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ちょっと真面目な水痘の話

巷では、大流行中の某感染症のワクチンを
子供に打たせるか打たせないかで、
親御さんたちの議論が白熱している。

でも、別の感染症、水痘の話だ。
実は書くか、かなり悩んだネタなのだが、
甘く見るなよと言う話と、
例のワクチンにも関連して情報収集に関して少し。

ただし、私は医薬品や再生医療分野の
研究職の端くれに過ぎず、医療従事者ではないので、
私の話も話半分に読んでもらって結構だ。

さて本来なら、娘は生後6ヶ月から保育園に行く予定だった。
自治体から保育園内定の通知が来てすぐ、
四種混合だかなんだかの予防接種を受けに小児科に
行ったついでに、私には意地でも聞かなければならない
ことがあった。

「定期接種前に、水痘ワクチンは任意で打てますか?」

水痘ワクチンは、1歳から定期接種となっている。
だが、1歳に満たない娘を保育園に入れる以上、
私は何がなんでも水痘を防ぎたいと本気だった。

理由は、後述することにして...

娘のかかりつけ医は、事情を知ると、
1歳未満でも感染リスクが高い場合は、
接種可能だと教えてくれた。
結局、某感染症のせいで、自宅保育を余儀なくされ、
予期せぬ形で娘は1歳間際から保育園に行く
ことになったため、結果的に水痘ワクチンは
定期接種のタイミングとなった。

でも、なぜそこまで水痘に固執するのか...

私は水痘感染が原因である帯状疱疹後の不具合に、
ずっと悩まされているからだ。

私は2歳になる少し前、おでこに5つほどの
ニキビのようなものができ、母が小児科に行くと、
「水ぼうそうですね」と診断されたらしい。
幸い軽く、ブツブツはそれ以上増えることもなく、
微熱程度だったそうだ。

母は本当に水痘だったのか、怪しんだほど、
症状は軽かった。
母は、小さいうちにかかったから、軽く済んで
良かったと思っていたらしい。

以降、私は水痘になった記憶もなく、
それらしい症状に見舞われることもなかった。
そのまま一生知らぬが仏でいたかった。

ところが、もうすぐ25歳になろうとしていた頃、
修士論文の研究に明け暮れて、土日もなく、
夜な夜な研究室で深夜までゾンビ化して
過ごしていたある日、左脇腹に異変が起きた。

朝起きたら、イクラのようなブチブチが3つほどある。
しかも、めちゃくちゃ痛い。
服が擦れるのも痛い。

ちょうどその2ヶ月ほど前に、洗濯物に蛾が止まり、
はたいただけで着たら湿疹ができて皮膚科に行った
という前科者の私は、またしても蛾のせいだと思った。
学位審査直前の忙しい時期に、しかも蛾なんて
恥ずかしい理由で何度も皮膚科になんて行きたくない。
一応お年頃の女子だ(笑)
だから、あろうことか、我慢した。

私はこの時の自分を恨んでいる。
本当にアホだ、このタイミングで皮膚科に行けばよかったのに。
真冬に蛾なんていないのに。

数日経って、イクラは少し潰れたが、
痛みは一向に良くならなかった。
激痛に耐えながら学位審査を終え、
指導教授と談話室で話していたとき、
何の気なしに
「脇腹にイクラができて痛くて、発表できないかと思った」と言ったところ、急に先生の顔が曇った。

「いいから、見せなさい。熱ないよね?目や耳はおかしくない?」

名誉のために言うと、彼は超々ベテラン内科医である。

学位審査を終えて、スーツ姿のまま、
談話室でおじいちゃん先生にお腹を見せるという、
シュールな絵面である。
目撃した秘書さんが、フリーズしていた。

「あ、帯状疱疹だ...」
「いつから?3日以内なら、薬よく効くんだけど。」

このとき、イクラができてから1週間近く経っていた。

「え?1週間も我慢したの?」
「それは厄介だなぁ。もう薬あんまり効かないかも。」

すぐに飲めと薬を処方されたが、後の祭りである。
先生が予想した通り、私はもれなく半年近く帯状疱疹後神経痛に苦しんだ。

ご存知だろうか。
帯状疱疹は、一度かかった水痘ウィルスが、
神経に隠れて身体に残り、
疲れ等で免疫機能が弱ったときに、
再び活発になるために生じるのだ。
だから、過去に水痘にかかった人は、
もれなく帯状疱疹のリスクを抱えている。

