総務省(平成30年版 情報通信白書)では、人口減少による課題を以下のように挙げています。


  • 国内需要の減少による経済規模の縮小

  • 労働力不足

  • 我が国の投資先としての魅力低下による国際競争力の低下

  • 医療・介護費の増大など社会保障制度の給付と負担のバランスの崩壊

  • 財政の危機

  • 基礎的自治体の担い手の減少



大きく分けると、①社会保障制度の崩壊 ②経済縮小による国力低下 ③自治体の消滅 の3つのようです。

この3つの課題は、人口が増加すれば解消するのでしょうか?

③については、まさに人の数があればあるほどこれを支えることができるので、直接的に解決できそうな気がします。ですが、コンパクトシティ化し、まちを人口減少にフィットさせるという考え方も取れます。

①については、畢竟②の経済・国力があがれば解決できる課題です。

では、②の経済縮小・国力低下についてはどうでしょう。


経済縮小すると何が起こるのか

私のような素人が考えると、「経済縮小するということは、いまの豊かな暮らしが脅かされるということじゃん!」と焦ってしまいます。

この点、日本経済研究センターの小峰 隆夫研究顧問のコラム(人口問題への取り組み(4) 人口減少と国力)が大変参考になりました。

「経済規模を維持するために少子化・人口減少対策を講じる」というロジックがオカシイ、とおっしゃっています。

日本は2010年頃から人口は減少しているが、マイナス成長になったのは、リーマンショックやコロナの影響を受けた時だけで、大部分はプラス成長である。人口が減っても、経済成長をプラスに維持することは比較的簡単にできることなのである。

(引用元)人口問題への取り組み(4) 人口減少と国力


これは、労働人口が増加したこと(高齢者や女性の労働参加)、労働生産性が向上していることが貢献しています。

また、2023年の名目GDPで日本を抜いて世界3位となったドイツの人口は、日本の3分の2です。このことからも、人口増=経済拡大ではないことがわかります。


なにが人々を幸せにする?

そもそも「経済」が話題にあがるのは、それが縮小すると我々の幸福度が下がる可能性があるからです。これに対しては、以下のようにもおっしゃっています。


「国の規模(GDP)が大きいことが国民を幸せにするということはなく、一人当たりのGDPが大きいことが国民を幸せにする」

(引用元)人口問題への取り組み(6) GDPの日独逆転と人口問題


1人当たりGDPとはの国・地域におけるGDPを人口で割った値のことです。

たしかに、経済規模が縮小しても一人当たりGDPをそのまま実質的に維持できるのであれば、幸福度はいまとさほど変わらないかもしれません。

ちなみに、高福祉で知られるスウェーデンのGDPは日本の約7分の1です。それでも、日本より福祉のレベルが高いと感じますよね。

これは、国民一人当たりのGDPの水準が日本より6割も高いからだそうです(いずれも2023年、IMFの世界経済展望による)。

つまり、「経済成長しないと幸せになれない」のではなく、「一人当たりGDPが高ければ、幸せ(ウェルビーイング)になれる」のです。


日本の一人当たりGDPは?

さて、この「一人当たりGDP」、日本は何位でしょうか。

なんと、OECD加盟38か国中21位です(2022年)。ビミョ~な数字ですよね。。

では、TOP3はどこでしょう?
答えは、1位:ルクセンブルク、2位:ノルウェー、3位:アイルランドです。いずれも欧州の小国にあたります。

なぜ、これらの国が一人当たりGDPが高くでるのか。MUFG資産形成研究所の『「労働生産性の国際比較 2021」からの考察』(菅谷 和宏 上席研究員)では以下の通り記されていました。

GDP が高い理由は、国内法人税を低く設定し(例:アイルランド 12.5%)、生産性が高いグローバル企業を国内に誘致することで GDP を高めています。「アイルランド」は GDP の 約 6 割をグローバル企業(Google、Apple、Facebook 等)で、「ルクセンブルク」も GDP の約5 割をグローバル企業( Amazon 等)で占めています。

(引用元)「労働生産性の国際比較 2021」からの考察


なるほど。ということは、アイルランドのGDPの約6割は、情報通信業が占めていることになりますね。

次に、産業構造について見てみたいと思います。外務省の各国の情報ページに記載の「主要産業」を以下の表にまとめました。



一人当たりGDP上位の国はいずれも第三次産業が主要産業であり、第二次産業(製造業)中心の日本とは異なります。この産業構造の違いも労働生産性に影響してくるのでしょうか。

