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今日からあなたも救世主
小学六年生の始業式。
私は転入生として全校生徒約1,000人の前に立った。
当日体育館に行く前に言い渡された、自己紹介の定型文を頭の中でぐるぐるさせながら、前を歩く身長が私の二倍はある(ように感じた)大柄な女の子についていった。
えんじ色をした緞帳の横を通り、他の転入生の子と一緒にステージに並んだ。
低学年から順番に自己紹介と、どのクラスに入るのかを発表する。ステージ下のみんなは自分のクラスにどの子が来るのか、来ないのか興味津々だった。
例の、前を歩いていた子が自己紹介をすると、体育館の奥の方からワッと歓声が上がった。
果たして私は同じように受け入れられるのだろうか・・・?という心配で心臓が止まりそうだったが、すぐにマイクを渡され、とにかく呪文のようにぐるぐるしてた「○○小学校から来ました、名字・名前です。6年2組に入ります。」を発してみた。
正直自分の心音がうるさくて、クラスのみんながなにかしら反応していた声は、まったく耳に入らなかった。とりあえず、呪文を間違えずに言えたことでほっとした。
そのままクラスのみんなが並んでる列に向かうと、みんなニコニコでこっちだよって声をかけてくれた。口々に名前を教えてくれたけど、いっぱいいすぎて最初の2人くらいしか覚えられなかった。
聞き慣れない校歌を聞いた後、始業式が終わり各クラスの教室へ戻ってきた。
ここでもやっぱり転入生の自己紹介と、さらに全員の自己紹介をしてくれた。名前と一言をそれぞれ言うスタイルだった。ヨーグルトを箸で食べられるとか、ヴァイオリン弾けるとか、将来は医者になるとか、今でもみんなの自己紹介を覚えている。
終わったとたんに髪をおさげにした女の子とショートカットの女の子が私の席までやってきた。
開口一番、「もしいじめられたら私に言ってね!!!やっつけてやるからね!!」と言われ、私は驚きやら嬉しいやらで、「う、うん」しか返せなかったけど、2人とも名前とみんなに呼ばれてるあだ名を教えてくれた。
こんな子がいるクラスなので、いじめなんてまったくなかった。
私も誰かのそんな存在になりたいと思い、学生時代も社会人になってからも初めての場でどぎまぎしている人を見かけたら、率先して話しかけることにした。あの子の、「やっつけてやるからね」みたいな救世主的台詞は言えないけれど。
最後まで読んでいただきありがとうございます。