薬はあれど、帯状疱疹発症後にすぐに飲まなければ、
ウィルスによって神経はどんどん傷つくため、
回復に時間がかかるらしい。

私はあれ以来、イクラ状のブツブツは出ていないが、
未だに仕事で不摂生が祟ったり、産後だったり、
疲労が半端ないときに、肋間神経痛に襲われている。
ブツブツがないときは、まさか帯状疱疹とは思わず、
皮膚科、整形外科、内科とたらい回しに遭い、
結局はどうやら帯状疱疹の後遺症のようだという診断が下った。
痛みは帯状疱疹と同じである。
風すら痛い。
息もできない。

この事実を、産後私の母に話したとき、
これまでの経緯を初めて聞かされた母は、
とても後悔しながら、何度も私に謝った。

「もっと私が勉強していれば」と。

あろうことか、当時あるあるで、早くかかった方が
軽く済むからと、水ぼうそうの子と私を遊ばせたが
ため、私は水ぼうそうに感染したらしいのだ。

OMG!!!

けど、当時はそれは珍しいことではなく、
他の親も似たようなことをしていた。
現に、幼稚園や小学校時代にも、水ぼうそう、
はしかあたりは、感染者とあえて遊ばせる親が
たくさんいた記憶がある。

名誉のために言うと、私の母は何も悪くない。
母がいたコミュニティでは、それが普通だったのだから。
それに、今みたいに色々調べる術もない時代だ。
だから、私はこの件について母を責める気は毛頭ない。

水痘感染から、帯状疱疹を発症し、そこからさらに、
肋間神経痛になるなんて、確率はそんなに
高くないのかもしれないが、私は娘に同じ痛みを
経験させたくない一心なのである。
本来に痛いから。
避ける手段があるなら、ぜひとも避けたいのだ。

だから、娘が無事に水痘ワクチンを接種できたとき、
心の底からホッとした。
とはいえ、大人になる頃には抗体価が
下がっているケースもあるから、油断ならずだけど。

で、なぜ急にこのタイミングで、
流行りの感染症でもなく、水痘の話をしているか。

娘の保育園が休園となり、自宅保育しながら
在宅勤務をした1週間を経て、
また肋間神経痛の痛みが出たからだ。
そりゃ疲れるよな...
自宅保育と在宅勤務、ほんとカオスだったもん。

話題の感染症ワクチンも含めて、
定期予防接種も悩む親御さんが増えていると聞いた。

私は予防接種バッチコーイ派でもなければ、
反ワクチン派でもない。

結局のところ、今良いとされているワクチンが、
後々で困ったことになるかもしれないし、
逆にワクチンを打たずして罹患したことで、
将来的に苦しむ可能性だってある。

何が正解かなんて、ぶっちゃけ今分からない。

だから、まだ自分で判断できない年齢の子を持つ親は、
色々な情報を、バイアスなく見て、聞いて、
ニュートラルな視点で何を選択すべきか、
しっかり見極める必要がある。

私が肋間神経痛に苦しんでいると知り、
私の母はどんなに後悔し、悲しんだことだろう。
母には、悪いことをしてしまったし、
私がそんな風に思っているなんて知ったら、
それはそれでまた母は苦しむだろう。

母と同じ過ちは繰り返すべからず。
ワクチン打つも打たぬも、いずれも後悔する可能性がある。
だから、よーく調べなければならない。
みんなが打つから、ネットで話題だから、なんて、
情報源も調べずに鵜呑みにするのではなく、
親として何がベストなのかを、精査すべきだ。

とりあえず、我が家は話題の感染症よりも何よりも、
水痘が怖いという話。
ちなみに夫は、中学生で水痘にかかり、
かなり重症化したそうな。
三十路になるまであとが消えなかったらしい。

みなさん、水痘にも他の感染症にも、
お気をつけください。

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