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女性差別と私

最近メディアを賑わせている、女性差別発言。
海外の反応は予想通りだが、
私が思った以上に国内でも問題視されており、
なんだ日本も捨てたもんじゃないな、と思う。

私はこのような差別発言にとやかく言うのは苦手だ。
でも、やっぱり、社会に出ている身として、
差別とまではいかなくとも、苦い経験をしてきたのは事実だ。

私は高校から理系選択である。
以降、男性が多い環境に身を置いている。

幸い、高校から大学院までは、
女性だからと言う扱いを受けたことはない。
なんなら、分け隔てなく、
誰が一番大盛りカレーを早食いできるかとか、
柔道着を着たまま誰が一番プールに浮いていられるかとか、馬鹿なこともたくさんやった。

就職して男性が多い社会環境でも、
特に差別は受けないんだろうと思っていた。

だが、早速就活で痛い目にあった。

私は大学院卒だ。
就職する時点で25歳になる歳だ。

ある大企業の面接を受けたとき、面接官から、
こんなことを言われた。

「君くらいの歳の女の子はさ、2年くらい働いたら、
結婚して辞めちゃうんだよね」

結婚ラッシュが28歳とか言われていた当時、
あながち間違っちゃいないが、
他人の結婚のタイミングまで勝手に決めるなんて、
余計なお世話だとかなり頭にきた。
院卒の方が専門職に就きやすいから進学したのに、
進学したら男性は有利になっても、
女性は不利なんて、意味不明だ。

ちなみに、その企業は不採用だった。
あんな面接官がいる会社で働く自信はないから、
こっちだって願ったり叶ったりだ。

研究職は、宝くじレベルで就くのが難しい。
結局私は地方企業からしか内定をもらえなかった。
ただその会社は、女性管理職も多くいて、
なんだかキラキラした大人がたくさんいる環境だった。

活躍する先輩たちを観察していた私は、
入社してすぐ、あることに気がついた。
女性管理職の先輩方は、男性社員以上に頑張っているのだ。
朝早く来て、人知れず給茶器に水を入れたり、
ゴミを片付けたり、会議でも周りを労う発言を忘れない。
その一方で、平気な顔して男性と同じ重い荷物を運んだり、深夜まで残業したりもしていた。

ある先輩は、
「女性のくせにって言われるの...
だからね、文句言われないように工夫がいるの」
と教えてくれた。

もちろん、みんながみんな、そんなわけじゃないし、そんなのやってらんない。
でも、当時私が勤めていた会社は、そんな女性社員が多かった。

そうか、女性は男性以上に頑張らないとならないのかぁと、単純な私は勘違いした。
それがキャリアを築く近道なら、従うまでだった。

関東大震災があった年、
ひょんなことから27歳で転職した私は、
またしてもあからさまな差別を経験した。

「すぐに結婚して、妊娠して産休なんじゃないの?」

採用面接の際に何社かで聞かれた。
いや、ビックリだよ!
結婚したからって、すぐ妊娠するとは限らないし、
圧迫面接のつもりか知らないが、
言っていいことと悪いことがある。

頭に来て、転職活動の最後らへんは、自分から
「しばらく結婚出産の予定はありません」て、
自虐ネタで自己PRしたくらいだ。

さらにビックリなのが、転職組の先輩方にも、
同じように「出産予定はない」と言って面接したという人が、少なからずいるのだ。

もう10年も前の話だから、今は違うのかも知れない。
でも少なくとも、10年前はそんな社会だった。

この転職を機に、
私は「女だと思われたら舐められる。結婚出産したらキャリアはお終いだ。」と、
また間違った概念に取り憑かれた。

この「女だと思われたら〜」理論は、
実は妊娠するまで続いた。
ただし、ヒントをくれたのは、
妊娠する何年も前の出来事だったように思う。

ヒントをくれたのは、仕事でアメリカに行ったときの現地女性マネージャーだった。

まるで映画キューティーブロンドのエルような、
可愛らしいキャリアウーマンに、
「ボーイフレンドはいないの?」と聞かれた。
「なかなか仕事と結婚のタイミングが合わなくて」と言う私に、彼女はこう返した。

「そんなの、あなたの人生なんだから、好きにしたらいいじゃないの!
結婚していようと、子供がいようと、評価されるときはされるし、評価されないときは何をしてもダメなのよ。
それを理由にするうちは、あなたはプロフェッショナルじゃないし、周りがそんな環境なら、フェアじゃないわ。」

へぇ、さすが自由の国!
30歳になったばかりで、子供もいなかった私は、
どこか他人事のように感じていた。
貴重な言葉は心にしまったままになった。

そうこうしているうちに、私は30代半ばになり、
結婚して、子供ができた。
奇しくも、妊娠が判明したのは、
内々に昇進が決まった直後だった。

高齢出産に片足を突っ込んでいたため、
妊娠を心から望んでいたものの、
やっとやっと苦労が報われて昇進したのに、
妊娠中体調が悪かったり、
育休で長期休んだりしたら、
全て台無しになるのではないかと不安になった。

でも、ありがたいことに、そうならなかった。
当たり前の権利かもしれないが、
妊娠が分かっても昇進は取り消されなかったし、
復帰してもこれまでの待遇のままだ。
妊娠中や子育てしながらでは、
できなくなってしまった業務もあるが、
そこは評価対象とせずに、公平に評価してくれる優しい職場だ。
だからもし降格されるとしたら、
きっと納得する理由があるときだろう。

ふと、アメリカで聞いた言葉を思い出した。

自らのキャリアにおいて、
ライブイベントを理由にしてはいけないし、
ライブイベントによる制限で判断される職場はフェアじゃない。

これまでひたすら、
女だと舐められないように...
結婚妊娠はキャリアの妨げ...
と思ってきた私だが、
少なくとも妊娠出産子育ては、
産休育休に加えて時短等のサポートがないと、
やはりやっていくのは難しい。

そうか、今は存分に女性であることを主張すべきなんだ!
代わりに、やるべきことはやって、
正当に評価してもらえるようにすれば良いんだし、
評価が正当じゃなければおかしいんだ!

そして、今に至る。

もちろん、子供の体調不良による急な休みや、
誰かにフォローしてもらわなければならない場面もあるから、産前よりは多少気を使うようにはなった。
でも助けてもらうからには、それくらい苦ではない。

生物学的構造上、男性が子供を産み授乳できない限り、少なくとも妊娠出産育児を理由に、
女性が正当に評価されないのは不満だ。
それに、まだ結婚も妊娠もするかわからないのに、
適齢期の女性だからと採用の判断基準にするなんて、やっぱり許せなくなる。

ここでは書き切れないが、結婚するときだって、
妊娠を望んだときだって、
キャリアと年齢の狭間でどんなに苦しんだことか。
過去は二度と取り戻せやしないけど、
間違った概念で過ごしてきた私の10年を返してほしい。

今回の騒動で、こんなにも国内から不満が出るなんて、なんだか私は嬉しい。
娘が私と同じくらいの歳になる頃、
少なくとも今よりは女性が働きやすい社会だといいな。

それから、最後に一言。
女性は話が長いって?
私は話を端折りすぎて、いつも叱られますが?

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