あの日から

2017年7月、神戸で開催された日本臨床腫瘍学会学術集会に参加しました。
夫のために、何かできることはないかと血眼になった結果、治療に悪影響を与えてしまった経験を持つ私は、講演会場を後にされる大野先生を追いかけ、思い切って声をかけました。それが大野 智先生との初めての出会いです。

その時、先生が私に話してくださったのは
【いわゆる民間療法とされる補完代替療法は、病気を治すことを目的にするものではなく、症状や気持ちを和らげるなど生活の質を向上するもの】ということ。
このことを理解していたら…そう悔やんだ私に、大野先生は
「ご主人は轟さんの気持ちをわかっていたと思うし、やったこと全てが治療の邪魔をしたんだなんて背負わなくていいと思う」と言ってくださったのです。
夫を見送って1年が経とうとしていて、セミの鳴き声が響き渡っていたことを今でもありありと思い出します。

世の中には玉石混合の情報が溢れている。
情報は選択、決断、行動の根拠になるもの。
どう見極めるのか、正確な情報はどこにあるのかを発信していきたい。

希望の会理事長としての今後を思う出会いでした。

今回、大野先生から新刊をお贈りいただき、繰り返し読んでいます。とてもわかりやすい内容で、ここに書かれていることを多くの人が知る機会があれば、私のような後悔を減らすことができるとも思います。

私は線を引いたり、付箋をつけながら本を読むのですが、気づいたらこんな状態になっていました。

標準治療のことを、『医学の進歩、臨床試験の積み重ねによって、副作用や合併症のことを考慮しても、それを上回るメリットがあることが確認されている治療』と説明されているところ、わかりやすいと思いました。

私は「○○大学名誉教授推薦」「消えた、治った」「動物実験で効果」という言葉に強い願いを持ち、がんを治したくてすがったので、その部分に後悔があります。
医師に相談した時、「効果は期待できないけれど、それで気がすむなら」と言われたとき、見放されたようにも思いました。
その思い込みやすれ違いが解消されるといいなと思っています。


全国胃がんキャラバン、多くの人にがん情報を届けるグリーンルーペアクションに挑戦しています。藁をもすがるからこそ、根拠のある情報が必要なのだと思い、頑張っています。