この点についても、以下の通り述べられています。


労働生産性は業種により大きく異なるという特徴があります。例えば、時間あたり労 働生産性が第 3 位の「ノルウェー」は、原油、天然ガス等の資源国であり、「最終財・サービス」を生み出すために多くの人力を必要としない産業構造(資源採掘の人力は必要ですが)となっています。

(引用元)「労働生産性の国際比較 2021」からの考察

また、「情報通信業」「金融業」「不動産業」などが、一般的に労働生産性が高い産業構造と言われており、このような業種の就業者数の割合が高い国では、少ない就業者数で多くの「最終財とサービス」を生むことが可能であり、労働生産性が高く算定される結果となります。

(引用元)「労働生産性の国際比較 2021」からの考察


つまり、一人当たりGDPが高い国は、①グローバル企業を誘致し、労働生産性が高い② 主要産業が、少ない就業者数で多くの「最終財とサービス」を産むことができる産業 ということになります。


さて、日本に住むわたしたちの覚悟は?

ここまで調べてきたことをまとめると、


  • 人口減少を止める理由は、ひとびとの暮らしを守るため

  • しかし、人口増以外でも経済拡大することは可能

  • さらに、人々の幸福は一人当たりGDPで決まる


ということになります。

翻って、日本が経済を拡大し続けるためには、
 ①労働人口を増やす(外国人労働者・高齢者・女性の労働参加、出生率の上昇)
 ②労働生産性を上げる(産業構造を変える、ビジネスモデルを変える)
といった対応が必要になってくるかと思います。

移民もいやだ、でも現状の労働モデルも変えたくない(=出生率が上がらない)のなら、②の労働生産性を上げるしか方法がないように思えます。

いずれにしても覚悟が必要です。

私は女性なので、「出生率向上のためにみなさん産んでください!」と言われても困ります。
これについては、以下の記事で詳しく述べていますが、「ワンオペが常態化している今、これ以上子どもを持つ気がもてない」というのが私個人の感想です。


出生率が低下した!女性の産む人数が少ない!と、そればかりに原因を求めないでほしい。老若男女、全世代の全属性がこの課題に一緒に向き合ってほしい。出産適齢期の女性にばかり求めないで。この手のニュースを見聞きするたび、そう思ってしまうのは、わたしの人生がしあわせではないからでしょうか。


経済拡大の必要はないと言うけれど

ウェルビーイングには一人当たりGDPが重要、ということは、裏を返せば、経済が縮小しても・日本の国際的地位が下落しても関係ないではないか、という風に聞こえます。

これは完全に私見ですが、私としては、世界経済が拡大する前提においては、日本も後れを取らぬよう努力し、プレゼンスを発揮してほしいと考えています。

なぜか。私は今タイに住んでいますが、走っている車のほとんどが日本車です。
これにはとても驚きました。バンコクでは、車はなくてはならない存在です。日本の技術が他の国の生活を支えているんだ。素直に感動しました。

なにかを導入する際に、日本が選ばれる。そんな国でありたいな、という単純な気持ちが、経済拡大が必要だと感じる一つ目の理由です。

二つ目は、日本のいまの暮らしや文化を守りたいという思いからです。

バンコクのレストランやデパートに勤める人は、ほとんどが英語を上手に話します。よく、訪日観光客が「日本人が英語を話せないのに驚いた」と言いますが、その理由がわかりました。むしろ、話せない私たちの方が、先進国から見たらマイナーなのではないでしょうか。

なぜなのか。それは、日本人が英語を話さなくても十分幸せに暮らしていけるからなのだと思います。日本語で学び、日本語でお金を稼ぐことができる。日本に住んでいたいと思える。英語を話す必要性を感じない生活ができるからなのです。

地球儀で日本を見てみましょう。びっくりするほど、東アジアの端の端にあります。太平洋、デカすぎます。経済分野で生き残れなかったら、私たちはどうなるのだろう。ちょっとこわくもあります。



没落するなら脱出すればいいや。そうドライに考えることもできます。私も昔はそういう考えがありましたが、いまは、故郷を大事にしたいという想いが芽生えました。

なぜか。それは自分でもわからないし、論理的に説明がつきません。

でも、あの、無数のビルが立ち並び、清潔で礼儀正しく、なんでも安心にあそべる街。下町のゆったりした時間の流れ。おいしい森の香り。無味無臭の美味しいお水。都市生活と清潔と自然がほどよくミックスされた、最高に住みやすく、2600年以上の歴史と文化がある故郷をずっと残したい、というのは、無理に言語化しなくても良い(言語化して説得するものでもない)と思います。

なので、私個人としては、大好きな故郷を次の世代に残すために、覚悟を決めて、やるべきことをしていきたいと考えています。



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